参考文献・URL
マンキュー経済学ミクロ編・マクロ編分厚いマンキュー経済学を読み解くのがめんどくさい人は、こちらをおすすめします。
⇒スタンフォード大学で一番人気の経済学入門(ミクロ編) [ ティモシー・テイラー ]
⇒スタンフォード大学で一番人気の経済学入門(マクロ編) [ ティモシー・テイラー ]
以前の記事で総余剰について解説しました。
⇒総余剰グラフを利用した求め方をわかりやすく解説
今回の記事では経済学用語である『死荷重とは何か?』解説しますが、
死荷重は総余剰の理解が前提となります。
今回の記事を読んでみて理解しにくい場合は
一度、総余剰の記事に戻ってみてくださいね。
それでは本題に入っていきましょう。
経済学で登場する死荷重とは?
上記グラフは前回解説した総余剰のグラフです。
⇒総余剰グラフを利用した求め方をわかりやすく解説
上記グラフは需要と供給がイコールになっている状態になります。
つまり、ちょうどよい生産量になっているということです。
この記事で解説する死荷重が生まれる状態というのは
ちょうどよい生産量ではなく、
生産量が少なすぎたり多すぎたりする状態になります。
今回の記事では死荷重を説明するために
生産量が少なすぎるケースで考えてみたいと思います。

上記グラフのように完全競争市場で普通に需要と供給がぶつかっていれば
上側の青色の三角形が消費者余剰で、下側の赤色の三角形が生産者余剰で
合計で総余剰となります。
ちなみに完全競争市場についてはこちらの記事で解説しています。
⇒完全競争市場とはどんな市場なのか?わかりやすく解説
ここまでは総余剰の記事で解説しています。
⇒総余剰グラフを利用した求め方をわかりやすく解説

ここまでを前提に、今年はたまたま
台風の被害で上記グラフしかミカンが採取できなかった(生産量がQ´)としましょう。
(上記グラフののQ´が今年の生産量)
この場合、需要曲線Dにある点Eから左側に向かって縦軸にぶつかる点P´が価格になります。

上記グラフをご覧ください。
ちょうどよい生産量というのは需要Dと供給Sの交点Aから
横軸に下ろしてきた点QAとなります。
台風の被害などで生産量が落ちたQ´とQAを比較すると
QAよりQ´は左側にありますね。
位置の把握は死荷重を理解するうえで重要です。

この時の価格というのは
お客さんが支払ってくれそうな価格の中で一番高い価格をつけると
経済学では考えるのでP´となります。
需要と供給の交点である点Aにおける価格よりは明らかに高いですね。
もし点Aならそこから左側にある縦軸上の点になるので
明らかにP´よりも下(安い)になりますから。

で、上記グラフの⓵の領域が消費者余剰となります。
これはよろしいでしょうか?
総余剰の記事が理解できていれば、ここは分かると思います。
⇒総余剰グラフを利用した求め方をわかりやすく解説

次は生産者余剰ですが、ちょっと面倒くださいです。
生産者余剰の価格は上記グラフに書いてある高さ(縦軸)で
取引量は幅(横軸)となります。
つまり、生産者余剰の価格は0からP´までの距離で
取引量は0からQ´までの距離ということです。
本来なら生産者余剰は価格×取引量=長方形の面積(⓶+④)(売上、総収入とも)
だったのですが・・・
ですが、⓶+④から④を引いた部分が生産者余剰になります。
なぜなら供給(曲線)Sというのはイコール限界費用だからです。
ここが意味不明な方はこちらの記事をご覧ください。
⇒供給曲線と限界費用曲線の関係についてグラフを使ってわかりやすく解説
経済学は積み重ねの学問です。
以前まで学習した内容が前提で理屈が積みあがっていくので
少ししんどいでしょうけど、頑張ってついてきてくださいね。
話を元に戻して今回の場合、
⓶の部分(台形)が生産者余剰となります。
なので、⓵+⓶=総余剰となります。

