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1次試験

テイラーの科学的管理法をわかりやすく解説

役割葛藤 例




前回の記事でテイラー以前の管理法について解説しました。
テイラー以前の管理法では組織的怠業が起こるという問題点がありました。
組織的怠業の詳細はこちら

今回の記事では組織的怠業という問題をどうやって解消していったのか?
という話をします。

そのためにテイラーの科学的管理法について解説します。

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テイラーの科学的管理法

テイラーの科学的管理法:時代背景

テーラー科学的管理法

経営学にとってテイラーさんは重要人物の1人です。
なぜかというと、経営学はテーラーさんが始めた学問だと
言われているからです。

テーラーさんは19世紀末のアメリカの人です。
19世紀の末から20世紀の初めにかけて
アメリカの工場の現場においては組織的な怠業(サボタージュ)というのが
結構見られるようになりました。

当時のアメリカでは急速に工業化、産業化がおきて
都市部に工場がどんどんできました。

ピーマン農家

ところが当時、工場で働いていた労働者の多くは
昨日まで田舎でピーマンを育てていたような人だったり
ヨーロッパあたりから移民としてアメリカに
着いたばかりで、英語もしゃべれないような人ばかりでした。

そういった人たちが工場でいきなり働き始めたんです。
つまり工場労働に不慣れな人が非常に多かったんです。
そんなこともあってか、
労働者にやる気が起きなかったのかもしれません。
結構さぼってあまり生産に貢献しないということが
頻繁に起こるようになってしまいました。

そこでそういう人をどうやって管理するか?
が問題になっていたんです。

ところでテーラーが登場する以前のアメリカの管理制度の一つに
内部請負制というのがありました。

内部請負制というのは工場主は直接作業を監督しないで
一定の作業料を支払って職人の親方みたいな人にお願いするという制度です。

ところが19世紀末の急速な産業化で
競争が激しくなって、コストダウンの必要性が出てきて
だんだんこのあたりの時期から内部請負制を廃止して
管理ということをやりだすようになっていきました。

そこで生産効率が悪い状況を改善するために
新たに考え出された能率向上とコスト削減のための工場管理技法が開発されたのです。
この工場管理技法のことを
科学的管理法というように呼ぶようになりました。

テイラーはどんなことを考えたのか?

アメとムチ

ではテイラーはどんなことを考えたのでしょう?
標準的な作業量というのを科学的に定めます。
その標準的な作業量よりも上回るような作業をやった人に対しては
プラスの報酬を与えるけど、
標準的な作業量に達しなかった、
マイナスの作業量をやった人に対しては賃金を減らすわけです。

要するにアメとムチをうまく使い分けるわけです。
人間というのは合理的な存在。
自分にとってプラスになることに対しては一生懸命頑張ります。
そういうような人間が経済的なことを考慮に入れながら
自分の行動を決めていく。
そういう人間観に基づいたアメとムチの政策をうまく使い分ける。
そういうやり方です。

出来高作業別の賃金体系を導入することによって
組織的なサボタージュを解消しようとして工場の生産性を上げる。
そのような科学的な管理技法を生み出したのがテイラーさんです。

テイラーが気づいた2つの問題点とは?

テイラーは当時の工場とかで行われている生産の状況であったりとかを
分析していきます。

その中で問題点を見つけていきます。
どんな問題があったか?
2つの問題があります。

2つの問題とは?

・賃金率(時給)
・ラインスピード

です、

ラインスピードの問題というのは工場ごとで
生産ラインというのを使っていくわけですが、
その生産ラインとスピードが違うという話です。

テイラー以前では
賃金率に関しては前回解説したように組織的怠業が発生しています。
組織的怠業の詳細はこちら

テイラーは給料に関する基準であったりとか
それからどれくらいの生産ラインのスピードで物を作っていくか?
といったラインスピードという2つの基準が客観的でないと主張しました。
言ってしまえば、現場の経験とか習慣といったもので
決められているのではないか?とテイラーは考えたわけです。

そこでテイラーは何をやったか?というと
客観的な基準がないことが問題なんだから
客観的な基準というものを作ろうとしました。

そこで何をしたか?というと
仕事の内容と量を科学的に設定しました。

具体的にはやるべき仕事の内容といったものと
それからどれだけ仕事をすればよいか?といった量を
科学的に設定していきました。

科学的に設定することによって
労働者の側からしてみたらいっぱい給料がもらえる。
あるいは企業の側からしてみたらいっぱい儲かるというような
仕組みを作ろうじゃないか、というふうに言っていったのが
テイラーの考え方になります。

