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1次試験

テイラー以前の管理論|成行管理と単純出来高制について解説

テイラー




テイラーは科学的管理法の父と言われ
生産現場に近代化をもたらした人物として有名です。

今回の記事ではテイラーの科学的管理法以前の管理論について解説します。
テイラーの科学的管理法はこちらで解説しています。
テイラーの科学的管理法をわかりやすく解説

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テイラーの科学的管理法以前の管理論

テイラーさんは人をいい加減な管理ではなく
科学的に管理しようと主張した人物です。

経営理論の歴史といったものはだいたい20世紀くらいからの経営に関する歴史を
追っていきますが、テイラーさんが活躍していたのは
19世紀末のアメリカです。

テイラーの本題に入る前に
テイラーが生きていたころの管理とか経営といったら
どういった経営の特徴があるのか?ということを
最初に前提として解説していきたいと思います。

特徴としては2つあります。

まず1つ目の成行管理から解説しますね。

(1)成行管理

1個目は成行管理(なりゆきかんり)です。

当時は成行(なりゆき)管理が横行していました。
成行というのは場当たり的ということです。
「その場その場」っていう言い方もできます。
その場その場の管理というのをやっていくことになります。

たとえば社長が気分で「お前、こっちの仕事の方が得意そうだから
あっちの部門に移動な!」みたいな
科学的な根拠がなく、直感的な場当たり的な管理が成行管理です。

現場での経験であったり
習慣といったものを優先させます。

したがってAという工場があったとしたら
A工場だけで通用している習慣とか、
A工場の工場長の人の経験に基づく管理というのを成行管理ではやります。

なのでA工場、B工場、C工場と工場が3つあったとしたら
3つでそれぞれ言っていることが違うわけです。
それぞれの3つの工場の工場長が言ったことが正しいということになります。
現場にいる人の経験であったりとか習慣を優先させていくわけです。
だからA工場、B工場、C工場と3つ工場があったら
3つの工場がやっている管理って
それぞれの工場ごとの管理になっていくので
本社の人間からしてみると
バラバラの管理というのをやっていくことになります。

生産現場によって管理の仕方とか管理の基準といったものがバラバラ
というのが成行管理というものになります。

なのでA工場とB工場で管理の仕方が違っていて
A工場は管理が楽だけどB工場は管理が厳しいというようなことが
起こってくるわけです。

こんないい加減な管理が
19世紀のアメリカで横行していたんですね。

(2)単純出来高制

それから2番目。
2番目は単純出来高制といいます。

19世紀アメリカの成行管理ですが、
賃金はどうやって決まっていたのでしょう?
単純出来高給制でした。

現在でたとえるなら歩合制が近いです。
一つ作ったらいくら報酬を与えますよみたいな制度が
単純出来高給制です。

別の定義をいうと、
単純出来高制とは労働者の出来高(どれくらい作ったか?)に
比例して賃金を支給するものをいいます。

なのでいっぱい生産した人はいっぱい給料がもらえますし
あまり生産してなかった人であれば給料はあまりもらえません。

この話を聞くと、
「だったら一生懸命頑張れるんじゃないの?」
って思える制度のように聞こえるかもしれません。

でも実は1個だけ問題点があります。
たとえば働く側からしてみれば
「いっぱい働けばいっぱいお金もらえるからいいじゃん」
って思うかもしれません。
でも、雇う側から考えてみれば
賃金はちょっとでも抑えたいわけです。
会社からしてみたら賃金はコストになります。
コストはちょっとでも抑えたいですからね。

会社として「あまり賃金を払いたくないな」
と思うとどうするか?というと
いっぱい働く人の時給を下げるこということをやります。

一生懸命働いていっぱい生産する人がいます。
単純出来高制だといっぱいお給料を払わないといけないわけですが
でも会社は「いっぱい働く人にはそこそこの給料を出せばいいかな」
と思ってしまいます。

いわゆる時給を下げるということをやっていくわけです。
なので単純出来高制の問題点とは何か?
というと労働者の賃金水準(給料のこと)が
上がると管理者は賃金率(時給)を下げることで
労働者がお給料をあまりもらえなくするというところです。

そうすると働く側は何を考えるか?というと
一生懸命働けばいっぱい給料がもらえるかといったら
実際に働いてみたら、一生懸命働いてもあまり給料が上がらないと感じます。

