参考文献・URL
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今回は投資乗数と政府支出乗数とは何か
公式を使って詳しく解説していきたいと思います。
ところで投資『乗数』、政府支出『乗数』の『乗数』とは
どういう意味の用語なのでしょうか?
『乗数』の乗とじゃ加減乗除の乗です。
なので乗数とはかけ算を意味しています。
ですから投資乗数とは投資が変化した時に『何倍』
国民所得(Y)が変化するかということです。
『何倍』のところにかけ算の要素が入っていますね。
ここが乗数になりますね。
投資乗数の公式についてわかりやすく解説
投資乗数の公式は
です。
上記投資乗数の公式で⊿はデルタと読み、
増加量を表しています。
なので⊿Yは国民所得の増加量(所得変化額)を意味しています。
別の表現をすると⊿Yは投資の増加量の何倍になるか?ということです。
ですからピンクで囲っている部分が投資乗数なのですが
投資乗数が仮に4だったとしましょう。
で、⊿I(投資)が5兆円だったとすると
⊿Y=4×5兆円=20兆円
となり、20兆円、国民所得が増える効果があるとわかります。
ではなぜ投資が5兆円なのに国民所得が20兆円、増えるのでしょうか?
上記グラフは45度線です。
ここから先は45度線が前提の話になります。
もし45度線について詳しく知りたい方は
こちらの記事をご覧ください。
⇒【わかりやすく解説】45度線分析とは?
話を元に戻します。
上記45度線のグラフで、もともと総需要曲線がYDの位置にあったとします。
そして投資Iを増やすことによって上にシフトします。
Iを増やすと上にシフトする意味が分からない方は
先にこちらの記事をご覧ください。
⇒総需要の式について分かりやすく解説
もう一度同じグラフをだしますね。
上記グラフで最初のYD(総需要)のとき、YS(総供給)との交点は
横軸で見るとYEだったわけです。
ですが、投資額を増やす(⊿I)ことでYDがYD´となり
YSとの交点が⊿Y分だけ右シフトしYE´となります。
すると⊿Iの増加量と比べて⊿Yの増加量の方が大きくなっていますね。
この大きくなっている分が何倍になるか?が投資乗数です。
どうやって投資乗数の公式を導き出しているの?
まず前提として
YD(総需要)=C+I+G
としています。
Cは消費、Iは投資、Gは政府支出です。
ここではEX(輸出)とIM(輸入)は考慮していません。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
⇒総需要の式について分かりやすく解説
それから
Y(国民所得)=Ys(総供給)=YD(総需要)
です。
ここはこちらの記事で詳しく解説しています。
⇒【わかりやすく解説】45度線分析とは?
Ys=YDとなる理由については
⇒45度線分析から均衡国民所得を計算する方法
それから
C=a+cY
です。
ここはこちらの記事で解説しています。
⇒ケインズ型消費関数とは?式についてもわかりやすく解説
投資乗数のことを理解するためには
いろんなことを知っておかないといけないわけですね。
あとはI=Io,G=G₀
とします。
I=I₀やG=G₀は単純に文字を置き換えただけ
という感覚で大丈夫です。
一応I₀とかG₀になる意味を言っておきますと、
こういったI₀みたいなのを独立変数といいまして
独立して数値が決まってくる変数なんです。
そして今回はI₀とかG₀ですが、
もう少し複雑になることがあるんです。
たとえばI=I₀+Irみたいな感じです。
ここで悩まないでくださいね。
そういうものだと思ってください。
なので、
上記のようにYD=C+I+GにC=a+cY、I=I₀、G=G₀を代入します。
結果、YD=a+cY+I₀+G₀となります。
そしてcYを左辺に移項します。
また、YD=Yでしたね。
なのでY-cY=a+I₀+G₀
となります。
変形すると
(1-c)Y=a+I₀+G₀
それから両辺を(1-c)で割ります。
式を変形していくと上記のようになります。
さらに変形して
上記のピンクで囲った部分が投資乗数となります。
実際に記事の最初に示した投資乗数と一致していますね。
で、上記の投資乗数とI₀(投資)が掛け算の関係になっているので
たとえばI₀を100増やすと、投資乗数の数字分だけ掛け算で
大きくなり、国民所得Yが大きくなるわけですね。
政府支出乗数公式の求め方
政府支出乗数も結局のところ投資乗数の考え方と同じです。
まず政府支出乗数とは政府支出(G)が変化した時に
どれだけ国民所得が変化するかを表す数字のことです。
で、政府支出乗数の公式は
となりますね。
これって、先ほどの投資乗数を導き出した式なら
上記式のピンク枠のところになりますね。
なので政府支出の増加量に対して政府支出乗数をかけた分だけ
国民所得Yが増加することになります。
たとえば政府支出乗数が2で政府支出を3兆円増やすなら
2×3兆円=6兆円分だけ国民所得が増えるわけですね。
政府支出乗数を使った計算問題の求め方
一緒に例題を解いていき、
政府支出乗数に関する理解を深めていきましょう。
政府支出乗数を使った例題
限界貯蓄性向が0.2のとき、政府支出乗数を6だけ増加させたら
国民所得(Y)はどえだけ変化しますか?
上記例題でまず限界貯蓄性向という言葉が出てきましたね。
限界貯蓄性向についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
⇒貯蓄関数とは?グラフや公式を使ってわかりやすく解説
ここでは簡単に説明しておきますと、
1-限界貯蓄性向=限界消費性向です。
なのでまず、1-0.2=0.8いうことから
限界消費性向は0.8だとわかります。
また政府支出乗数の公式はこちらでしたね。
なので上記公式に当てはめていきましょう。
すると政府支出乗数は1÷(1-0.8)=1÷0.2=5
よって政府支出乗数は5だとわかりました。
で、政府支出を6増加させているわけなので
6×5=30
よって30だけ国民所得Yが増加することがわかりますね。
こうやって政府支出乗数を求めて国民所得の増加分を求めていくわけですね。