上記のようなことを科学的に設定することによって
高利潤と高賃金を実現させていきました。
高利潤と高賃金の2つを実現させることによって
さらにテイラーが目指したことというのは
雇う側と雇われる側、言ってしまえば使用者と労働者の間で
仲良くしていこうじゃないかということです。

ここから『労使関係』を『相互信頼』といわれる関係に変化させていこうと
テイラーは目指します。

逆にテイラー以前は労使関係は対立関係だったってことです。
労働者の側からしてみたら以前解説したように
いっぱい働いても給料をいっぱいもらえないなら
社長に対して「なんだあいつは!」みたいな感情になってくるでしょう。

それをお互いが目指す良い方向、
つまりいっぱい儲かる『高利潤』といっぱいお給料がもらえる『高賃金』を実現させれば
雇う側と雇われる側の間で信頼関係が作られていくのではないか?
という考え方がテイラーの考え方です。

ここまで解説してきたように科学的に設定することであったり
高利潤と高賃金の実現の話ですが
では具体的にどうやっていったのでしょう?

まず科学的に設定する方法ですが、
まず1つ目として課業管理(かぎょうかんり)というものを
やっていきました。

テイラーの科学的管理法:課業管理(かぎょうかんり)

課業の設定

課業とは英語でtaskのことです。
よりわかりやすい日本語でいうとノルマのことで、
労働者が1日に達成すべき仕事の標準量のことをいいます。

テーラーが登場するまでは、課業(ノルマ)の設定は
勘とか経験で決められていました。これを成り行き管理といいます。
つまり、テーラーさん以前は職人気質の人の経験と勘でやってたってことです。

これに対してテーラーがまずやったのは
一流の熟練労働者を作業をみて作業研究をやったんです。
作業研究は2つからなっています。

2つの作業研究とは

・動作研究
・時間研究

のことです。

(1)動作研究

動作研究というのはある労働者が作業をする上で
どういった動き(動作)をしていくのが
一番効率的なのか?という研究のことです。

テーラー以前の工場は未熟な労働者が多かったんですが
なかにはその工場で働いて20年というベテランがいて
そういう人たちって仕事に慣れていて無駄がないわけです。

そこでそういう人たちがどういう手順でやっているか?
書き出していったんです。

これを新人さんに見せてやれば
素早く無駄のない作業ができるようになるわけです。

(2)時間研究

時間研究とは何か?というと
労働者がある作業を上でどれくらいの時間がかかるか?という話です。
1個1個の作業にかかる時間をストップウォッチとか使って計測し
これをもとに課業を決めていくんです。

平均的な労働者がやるべき量を決めたってことですね。
たとえば、1日5個製造するとか。

(3)課業管理の特徴(1)

以上のような時間研究とか動作研究をやっていくことによって
労働者の1日当たりの仕事量というものを決めていきました。

課業管理というのは今でいったりノルマと呼ばれるものです。
どれくらい1日当たり仕事をすればよいのか?
仕事量を決めるのです。

そして与えられた仕事を労働者はしっかりこなすということをやっていきます。

ただ1日当たりの仕事量を設定するということは
労働者の側からしてみたら
ある一定の基準があるわけなので
その基準をクリアできたらOKだと考えるわけです。

労働者からみたら「楽だな」って思いがち。
でもそんなことはありません。

ここに出てきた1日当たりの仕事量というのは
普通に労働者がチンタラチンタラ働いてできる仕事量ではありません。
ちょっと頑張って達成できる仕事量を設定します。
特徴としては一流の労働者の高い効率を基準として課業を設定しました。

なので1日当たりやらないといけない仕事量(課業)と呼ばれるものは
だいぶレベルが上がります。

仕事量を決める対象となる人って
その会社の中でも優秀な人ということです。
優秀な人が1日当たりにこなす量を基準にします。

ということは普通の人はちょっと頑張らないといけないし
初心者の人だったらもっと頑張らないといけません。
そうやって頑張って働かせて賃金を与えるということをやっていきます。

課業管理の特徴(2)標準的作業条件

2番目は標準的作業条件です。
標準的作業条件とは何か?というと
仕事をする上でのやり方を統一させるということです。

その際に使うのが『指図票制度(さしずひょうせいど)』です。

テーラーの科学的管理法:指図票制度

テーラーが考案したものの1つに指図票制度があって、
指図票というのはマニュアルみたいなものです。

指図票制度には何が書いてあるか?といったら
例えばある作業をする際にどれくらい時間をかけるべきか?
使う道具は何なのか、あるいはその作業をどれくらいやればいいのか?
といったところまで事細かく書きます。

