今回の記事では社会学で有名な
ハーバーマスについてわかりやすく解説していきます。
目次
ハーバーマスについてわかりやすく説明します
ハーバーマスさんはいろんな本を書いていますが
その中で主著と言われているのが『コミュニケーション(コミュニケイション)的行為の理論』です。
上中下と三分冊です。
・コミュニケイション的行為の理論 上 [ ハーバーマス,J.(ユルゲン) ]
・コミュニケイション的行為の理論 中 [ ハーバーマス,J.(ユルゲン) ]
・コミュニケイション的行為の理論 下 [ ハーバーマス,J.(ユルゲン) ]
ハーバーマスは特にパーソンズの理論の中の行為理論やウェーバーの行為理論などを
集めてきて自らの行為理論の体系としてまとめていきました。
つまりハーバーマスはウェーバーやパーソンズの行為論を再構成し
新たな類型を設定したわけです。
ある意味行為理論のいいとこどりみたいな理論を作り上げたのがハーバーマスということです。
ではハーバーマスはどんな類型を設定したのでしょう?
(1)コミュニケーション的行為
(2)戦略的行為
(3)道具的行為
などです。
まずはコミュニケーション的な行為です。
先ほどご紹介した本のタイトルにもなっています。
・コミュニケイション的行為の理論 上 [ ハーバーマス,J.(ユルゲン) ]
・コミュニケイション的行為の理論 中 [ ハーバーマス,J.(ユルゲン) ]
・コミュニケイション的行為の理論 下 [ ハーバーマス,J.(ユルゲン) ]
ということはハーバーマスはコミュニケーション的な行為を
ものすごく重要に考えているということが伝わってきますね。
だって本のタイトルにもなっているわけですから。
2つ目は戦略的行為で3つ目は道具的行為です。
ハーバーマスが設定した類型(1)コミュニケーション的行為
コミュニケーション的行為とは他者との了解や合意達成を目指す行為のことです。
市民社会というのは私たち国民同士の話し合いによって
国民にとって大切な合意事項を決めていくことです。
まさに民主的な社会ですね。
ハーバーマスは討議倫理ということも重要視しています。
いろんな討論をするにあたっての倫理というものも重要視します。
市民同士のコミュニケーションによって合意を目指していくということです。
今の日本社会でも
いろんな行政的な課題とか問題点ってあるじゃないですか。
たとえば少子高齢化問題ってよく聞きますよね。
じゃ、あなただったらどうやって少子高齢化問題を解決しますか?
何かいい案はありますか?
子供の数が少ない反面、老人の割合はどんどん増えています。
こういう社会の現実を目の前にしてどんな対策を立てないといけないのか?
そういうことを問題提起するわけですね。
社労士の統計の勉強をしてると、少子高齢化社会が社会保障にどれだけの影響を与えているかがわかる。
どうしたら少子高齢化問題を解決できるか、政治家でもない私は今日も考えています。
— 資格勉強中の大学生 (@Shikaku_syutok) May 25, 2021
その疑問をあなたは受け止めて
「私はこのように考えますよ」と自分なりの回答を返すわけです。
たとえば少子化の問題であれば
「子供を安心して育てられるように保育園を無償化して
お母さんが安心して働いて生活できるような社会を実現していきましょう」とか
「経済的に困っている人に援助をしてあげる」とか
「無償化して保育園に入りたい人が増えた結果、
保育園に入れないで待機している児童がいるなら救ってあげる」とか。
そういうことをいって討論するわけです。
するとそれを聞いた人が「なるほど。
あなたがいうことはもっともだね。保育園ってまともにお金を払ったら
お母さんの給料が全額飛んでしまうからね」みたいな感じで
ま自分の回答をプラスしてフィードバックする。
そのような形でたとえば少子化の問題とか高齢者の問題をめぐって
会話を積み重ねることによって何か合意できるようなことが
見つけられれば、話し合いに参加した人の間で合意事項になります。
みんなで話し合ってそういうことが大切だとわかれば
それを国民の声として政府に対して要求したり要望したりすることができますね。
コミュニケーション的な行為というのは
いろんな問題点をめぐって他者との了解、合意達成を目指して対話して
発言してコミュニケーションをとろうと思って行われる行為が
コミュニケーション的な行為です。
だから民主的な社会では話し合いによってみんなで問題を解決し
合意に達成しようとします。
そのために一番必要なのがコミュニケーション的な行為だということです。
暴力的な手段であったり、独裁的な手段だと