すると、以前解説した総余剰のグラフだと上記のように
無駄なく総余剰ができあがっていますが、、、

今回のような過少生産の場合には
③の部分が空白(生産者余剰でも消費者余剰でもない)になってしまいました。
余剰が消えたということです。
この③の面積が『死荷重(しかじゅう)』です。
『死荷重=余剰の損失』
という意味です。
死荷重とは?さらに噛み砕いてわかりやすく解説
今回の記事では過少生産(ミカンの生産量が台風などの影響で激減したケース)です。
もし普通に需要と供給がぶつかれば上の三角形が消費者余剰、下の三角形が生産者余剰、
合計が総余剰となりますが、今回の記事では過少生産のケースです。

過少生産の場合、
価格も上がり③の死荷重が生まれてしまいます。
死荷重が生まれる原因は過少生産です。
この余剰がなくなる(余剰の損失とも)ことを死荷重といいます。
死荷重というのは余剰がなくなっているという意味です。

余剰がなくなるというのは上記グラフみたいに死荷重が0の状況と比較した時の話です。
要するに需要Dと供給Sの交点で生産量や価格が決まっているケースと比べてということです。
このグラフと比べると

上記グラフは③に死荷重が発生していますね。
生産量が減り、価格が上がったために
③の面積だけ余剰がなくなっているということです。
それはいったい何を意味するのでしょう?
死荷重とは余剰がなくなるということです。
余剰がなくなるということは取引が無駄になっている(非効率な取引になっている)という意味です。
たとえば、ミカンの生産で考えてみましょう。
ミカンが過少生産になるということは
いくら台風の影響とはいえ、労働者がいらなくなりますよね。
どういうことか?というと、
できあがったミカンがたくさんあるから人手不足になり、
農家の人も、他の地域から夏休みや冬休みにバイトのお兄さんやお姉さんを雇うわけです。
農家のおじさん、おばさん1人や2人の労働力だけで
大量のみかんを採取しきれませんからね。
でも台風の影響でミカンが出来上がらなかったのなら
そもそも売り上げが上がらないから人も雇えませんし、
雇う必要もありません。採取するミカンがないからです。
だから過少生産状態だと一般的に人がいらないから労働者が余ります。
つまり、失業者がでます。
他の例えでいくと、
服の工場でいったら、服を作る量を減らすなら労働者をリストラするしかないでしょう。
服を作るために人を雇っているわけなので、
何らかの原因で服を作る生産量を減らしたのなら
リストラして労働者数を減らすしかありません。
となると、失業者がでますね。
また、服の工場でいったら服の生産量が減るので、空きスペースができますね。
普段なら工場全体で服を作っていたのが、
たとえば半分に服の生産量を減らしたのなら、やはり半分の空きスペースができるかもしれません。
つまり過少生産だと労働者や設備も余るわけです。
これは無駄だということをいっているのが死荷重です。
なので労働や設備の投入が少ないと失業者や遊休の設備でるので
資源配分上の非効率性(非効率な取引になっている)が起こります。
非効率=無駄という意味です。

この内容を『死荷重』という3文字だけで言い表しているのです。
めっちゃくちゃややこしい話でしたね。
だから『死荷重とは』と検索する人が多いのでしょうね。
死荷重とは余剰がなくなるということですが、意味としては資源配分が非効率(無駄)になっているということです。
資源配分が非効率というのは過少生産であるがゆえに労働者が失業者になってしまったり
使っていない設備が出てきたりしている状態になっているというのを③の三角形が教えてくれているのです。
だから死荷重が出る状態というのは無駄が起きているのでよくない状態だといえますね。
以上で死荷重についての解説を終わります。
次のケースでは生産者余剰がマイナスになるケースを
過剰生産のケースを例に解説していきたいと思います。
⇒生産者余剰がマイナスになるケースとは?