使うべき工具とか時間とか方法が記載されています。

極端な話をすると例えばスコップを想像してください。
あのスコップをどれくらいの角度で入れたらいいのか?
といったところまで細かく指示を出します。

そしてその通りに労働者にやらせます。

未熟な人でも指図票を見ながらであれば
迅速に効率的な手順が身につくわけです。

指図票制度は

・道具
・時間
・作業

などがすべてマニュアル化されていきます。

労働者はそのマニュアルにしたがって
働きなさいと上から指示されます。

こんな感じで条件を設定していって
その条件に基づいて働かせるわけです。

それでその課業(ノルマ)が達成されたら
高い給料を出します。

それに対してノルマが達成できなかったら
給料を下げるようにします。

そんな仕組みを作っていくわけですね。

テーラーの科学的管理法:差別的出来高給制(差別出来高給制)

テーラー

今度は給料の話になります。
テーラーの登場以前は完全出来高給制といって1個いくらみたいな感じでした。

ですが、これだとちょっと問題になってしまいます。
労働者はお金がほしいから頑張るわけですが、
トータルで支払うお給料が増えるんで、
雇っている使用者側がわざとに賃率を切り下げ(レイト・カッティングという)るようになったんです。

たとえば昨日まで1個300円だったのが、
今日から明確な理由もなく1個150円と下げるわけです。

これが労働者の組織的怠業といって能率低下の原因になりました。

ちなみにテーラーさんは怠業(たいぎょう)には
2種類あるといいました。

テーラーのいう2種類の怠業とは

・自然的怠業
・組織的怠業

です。

自然的怠業とはできれば楽したいと考える本能的な怠業のことです。

テイラーが対象にしたのは組織的怠業で、
組織的怠業と間違ったお給料の支払い方は管理の仕方に
対抗するために集団でやる意識的な怠業のことです。

こういう組織的怠業があったので
テーラーさんは差別的出来高給制を提唱しました。

設定された課業(ノルマ)が達成されるなら
高い報酬が支払われます。
一方で達成できなければもらえる賃金は低くなります。
それが差別出来高給制です。

ということは労働者側からしてみたら
課業達成を目指すわけです。
高い給料をもらいたいと考えるので
頑張って課業を達成していこうとしますし、
そうすることで労働者は一生懸命働きます。

さらに一生懸命働いた結果作られたものが売れれば
企業側からしてみたらいっぱい儲かるということで
高利潤、高賃金といったものが実現できると考えます。

たとえば5個なら5個と課業(ノルマ)を決めておいて
達成した労働者は高い賃率を支払います。
1個につき1000円とか。

達成できる人=熟練していて努力している
から、こうやって高い賃率を支払うわけです。

逆に課業を達成できない人、
たとえば3個とかしか作れない人は低い賃率となります。
1個500円とか。

課業を達成できない人=未熟練、さぼっている労働者
だから低い賃率となります。

差別的出来高給制の特徴というのは
金銭的刺激で能率向上意欲を刺激するシステムだということです。

テーラーさんの科学的管理法というのは
どうやったら従業員がやる気を出して働くか?ですが
テーラーさんは基本的にお金で解決ってことです。

つまり労働者はお金に反応するから、
頑張ればお金をたくさんあげるけど、
ダメだったら、あんまりお金をあんまりあげないよという
アメとムチでやる気を引き出すという考え方です。

以上が課業管理といったものになります。

テーラーの科学的管理法:組織化原理

3つ特徴があります。

(1)計画部の設置

計画部というのは計画を練るところです。
頭を使うところと考えるとわかりやすいでしょう。
頭を使うところ(頭脳的な仕事)は計画部に集中させます。

頭を使う部門と
実際に体を動かして何か物を作るといった現場の部門といったものを
分けるということをやっていきます。

専門的には管理機能と作業機能を分けるということをやっていきます。

(2)職能別職長制度

テーラー

2つ目は職能別職能制度です。
実際の現場の責任者のことを職長といいますが、
この職長という人はいろんな部門にいます。
生産部門とか検査する部門とか準備をする部門など、
それぞれ分野別に職長を置きます。

