ここまでテイラーとファヨールを個々に解説してきました。
・ファヨール経営管理の5要素についてわかりやすく解説
・ファヨールの6つの企業活動についてわかりやすく解説
・テイラーの科学的管理法をわかりやすく解説
・テイラー以前の管理論|成行管理と単純出来高制について解説
今回の記事ではテイラーとファヨールの共通点と違いについて
解説していきます。
目次
テイラーとファヨールの共通点
まずはテイラーとファヨールの共通点から。
2つあります。
共通点(1)機械的人間観
1つ目の共通点は機械的人間観です。
テイラーは人間というのは「お金さえもらえれば
なんでもいうことを聞く」という経済的動機に基づいて行動すると考えます。
そんな考え方を機械的人間観といいます。
⇒テイラーの機械的人間観の詳細はこちら
ではファヨールに関してはどうでしょう?
ファヨールの場合、
そこまで極端な考え方ではありません。
ですが、『人間は命令が与えられたらそれを
素直に聞く存在である』というふうにファヨールは考えます。
なので上司から「これコピーしといて!」
って命令を受けたら「はい、わかりました」
といって素直に聞くというのが労働者(従業員)
であるとファヨールは考えます。
まさに機械みたいな人間ですよね。
今だったらそんな仕事、
AIに完全に乗っ取られそうな気がしてなりませんが・・・。
なので結局のところ
ファヨールもテイラーの主張した
機械的人間観と同じ考え方といえるでしょう。
ちなみに、機械的人間観という考え方を突き詰めていくと
『人間は命令を受けて遂行する存在である』
というふうに考えていきます。
機械的人間観という考え方に基づいた人間というのは
『命令を受けて素直に実行すべきである』といったような
立場をとっていく管理の考え方というのを『伝統的管理論』といいます。
共通点(2)計画と執行の分離というのがどちらもとられている
2番目の共通点は『計画と執行の分離というのがどちらもとられている』です。
テイラーの記事で解説しましたが
テイラーは頭を使うところと体を動かすところは別だと考えます。
⇒テイラーの科学的管理法をわかりやすく解説
テイラーは労働する部門と計画する部門を分けて考えるのですが、
ファヨールも同様の考え方をしています。
ファヨールの場合は以前の記事で管理活動が大事だと解説しました。
管理活動といったものの存在がそれ以外の企業活動を統合するのでした。
⇒ファヨールの6つの企業活動についてわかりやすく解説
ということは実際にそれぞれの活動の調整をする管理部門といったところが
別個に存在する部門を統合するってことは
テイラーの考え方と似ていますよね。
テイラーとファヨールの違い
続いてテイラーとファヨールの違いについて解説します。
違い(1)計画と執行のどちらに重きを置くか?
テイラーとファヨールの違いとしては
どっちにウェイトを置いたか?という点を挙げることができます。
たとえば先ほど解説した『計画と執行の分離』という共通点であっても
テイラーは『執行』に重きを置いていました。
スコップの角度はどれくらいにしないといけないか?とか
どれくらい働かないといけないか?といった現場中心なのがテイラーです。
これに対してファヨールは計画や管理活動の方に重きを置いています。
違い(2)命令系統の違い
2つ目は命令系統の違いを挙げることができます。
テイラーの場合には複数の上司から命令を受けるという特徴があります。
職能別職長制度の話を思い出してください。
⇒職能別職長制度の詳細はこちら
職能別職長制度の存在によって
いろんな部門の職長がいるわけです。
実際の従業員が仕事をする際には
様々な部門の職長からの命令であったり指示を受けているというふうな
仕組みをとっていたのがテイラーの場合です。
だからテイラーの場合には
複数の上司から命令を受けることがあるわけです。
これに対してファヨールは命令一元化の原則です。
⇒命令一元化の原則の詳細はこちら
命令一元化の原則というのは複数じゃないということです。
ファヨールの場合には命令一元化の原則があるわけなので
1人の上司から1つの命令を受けるという仕組みをとることになります。
違い(3)理論の影響
2番目は理論的な影響がどこにあったか?の違いがあります。
テイラーであったりファヨールが提唱した管理の方法っていったものが
後々の経営学の理論といったものの中でどういったところに影響を与えたか?
という話です。
まずテイラーは生産工学に影響を与えていきます。
ものによっては生産工学はインダストリアルエンジニアリングという場合もありますが
そういった分野にテイラーは影響を与えていきました。
@WATERMAN1996 こんばんは。基礎技術はともかくテイラーシステムのような生産工学や統計的品質管理など大量生産のために必須の仕組みは整ってなかったようですね。戦後のデミング博士やドラッカーの指導もそのあたりだったと聞いたことがあります。
— ★落花星★ (@nog_plain) October 8, 2015
一方ファヨールの場合、以前解説しましたが
『管理とは計画し組織し、命令し調整し統制すること』という
ある意味名言みたいなものが残っています。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
⇒ファヨール経営管理の5要素についてわかりやすく解説
・計画
・組織
・命令
・調整
・統制
といったものは順番になっています。
つまり、
(1)計画
(2)組織
(3)命令
(4)調整
(5)統制
という順番でやるべきだということです。
ちなみにファヨールはこの順番に関して
余り気にしてなかったようですが・・・。
とはいえ、ファヨールのあとを受け継いだ人たちが
「(1)から(5)の順番でやるべきだ」と主張していました。
なので『計画して、組織をして、命令をして、調整をして、統制をする』
といった1個1個順番にやっていくべきであって
それが管理であるんだというふうに考えていきます。
そういった立場をとる人たちを『管理過程学派(かんりかていがくは)』といいます。
ファヨールの考えを受け継いだ学派が管理過程学派です。
【アンリ・ファヨール – Wikipedia】 ジュール・アンリ・ファヨールは、フランスの鉱山技師、地質学者、企業経営者で経営学者。管理過程学派の始祖で、「管理原則の父」とも呼ばれる。フレデリック・テイラーとともに経営管理論の礎を築いたひとりに数えられる。 #bot
— 百科事典を読む者 (@wpsurfer) July 18, 2010
・テイラーは生産工学の発展に寄与した
・ファヨールは管理過程学派の成立に貢献した
という違いがあります。
以上のようにテイラーやファヨール違いはありますが、
2人とも理論的な影響を与えいきました。
以上で解説を終わります。