みんなの意見が反映されませんからね。
コミュニケーションを通して
自分たちの問題の解決をやっていこうということです。
それがコミュニケーション的な行為です。
ハーバーマスが設定した類型(2)戦略的行為
コミュニケーション的な行為に対して戦略的な行為というのは
他者を手段として利用する行為のことです。
ということは私と他者というのは同じような価値を持った人だということです。
私は自分の目的を達成するために他者を手段として利用してしまう。
他者の人格を尊重しないで自分の目的を達成するための手段としてそれを使ってしまう。
あくまでも自分がやりたい、自分の目的があってそのために他者を利用してしまう、
そんな感じです。それが戦略的な行為です。
個人的な感覚でいうと、
刑法の道具理論とハーバーマスの戦略的行為は似ているかなって思います。
@hexia 刑法の道具理論というのは、事情を知らない人の行為を介して犯罪を実行する(例:郵便屋さんに毒入り食品を送らせて宛先のターゲットを毒殺する等)のが、あたかも人を犯罪の道具として利用しているようだという意味合いでして、本当に人を道具にしちゃうわけではないですまじれす
— サークルQB被害者対策弁護団・事務員 (@pat_R_I_O_T_) January 26, 2012
自分の目的を達成するために他者を手段として戦略の一部分としてそれを利用してしまうということです。
他者の人格を尊重しないで利用できる部分だけをうまく使ってしまう。
それでなされるのが戦略的な行為ということです。
これに対してコミュニケーション的な行為というのは他者の人格を尊重すること。
同じような価値を持った人間である。そういう前提で対話をしていきます。
でも戦略的な行為というのはそういうことはありません。
あくまでも自分の方が大事であって他者は目的を達成するための手段として使ってしまおうということです。
・コミュニケーション的行為は他者の人格を尊重する
・戦略的行為は他者の人格を尊重しない
です。
ハーバーマスが設定した類型(3)道具的行為
道具的な行為は自然な対象物に対して働きかける行為のことです。
たとえば人間というものを取り囲んでいる周りの環境世界。
それが自然の対象物です。
・コミュニケーション的行為・戦略的行為は人間が関係している
・道具的行為は人間でなく自然が関係している
です。
人間の発達というのは周りの環境に対して
人間がそれに挑みかかっているわけです。
人間の役に立つものにそれを作り変えることによって人間の文明というのは発達したわけです。
自然を開発して人間にとって利用価値のある物に作り替えていい。
神様は人間のために周りの環境世界を作ってくれる。
こんな感じで人間が自然に挑みかかっていき
人間にとっての利用価値のあるものに作り替えていく。
そのことによって人類の社会は進歩発展していきました。
それがまさに道具的な行為です。
まさにカルチャーという言葉がありますね。
カルチャー(文化)は耕作をするという意味があります。
ということは自然の対象物に対して人間が働きかける。
そしてその結果、築き上げられたものが文化です。
だから道具的な行為はまさに自然な対象物に対して人間が働きかけていく行為ということです。
そしてそれを人間の役に立つものに利用してしまう。
そういうことが道具的な行為です。
ハーバーマスについてわかりやすく説明まとめ
以上
(1)コミュニケーション的行為
(2)戦略的行為
(3)道具的行為
の中で一番市民社会にとって大事なのは(1)コミュニケーション的行為です。
これを述べたのがハーバーマスということです。
ハーバーマスは
私たちの生活世界というのは社会システムの植民地みたいになっていると主張しました。
植民地というのは自分の自由意思がないということ。
社会システムから求められることをやらされている、そのような受け身的な存在にすぎない
そういう現状を打破していくために何をしたらいいか?
というとコミュニケーション的な行為によって私たち市民が巨大な社会システムを
下から突き破っていくために市民同士の対話によってそのシステムを破るような
合意達成を図っていくということを呼び掛けていきました。
だからあくまでも社会システムのいいなりにならないようにするためには
私たち市民が対話を通じて現代社会の様々な問題点を論じ、
その中で合意を達成し今の社会を変革するような新たなものを作り上げることによって
受け身的ではない、能動的に社会そのものもを主導するような
役割を担うことができるようになると市民に呼び掛けているのがハーバーマスさんでした。
以上で解説を終わります。