今回の記事では多元的国家論とは何か、わかりやすく解説します。
多元的国家論とは?
多元的国家論に対して一元的国家論があります。
一元的国家論とはわかりやすくいうと
すでに存在する権力に対抗する勢力がないとする見方のことです。
別の言い方をすると、国家は他の勢力や集団を超えている存在だってことです。
公務員試験で選択肢からどれが一元的国家論で
どれが多元的国家論に該当するか選ばせる問題が出題されることがあるので
ぜひ最後までご覧ください。
まず多元的国家論の超重要ポイントから。
本質的なところなので、これから解説する内容が
理解できなかったとしても、この重要ポイントだけは覚えておいてくださいね。
国家は特別じゃない。絶対的でない。
国家は他の集団と同じだよ。
です。
この重要ポイントだけでも覚えていただければ、
少なくとも多元的国家論を理解しやすくなりますし、
一元的国家論との違いも明確になってくると思いますよ。
ではどんな背景が多元的国家論にあったかというと
2つのことがあります。
どんな背景が多元的国家論にあったか?
背景(1)行政国家化現象が進展した
1つ目は行政国家化現象、福祉国家が進展したという点です。
行政国家になる、福祉国家になるというのは
わかりやすくいうと『規制が増える』ということです。
健康て文化的な最低限度の生活を営む権利があるということになると、
逆に例えばあなたにとって体に悪そうなものがあったら
どんどん切り捨てられていくでしょう。
禁止されるってことです。
例えば牛のレバ刺しは食中毒事件があったため、禁止になっています。
牛レバ刺しは食中毒騒動で今や御禁制となっているが、馬のレバ刺しについては比較的安全性が高いということで今でも食べることができる。ただ希少部位扱いになるため、本場の熊本でも手軽に入手できるわけではないようだ pic.twitter.com/5dFFQeaHhJ
— 黒チューリップ (@kurotulip1) January 3, 2020
牛レバ刺しが禁止になってからちょうど10年だと。そんな経つのね!
その何ヶ月か前に入った焼肉屋のマスターは、「もしかしたら今後食べられなくなるかも」みたいなことを言っていたな。
※写真は2012.6.30に撮影 pic.twitter.com/YrDVNvIZrP— 岩間@東京町田 (@msi2010jp) July 2, 2022
「牛のレバ刺し食べたいよ!禁止なんて大きなお世話だよ。
だったら餅を喉に詰まらせて亡くなる人がいるんだから、
餅も禁止しろよ!」
って思う方もいると思います。
牛レバ刺しで食中毒出た!→牛レバ刺し禁止→牛がダメなら豚を食べればいいじゃない!→豚はもっとやべぇ!豚レバ刺し禁止!→じゃあ鶏!!→以下ループ
この流れを横目に、毎年死者を出してる餅を規制しないのはいかがなんだろうね?
— 🇺🇦にせぢる🇺🇦 (@nisejiru_999) June 12, 2015
でも現実問題、日本では牛レバ刺しを食べたいと思っても食べれません。
国からしてみたら牛レバ刺しを食べたら死ぬ人が出るかもしれないから禁止しているのです。
何食べるかどうかって食べるものそのものだって規制されてしまいます。
規制が強化されていくってことですね。
規制が強化されるっていうことは何が起きるか?
というと、お店の店長からしたら「牛レバ刺しをメニューに出せたら
もっとお客さんが来てくれて売り上げが上がって儲かるから
2号店、3号店を出せるかもしれないのに・・・
どうして国家は俺の邪魔をするんだよ!」
みたいに思うかもしれませんね。
そこからどういう状態が起きてくるか?というと
行政国家化現象とともに集団の噴出(ふんしゅつ)が起こります。
背景(2)集団の噴出
先ほどの牛レバ刺しの例に戻りましょう。
規制をされた焼肉店の店長からしてみたら自由にメニューを作って
お客さんに食べてもらえないわけですね。
でもどうしてもお店としては牛レバ刺しをお客さんに提供したいわけです。
じゃ、どうするか?
