前回エリクソンのアイデンティティ拡散とモラトリアムについて解説しました。
今回の記事ではエリクソンの
アイデンティティの確立とはどんな状態なのか、
わかりやすく解説していきたいと思います。
エリクソン アイデンティティの確立
(1)アイデンティティ(自己同一性)
(2)モラトリアム(猶予期間)
の2つです。
アイデンティティを日本語に訳すると『自己同一性』となります。
自分が自分らしくあるということがアイデンティティということになります。
自分が自分らしく自分について思っている自己認識像。
自己認識像と他者、たとえばお父さん、お母さん、友達が
自分について思っている像が一致することがアイデンティティが確立している状態です。
「こういう状態が自分らしいと思っている」
そういう自分が自分に対して認識している自己像に対して
他者もまたそういう認識を承認してくれている。
言い換えると自分が自分に対するイメージと
他者が自分に持っているイメージとが一致しているということが
アイデンティティが確立している状態だということになります。
「青年期はアイデンティティを確立するということが課題だ」と
エリクソンは主張しました。
写真や動画はアプリで加工、配信時はアバターを被り、ネットは匿名で他人を叩く。核家族化が進み、ネット・ゲームが普及し他人との交流が希薄になっていく。
エリクソンはアイデンティティの確立を青年期の課題とし、のちに生涯の課題であるとしたけども、社会関係が希薄になればなるほど難しいよな。
— ふたた23.19 (@fttshsh) December 9, 2022
そのためにはいろんなことにチャレンジして
試行錯誤することが必要です。
本当に自分がやりたいことは何なのか?
ということは何かチャレンジしないと見えてきません。
いろんなことにチャレンジする中で
自分がやりたいことが少しずつ見えてくるかもしれません。
うちの父はエリクソンの発達段階で言ったら、学童期どころか幼児期なのではないかとおもう。青年期にアイデンティティを確立することから逃げて、妄想の「俺は素晴らしい」という自己愛の畑に逃げ込んだ人生。
— 猫さん (@ilovecat222) December 3, 2022
積極的にやりたいことが見つからなかったら消去法でもいいかもしれません。
やりたくないことをどんどん削っていき
残ったものの中でいろいろ試してみてやりたいものを絞っていくというのも
よいかもしれませんね。
アイデンティティ(自己同一性)を確立するのが青年期の課題。
もし見つからないとアイデンティティクライシス(自己同一性の危機的状況)
になってしまいます。
当ブログ管理人が思い出すのはフランスの作家でポールニザンです。
⇒当ブログ管理人のプロフィールはこちら
「いつかギラギラする日」の冒頭のポールニザンの詩。
あれは深作欣二監督と始めて会った時にウイスキーを溢したコースターに書いてくれ詩。
「君を見てて思い出したんだ」と。— 奥山和由 Okuyama Kazuyoshi (@teamokuyama2017) March 27, 2021
ポールニザンはサルトルなどの有名な哲学者などと
ある学校で同級生でした。
ポールニザンの著書で有名なのは27歳のとき
アラビアを旅行した時のことを書いた『アデン・アラビア』です。
⇒ポールニザン著『アデン・アラビア』
ポールニザン「アデン・アラビア」
「旅行という名詞のうちに、なお何が含まれていたろうか。自由、離脱、冒険、充実、多くの不幸な者たちに欠けており、夢のなかでしか所有できぬすべてのもの。それが含むものは、平和であり、歓喜、この世への賛同、自己満足だったのだ(p52)」 pic.twitter.com/D8dugkrE0r— 椎名 (@bucureshti) August 7, 2022
『アデン・アラビア』の出だしのところで
以下のような趣旨のことを言っています。
僕は二十歳だった。それが人の一生で一番美しい年齢だなどと誰にも言わせまい。
ポールニザンの『アデン・アラビア』より。
です。
ポールニザンがアデンアラビアで「僕は二十歳だった。それが人の一生で一番美しい年齢だなどと誰にも言わせまい。」と言った。
歳を取ると、良し悪しはさておいて色々なことを諦めていって輝きがくすんでいくと言うけれど、自分はいくつになっても今までで一番美しい生き方でありたいと思う。— buzzG (@buzz_g) March 13, 2018
20歳のころというと
よく人は青春の真っただ中で一番楽しい時期っていろんな人がいいますよね。
20歳女子大生っていう一番楽しい時期を全く楽しみもなく我慢して生きる人生辛い
— noname (@snt0089) April 8, 2022
でも、自分がやりたいことが見つからない当人にとって苦しみ以外のなにものでもない
ということをポールニザンは言いたかったわけです。
アイデンティティクライシスの状況を告白した文章です。
当ブログ管理人の私も20代のときに
ポールニザンの『アデン・アラビア』を読んで
まさに自分がアイデンティティを確立するときに
見つからなかったときに苦しんでいたのを
心の中をうまく代弁してくれた文章でした。
私は現在では犬猫の獣医師をしていますが
20代のときは牛や馬の獣医になろうかとか
公務員になろうかとか製薬会社に勤めようかとか
色々悩んでいました。
そのときに『アデン・アラビア』を読んで気持ちが救われたのを今でも覚えています。
⇒ポールニザン著『アデン・アラビア』
こんな感じでアイデンティティが確立されていないと
危機的状況になってしまうわけです。
話をエリクソンに戻します。
自分が本当にやりたいことを見つけるためには
働くことなどを猶予されている期間(猶予期間、モラトリアム)が必要だと
エリクソンは主張しました。
モラトリアムとは人間が社会的に発生する責任とか義務
を一時的にはあるものの免除される状態のことです。
なので学生時代はモラトリアムの期間だということもできるでしょう。
またモラトリアムは高学歴の方が期間が長くなると
エリクソンは主張しました。
たとえば大学を卒業するときに
「自分がやりたいことが見つからない。
かといってまだ就職もしたくない」
そういった人が選択肢として大学院に進学するというのはよくあることです。
獣医の学生にもいます。
大学院進学を決めた最大の理由が「まだ就職したくない」だったのは疑いようのない事実ですラジよ。
— PsycheRadio (@marxindo) July 26, 2018
「まだ就職などをすることに自分を追い込みたくない
もうちょっと自分探しの旅を続けたい」
みたいな感じで中卒の方と比べて高学歴な大学生の方が
モラトリアムの期間が長くなると一般的にいわれています。
今回の記事ではエリクソンのアイデンティティの確立について解説しました。
さらにエリクソンについて詳しく知りたい方は以下をご覧ください。