どうしてか?というと時給が下がるからです。
なので労働者の側は「あまり一生懸命働いても稼げないよな」
と考えます。

結果として労働者は「そこそこ仕事すればいいか」って考えます。
仕事をしすぎると逆に損をしてしまうと考えるわけですね。

と考えると労働者はみんなそれなりの働きしかしません。
そして後は楽すればいいやって考えるわけです。
それが組織全体に広がっていきます。

なので組織全体で怠ける、さぼるということが発生していくわけです。
怠けるとかさぼるというのが組織単位で拡がっていくような状態を
なんというか?というと、『組織的怠業(そしきてきたいぎょう)』といいます。

組織的怠業とは組織単位でさぼることのことです。

つまり単純出来高制の問題点は端的に言ったら
組織的怠業が起こるということです。

以上のことからわかるように
組織的怠業をどうやって解消していけばいいか?というのを
考えることがテイラーが出てくる前の経営管理の問題ということになります。

単純出来高給制

ここまで抽象的に解説してきたので具体例を挙げて解説しますね。

たとえば、崎陽軒のシウマイ(仮の話です。本当の話ではありません)で、
シウマイを1個作ったら3円のお給料をあげますよ
みたいな報酬体系だったら、これは立派な単純出来高給制となります。

そうすると、
だんだんスキルがアップします。
みんな頑張ってシウマイを作ろうとしますから。

となると同じ1時間でもたくさんシウマイを作れるようになるので
お給料がどんどん増えるわけですよ。

たとえば、入社当初は1時間で3個のシウマイしか作れなかったのが
1年後、1時間で30個のシウマイを作れるようになったら
10倍のお給料をもらえるようになります。

これが単純出来高給制です。

ですから、ベテランになればなるほど
給料がどんどん増えることになります。

「すごい良い制度ですね!」
と思った方もいるかもしれません。

でも、そんなによい制度でもないんです。

確かに従業員としては良い精度でした。
でも逆に会社の方としてはつらいです。

だって、従業員の給料がどんどん上がったら
会社のお金がどんどん減るわけですから。
会社のお金は有限ですから。

では会社はどう対処したのでしょう?
会社は単価を切り下げるという方法をとりました。

たとえば、今までだったらシウマイ1個作ったら3円の給料支払ったけど、
これからは1個作ったら2円にしたわけです。

1個3円⇒1個2円、
これが単価の切り下げです。

こんな感じで単価の切り下げをやられると
従業員は頑張って働いても意味がないとやる気を失ってしまいます。
そこでまず従業員のAさんが、やる気を失って仕事をさぼります。

でも、この時点では仕事をさぼっているのはAさん1人のみ。
他の人は給料をいっぱいもらおうと、頑張ってシウマイを作ります。

結果、Aさんは仕事をさぼってシウマイを作る量を減らしても
1個当たりの単価は下がります。

そうこうしているうちに
周りの従業員も気づき始め、全従業員が仕事をさぼり始めます。
これを組織的怠業の発生といいます。

みんな一生懸命頑張って、スキルを磨きながら頑張ってきたのに
会社は給料を減らしてくるわけですから、
従業員が一丸となって仕事をさぼるのも無理はないことだと思います。

ここでテイラーさんは怠業には2つのタイプがあるといっています。

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テイラーがいう怠業について解説(テイラーの科学的管理法)

テイラーがいう怠業というと

・自然的怠業
・組織的怠業

の2つのことを指します。

自然的怠業とは本能的に労働者が楽をしようとすることをいいます。
大学の講義などで、先生が「疲れたから座って説明しますね」
みたいな感じのことです。

これは誰でもありますね。
避けることができません。
抑えることができないってことです。

本能として人間が持っていることですから。

とにかく自然的怠業は防ぐことができません

これに対して先ほどのシウマイの会社の例で登場した
組織的怠業は防ぐことができます

ここまでまとめますと、
テイラーさんは自然的怠業は多かれ少なかれ発生するもので
仕方がないと考えます。

ところが組織的怠業は労働者が口裏を合わせて働かない話なので
防ぐことができると考えます。

さらにまとめると
自然的怠業は防止できないけど
組織的怠業は防止できると考えた
わけです。

ではどうやったら組織的怠業を防止することができるのでしょう?
19世紀のアメリカでは
会社の管理が成行任せだったわけです。

でもそうではなくて科学的な管理をすれば
組織的怠業を防ぐことができるとテイラーさんは考えました。

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テイラーの科学的管理法の解説

1911年に発表されたテイラーさんの著書『科学的管理法』があります。

この著書によるとまず『課業(タスク)』の設定が必要だと考えました。
課業(かぎょう)とは労働者のノルマのことです。
つまり組織的怠業を防ぐためにノルマを設定するってことです。