集団になって抗議します。
私はあくまで、レバ刺し禁止に抗議する!
— 松下幸広 (@y_matsukun) July 1, 2012
表面化熱の義務化とかありえない。厚生省に抗議する。> ゴールデンタイムズ : 【超速報】 レバ刺し終了のお知らせ http://bit.ly/jxrR3g
— Tomomi TAIRA / 平 知己 (@TequilaBancho) June 29, 2011
私は獣医師だから敏感なのですが、BSE問題でアメリカ産の牛肉が輸入禁止されたことがありました。
⇒当ブログ管理人のプロフィール
BSEを西浦モデルと同じ成功ケースとして語っているのが驚き。アメリカ産牛肉を輸入禁止し、全頭検査したが、BSEの見つかった牛は11頭。牛肉を食って死ぬリスクは日本人全体で0.9人だった。 https://t.co/ZIvstTHKCu
— 池田信夫 (@ikedanob) August 12, 2021
アメリカ牛肉の輸入が禁止された時、
アメリカ牛肉を使っているお店の人たちも集団化しました。
例えば、吉野家は牛肉の提供を取りやめました。
確か吉野家はアメリカ産牛肉しか使わないってことでBSE騒ぎの時も輸入先を切り替えず牛丼提供休止を選んだくらいだから、これって吉野家に止まらず米産牛肉そのものへのdisなんだよなあ。
だとしたら国会議員としてやることは、「実は安全でした」という証拠提出か、輸入禁止運動じゃないのかな— ひえたろう@笑顔と上機嫌こそが最高の化粧 (@hietaro) February 7, 2020
牛角もそうですね。
えーー!!焼肉屋さかいはかつては牛角を喰ってかかる勢いで店舗増やしてた古豪店だよ。BSE問題などで経営が悪化しフライドポテトの専門店を出すなど迷走。ゴールドマンサックスの下で再建はかるも失敗。
むーさんの地元なかったの?! pic.twitter.com/tRBhjJnC80— みさき座長🍷禁酒7日目 (@Rahotsu7) January 23, 2021
集団の噴出というのはみんなが集団になって
政府がやった規制に対して反発することです。
そこから政府の言うことをそのまま聞くのではなく
政府とやりとりするようになります。
結果、
国家VS集団
という対立構造が生まれてきます。
自分達の経済活動を邪魔する国家、政府に対して
異議申し立てをするようになってきます。
そうしてなるべく自由を確保しようと頑張るわけですね。
そう言う背景があります。
多元的国家論のポイント
以上のようなことがあったので
「何でもかんでも規制しちゃダメだ」と言うことで
「国家は社会の領域に勝手に入ってくるな!」と
国家と社会を区別しようとなってきました。
もう1つ、仮に国家が勝手に社会に入ってきたとしても
国家(国家機関)は他の社会集団(企業や学校)と同じであって
特別ではないということになってきました。
国家機関はそんなに偉いものではないと言うことですね。
他の社会集団のことを『部分社会』といいます。
・国家と社会を区別する
・国家機関は企業や学校といった社会集団と同じで部分社会に過ぎない
という2点です。
このポイント2点がわかっていれば
他の本で多元的国家論や一元的国家論を読んでも理解しやすくなっていると思いますよ。
・国家機関
・会社
・学校
・教会
など
ということです。
これが国家機関というのは企業や学校といった社会集団と同じという意味です。
国家機関はコミュニティの中の1つの機関に過ぎないという理解でOKです。
そして部分社会というのは
全体社会の中の部分だから
国家機関、学校、会社、教会などそれぞれの社会のことを指します。
ちなみに部分社会はアソシエーションということもあります。
こういった主張をメインにした人はハラルドラスキーさんでした。
以上で多元的国家論についての解説を終わります。