前回の記事ではブルデューについて解説しました。
⇒ブルデューの文化資本・再生産・ハビトゥス・ディスタンクシオンについてわかりやすく解説
今回の記事ではミシェルフーコー『監獄の誕生』についてわかりやすく解説していきます。
ミシェルフーコー『監獄の誕生』とはわかりやすく説明

近代社会は監獄と同じような監視システムによって
工場、病院、学校などを運営して
身体の管理を通じて支配する様式を確立していった
ということを論じました。
功利主義者としてベンサムが有名ですね。
功利主義とは社会の幸福のトータルが増す行為こそが
道徳的に正しい行為だという考え方のことです。
話を元に戻します。
ベンサムが刑務所の中で刑務官が囚人たちを監視するシステム、
パノプティコンと呼ばれる囚人の監視システムの存在を通じて
囚人たちが常に刑務官から自分は監視されている(見られている)
という意識を持つようになります。
パノプティコン=一望監視装置です。
【言葉のひと解き】GPSの装着義務化 お天道様はお見通しだぞ 清湖口敏https://t.co/VUDQFySPRL
「監視されることで対象者が自分の意思で行動を制御する効果も報告されている」
パノプティコンとは英国の哲学者、ベンサムが考案した刑務所の監視システムで、「一望監視装置」とも呼ばれている。
— 産経ニュース (@Sankei_news) July 12, 2020
〈フーコーはこの中で、中央の監視塔から周囲の監房を見渡すことができる「パノプティコン」という監獄施設について取り上げています。「常に監視されている」という意識を持った囚人は、自らを監視するという視点を心に宿し、権力への自発的な服従に導かれていく〉 https://t.co/0tZ4YPBoDh
— 32方位 (@32houi) December 3, 2022
このベンサムが考案したパノプティコン(一望監視装置)の説明をフーコーがさらに展開していきました。
以下、詳しく解説しますが
簡単にいうとベンサムの考案したパノプティコン(一望監視装置)により
囚人が自分で自分のことを監視していきながら矯正されていく様子が
近代社会の訓練型の権力論として発展していったという話がフーコーの『監獄の誕生』です。
要するにベンサムが考案したパノプティコン(一望監視装置)はある意味
囚人の監視システムだったかもしれませんが
これを病院や学校などにも応用させていくというところが
フーコーのすごいところだと思います。
『パノプティコン(一望監視装置)=囚人の監視システム』という具体性を
抽象度を上げていろんな人を監視できるシステムとフーコーは考え
今度は具体化して学校や病院にも利用できるって考えたわけですね。
ここは当ブログ管理人の主観も多少入っていますので100%鵜呑みにしないでくださいね。
話を元に戻します。
パノプティコン(一望監視装置)があると刑務官は囚人たちの様子を
常に一望できる状況にあります。
刑務所の中において刑務官からいわれたことを
きちんと守らない囚人たちにはいろんなペナルティーを科せられるというのは
なんとなくわかっていただけるでしょう。
懲罰を課せられてしまうわけです。
看守役と囚人役に分かれる事により、きまりを守らない囚人役に罰を与えるんだけど、その罰もエスカレートしていくんだよね。囚人役達の間にも、看守役の間にも、仲間意識が生まれるんだよ。
— 海野光太郎 (@eeAeeB) May 23, 2017
だから刑務官からは囚人たちが一望(いちぼう)のもとに監視できるようになっています。
一望(いちぼう)とは一目で広大な場所を見渡すことです。
逆に囚人の方からは刑務官に自分が監視されているかどうか
判断することができないような構造になっています。
そういう状況の中で囚人は収容されています。
常に自分は刑務官から見られている、
そういう刑務官の眼差し、視線というのが自然に自分の心の中に
インプットされているわけです。
「自分はいつも刑務官から見られている、
ルール違反したら必ず刑務官が自分のことを監視しているから
見破られてしまう」というふうに考えています。
だから自分自ら、刑務所の中のルールを遵守していかないといけません。
刑務官が「ちゃんとルールを守れや!」って強制しなくても
囚人自らが自分の行為をコントロールするようになっていくわけです。
だから囚人の心の中に刑務所の中の規律がインプットされていきます。
「朝は洗面所の掃除をしないと怒られる」といった感じで
囚人は常に刑務官に監視されていると思っているので
自然と規律を覚えていくわけですね。
囚人がどんどん覚えていく規律そのものが
囚人をコントロールするようになっていきます。
これはすごく刑務官にとっては
時間的、精神的、肉体的な労力がかからなくなるので
すごくよいことですね。
刑務官にとっては手間暇かからないから
パノプティコン(一望監視装置)はいいことだってことです。
パノプティコン(一望監視装置)がないと
いっぱい刑務官を雇用して四六時中囚人たちを監視しないといけなくなります。
逆にパノプティコン(一望監視装置)があると
四六時中、囚人たちを監視しなくても
囚人の方が自分は常に見られているから
刑務所の中のルール違反はできないというふうに
自らの行動をコントロールするようになればしめたものです。
そのようなシステムが監獄の中の監視システムで
パノプティコン(一望監視装置)です。
これと同じように学校とか病院とか工場も
運営しているってことです。
それから身体の管理を通じて支配する人たちは
その様式というのを確立していったわけですね。
政治学で規律権力という言葉がありますが
これと同じような考え方がフーコーの『監獄の誕生』です。
規律権力についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
さらに詳しくフーコーの『監獄の誕生』のことを知りたい方はこちらをご覧ください。
⇒監獄の誕生〈新装版〉 監視と処罰 [ ミシェル・フーコー ]