参考文献・URL
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令和4年現在、めっちゃくちゃインフレが加速していますね。
日本もアメリカもどこの国もそんな感じがします。
アメリカのイエレン財務長官。GDPマイナス受けた記者会見で、米経済は新たな段階に移行したと強調しました。インフレ見通しで大間違い、説得力がありません。ロサンゼルス でランチすると円換算で3000円超えます。ガソリンはリッター200円越え。食品は3割ほど上がりました。#インフレ
— 松島 新 (@matsushima_news) July 28, 2022
ところでインフレ率がどんな水準に決まっていくのか?
ということを考えていくとしたら、どうすればよいのでしょう?
インフレ率を考えるのに一番大事なのが長期均衡です。
アメリカ国民一人辺り約270万円配り、ガソリン税もチャラ、50州の地方自治体の借金もチャラ、奨学金もチャラ、それで国民にステイホーム。そんな事すれば需要と供給のバランスが崩れてインフレ率が9%になるのは当たり前だが経済成長率も6%と過去30年間で一番の好景気だ。
— 米田君 (@nidaseyo) July 24, 2022
長期均衡とはどういうもので、
それが具体的にどういう点(長期均衡点のこと)になるのかがすごく大切です。
・長期均衡とは何か?
・長期均衡点とは何か?
についてわかりやすく解説します。
長期均衡とは?
長期均衡とは国民所得Yも期待インフレ率$π^{e} $も変化しない状態のことです。
たとえば国民所得Yがそれ以上変化しない場合、
前期と今期で国民所得は当然変化しませんね。
つまり前期の国民所得$Y_{ー1} $と今期の国民所得Yは一致するということです。
このことを式で表すと
Y=$Y_{ー1} $
となります。
では一致しているという関係をインフレ需要曲線の中に
代入してみましょう。
インフレ需要曲線の公式は
Y=$Y_{ー1} $+α(m-π)+βg
$Y_{ー1} $:前期の国民所得
Y:今期の国民所得
m、g:貨幣供給M、政府支出Gの変化率
α、β:正の定数
π:インフレ率
でしたね。
今回の記事では理解しやすくなるために、
また、あってもなくても問題ないので、
政府支出Gの変化率であるβgの部分は除外して考えることにしますね。
なので、
Y=$Y_{ー1} $+α(m-π)
$Y_{ー1} $:前期の国民所得
Y:今期の国民所得
m:貨幣供給Mの変化率
α、:正の定数
π:インフレ率
となります。
この式の中に国民所得が変化しないという関係(Y=$Y_{ー1} $)を代入します。
すると、Y=$Y_{ー1} $+α(m-π)のY=$Y_{ー1} $部分が消えますね。
だって、Y=$Y_{ー1} $よりYに$Y_{ー1} $を代入すると
$Y_{ー1} $=$Y_{ー1} $+α(m-π)となります。
左辺の$Y_{ー1} $を右辺に移項しますと
0=ー$Y_{ー1} $+$Y_{ー1} $+α(m-π)となって、
0=α(m-π)
となりますからね。
そして、
0=α(m-π)においてαは正の定数。
αは0ではないということです。
0=α(m-π)と左辺が0なので右辺も0でないと
式が成立しませんね。
だって『=(イコール)』の関係なのですから、
左辺が0なら右辺も0でないといけないのはわかっていただけるでしょうか。
で、右辺はα×(m-π)です。
掛け算して0になるためには
αが0か(m-π)が0のどちらかです。
先ほどもいいましたが、αは正の定数なので0ではありません。
1とか2とか100とかです。
よって、(m-π)が0でないといけませんね。
つまり、m-π=0
左辺のーπを右辺に移項すると
m=π
となります。
ということは(m-π)において
mとπは同じ数字でないといけないということです。
たとえばmが5ならπも5です。
5ー5=0
になりますよね。
m(貨幣供給Mの変化率)とπ(インフレ率)が一致しているということです。
それからさらに期待インフレ率($π^{e} $)も変化しません。
期待インフレ率($π^{e} $)が変化しないってどんな状態なのでしょう?