こんな感じで分野別に職長を置くというのが職能別職長制度といいます。
テーラー以前は万能式職長制でした。
職人の親方みたいな1人のひとが管理監督職能全般に担当するって制度です。

これに対してテーラーの職能別職長制度というのは
職長と呼ばれる人がやれることは
自分の専門の範囲だけです。
何でもかんでもやるわけではありません。

実際に現場で働く人はだれの指示に従えばいいかといったら
職長の指示に従っていくわけですが、
職長は専門の範囲しかわかりません。

ということは自分の専門外のことはわかりません。
ということは現場の労働者はだれの指示に従えばいいか?
といったら職長のいう事を聞くわけですが、
職長は1人ではありません。

いろんな分野の職長に指示を仰がないといけません。
準備の事ならこの人、検査のことならこの人といった感じで
多くの職長の指示を受けないといけないというのが
労働者の大変なところになります。

なので指示を仰ぐ人が複数存在するというのが
職能別職長制度の特徴です。

そしてテーラーの職能別職長制組織の具体例がファンクショナル組織です。
ファンクショナル組織についてわかりやすく解説

(3)例外原理

特徴の3つ目は例外原理です。
先ほど解説した(1)計画部の設置や(2)職能別職長制度
寄りは重要度が落ちます。

管理する側と管理される側といった感じで
現場の人間の立場がわかれていきますね。
できるだけ権限は下の人間(現場の人間)に譲っていって
管理する側としては経営に関する問題に
意思決定をしていくべきであると考えるのが例外原理です。

例外原理の例外というのは例えば
実際に会社を運営していったりする上での例外的なこと。
言い換えれば予想外の出来事が出てきたときの意思決定をやるだけです。
なので、日常生活で進んでいくような意思決定に関しては
できるだけ自分より下位のものに任せていくというように
やっていくのが例外原理です。

言ってしまえば
管理の機能を集中させていくということをやっていくのが例外原理ということになります。

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テイラーの科学的管理法まとめ

テイラーの科学的管理法にはどんな意義があった?

(1)生産工学と呼ばれる分野を確立

経営学全般の中の1つの領域として
生産工学という分野を作っていったというのが
1つの意義になります。

例えばさっき解説したスコップの角度を何度でやればいいか?みたいな話です。
そういった生産そのものの管理をしていくような生産工学と呼ばれる分野を
確立していったという意義が1つあります。

(2)労使が仲良くなって生産性の向上するようになった

前回解説しましたがテイラー以前の管理といったら
雇う側と雇われる側の対立があったわけです。
テイラー以前の管理論|成行管理と単純出来高制について解説

ですが、テイラーの科学的管理法によって
お互いが仲良くなる、協調していく展開になっていきます。
労使が協調していくことによって生産性が上がって
今まで以上に大量に生産できるようになって
高利潤と高賃金が実現できたというのがテイラーの科学的管理法の意義になります。

テイラーの科学的管理法の問題点

テイラーの科学的管理法には2つの問題点があります。

(1)機械的人間観

お金をいっぱいもらうために一生懸命働くみたいな
経済的な動機によって労働者は働くというように
テイラーの科学的管理法は決めていきます。

今はお金だけでなく働きやすさや個人的なやる気を求める方もいるでしょう。
でも当時の労働者がなぜ働くか?といったときの一番の動機は
いっぱいお金をもらいたいからでした。

したがってここから雇う側は労働者を機械や道具とみなすようになりました。
雇う側からしてみたら、
とりあえず高い給料をあげるから「働け」みたいな感じです。
雇う側は労働者の性格を重要視しません。
機械や道具みたいな扱いになってしまったわけです。

労働者は高い賃金を約束すれば
勝手に働くものだというように考えるのが当時の管理の仕方になります。
こういった考え方を『機械的人間観(きかいてきにんげんかん)』といいます。

機械的人間観とは人間を機械とみなすということです。

(2)企業全体の管理の視点が抜けている

2番目の問題点は管理するといっても
どこを管理しているか?というと
テイラーの科学的管理法の場合、
実際にモノを作っている生産現場の
管理に特定をしています。

企業全体の管理のことを余り気にしていません。
言い方を変えると先ほど作業部門と管理部門と話をしましたが
作業部門の管理は徹底しています。
でも、実際に頭を使う頭脳部門である管理部門の管理までは
実はテイラーの科学的管理法は触れていないという問題点があります。

なので企業全体の管理の視点が抜けているという問題点があります。
以上がテイラーの科学的管理法における2つの問題点でした。

以上で解説を終わります。