現代語ではタスク管理ともいいます。
人間は「いついつまでにこれをやらないといけない」というノルマ(タスク)を決めないと
やる気にならないとテイラーさんは考えました。

ではどうやってノルマを設定すればよいのでしょう?
2つの研究が必要だと考えました。

テイラーが考えた2つの研究とは

・動作研究
・時間研究

のことです。

動作研究とは一流の労働者の動作を観察するってことです。
ちなみに、細かい話になりますが、最初に動作研究について考えたのは
テイラーではなくギルブレスさんです。

ただ、科学的管理法として動作研究を取り入れたのはテイラーさんです。
もし公務員試験であったり中小企業診断士試験に
出題された場合にはご注意ください。

話を元に戻します。

たとえばストップウォッチを使って1分測ります。
この間にレンガを下から上に積み重ねていくときに
どうやって無駄な動きをなくしていかにスピーディーに
無駄な動きを省いてレンガを上に積み重ねていけるか?を
研究したのがテイラーさんです。

つまり、テイラーさんは動作研究に時間研究を組み合わせています。
テイラーさんはベテラン労働者の動きを見ていました。
その人たちの動きというのは本来無駄がないわけです。

テイラーさんはその無駄のない動きを研究したと考えてください。

テイラーさんは動作研究、時間研究をやることで
熟練労働者による1日の最高水準を標準として設定しました。

これを課業といいます。

逆にいうと誰でも到達できる低いハードルではありません。

さらにテイラーさんは単純出来高給制度でなく、
差別的出来高給制度を推奨しました。
タスクの達成度合いに基づいた出来高制度を差別的出来高給制度といいます。

たとえばタスクを時間通りに正しくやり終えた人には
20%などの割増賃金を与えるけど、
達成できなかった人は低い賃金とする制度を差別的出来高給制度
といいます。

つまり、テイラーは差別的出来高給制度を採用すべきだといったわけですね。

さらにテイラーは会社の組織に関して
『職能別職長制度』を置くことを推奨しました。

従来はトップが(一人が)なんでもやってしまう組織があったとしましょう。
でも、そんな万能な人間はいません。

そこで万能職長の代わりに専門職長を置くことを
テイラーさんは主張しました。
たとえば、準備係、修繕係、組立係など
いろんな分野に分けようとしました。

職能別職長制度とは簡単にいうと
いろんな係に分けて、そこに専門職長を置くこと

をいいます。

あと、テイラーさんは『指図票制度(さいずひょうせいど)』も提案しました。
現場で働く人たちは計画部というところで作られた指図票に基づいて
今日やる作業を確かめ、実行できるという制度のことです。

これを現代用語に置き換えると
チェックリストとかやることリストみたいなものです。
チェックリストを見ながら、
今日やることをやり切ればよいわけです。

指図票制度により、監督者はいつも労働者を
監視する必要がなくなります。
結果、監督などの上層部の負担を軽減することができます。

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テイラーの科学的管理法まとめ

テイラーが主張した科学的管理法は
まずタスク(課業)がクリアーできたら給料アップし
クリアーできなかったら低い給料といった差別的出来高給制度を採用すべきだとしました。

つまり、テイラーは人間というのはお金で動く生き物だと考えたわけです。
何のために働くか?それはお金のためだとテイラーは考えました。

給料がアップすればみんなやる気になるとテイラーは考えたわけです。

ちなみにテイラーの科学的管理法を採用した会社は
フォードという自動車会社です。

フォードは少品種で大量生産をしていたので
財務会計でいえば総合原価計算を採用していたわけです。

総合原価計算はこちらの記事をご覧ください。
総合原価計算とは?個別原価計算の違いについても解説

ただ、今後解説する人間関係論の立場では
職場の人間関係の方が大事だと考えました。

科学的管理法だと人間性を完全に無視して
機械の歯車のように人間を考えている。
でも、これはよくないと人間関係論は考えました。
つまり人間関係論ではお金でなく人間関係だろうと主張したわけですね。

もし今回の記事がわかりにくいと感じた場合は、
別の角度からテーラーの科学的管理法について解説しましたので
コチラの記事をご覧ください。
テーラーの科学的管理法をわかりやすく解説