それは現実のインフレ率(π)と期待インフレ率($π^{e} $)が一致している状態です。
現実のインフレ率(π)=期待インフレ率($π^{e} $)
です。
どんなときに期待インフレ率って変化するのでしょう?
ちなみに期待インフレ率とは、市場のプロたちが予想している物価の上昇率のことです。
ここをふまえて考えてみましょう。
たとえば、現実と自分の考え、予想が一致しない時ってどうでしょう。
自分の予想が現実とずれていれば、現実に合わせますね。
そして自分の予想を変えていくでしょう。
ということは逆にいうと
予想をそれ以上変化させない場合って
現実のインフレ率と自分の予想(期待)が一致している時です。
現実のインフレ率と自分の期待(予想)が一致しているなら
それ以上変化させる必要はありませんよね。
では
現実のインフレ率(π)=期待インフレ率($π^{e} $)
この式を今度はインフレ供給曲線の中に代入してみましょう。
$π= $$π^{e}$+$ab(YーY_F) $
π:現実のインフレ率
$π^{e} $:期待インフレ率
a,bは正の定数(1とか2とか3.5とか)
Yは国民所得
$Y_F $は完全雇用国民所得
です。
ここにπ=$π^{e} $を代入します。
すると
$π^{e}$= $π^{e}$+ $ab(YーY_F) $
となります。
左辺の$π^{e}$を右辺に移項すると
0=ー$π^{e}$+$π^{e}$+$ab(YーY_F) $
となるので、
0=$ab(YーY_F) $
となります。
先ほどと同様、左辺が0なので右辺も0でないと式が成り立ちません。
右辺はab×$(YーY_F) $なので、
abが0か$(YーY_F) $のどちらかです。
でも、aもbも正の定数で0になりません。
よって、$(YーY_F) $が0となりますね。
abという正の数字に0である$(YーY_F) $を掛け算したら
右辺全体も0になりますからね。
なので、
Y=$Y_F $
が成立するということです。
つまり長期均衡とはインフレ率が貨幣供給の変化率mと等しく、
かつ国民所得Yが完全雇用国民所得$Y_F $と等しくなるような状態のことです。
ではグラフを使って長期均衡について解説していきます。
その上で長期均衡点についても説明しますね。
長期均衡(長期均衡点)をグラフを使って解説
縦軸にπ(インフレ率)、横軸にY(国民所得)をとります。
このとき、右下がりのインフレ需要曲線と右上がりのインフレ供給曲線ができます。
そしてインフレ供給曲線とインフレ需要曲線の交点が均衡となります。
ただ、これは長期均衡ではありません。
あくまで短期均衡です。
なぜならこのときのインフレ率が
私たちの期待(予想)と違うなら、当然私たちは予想を変化させていきますからね。
予想を変化させれば、それによって国民所得Yも変化しますし、
国民所得Yが変化すればインフレ需要曲線やインフレ供給曲線も変化します。
結果、どこかに収束していくはず。
そして最終的に収束する点が長期均衡という点(これを長期均衡点)です。
では最終的に長期均衡点はどこになるのでしょう?
たとえば完全雇用国民所得$Y_F $が上記グラフのような場所に
かつ、貨幣供給の変化率mが上記グラフの場所にあったとしましょう。
長期均衡点とは$Y_F $とmの組み合わせを通るような点になります。
つまり、インフレ需要曲線やインフレ供給曲線はシフトを繰り返していきながら
最終的にはインフレ率が貨幣供給変化率と一致し、
そして国民所得は完全雇用国民所得と一致するような点を必ず通るはずです。
そしてその点こそが長期均衡と呼ばれるポイントであり、長期均衡点です。
以上で長期均衡点についての解説を終わります。