以前、マルクスの階級論について解説したことがあります。
⇒マルクスの階級論についてわかりやすく解説
⇒ウェーバーの階級論についてマルクスと比較しながらわかりやすく解説
今回の記事ではマルクスの上部構造と下部構造についてわかりやすく解説します。
マルクスの上部構造と下部構造とは?
マルクスは科学的社会主義
マルクスは社会主義(共産主義)の提唱者ですが
自分の社会主義のことを友人のエンゲルスと2人で
『科学的社会主義』と言っています。
これに対してマルクス以前の社会主義のことを『空想的社会主義』といいます。
以前解説したトマスモアのユートピアなんかもそうですが、
空想的な社会を描くことによって現実の社会を否定する、
そういう活動のことを空想的社会主義といいます。
⇒トマスモアの著書ユートピアの内容をわかりやすく解説
これに対してマルクスは自分たちの活動は
資本とか経済に対して科学的な分析をしている主張します。
このことからマルクスの社会主義を科学的社会主義というわけですね。
マルクス|上部構造と下部構造
ではここからが本題です。
上部構造と下部構造ですが、
下部構造が上部構造に影響を与えると考えます。
上部構造とは何か?というと私たちの精神的な活動の領域です。
具体的には文化、道徳、宗教、芸術といった私たちの精神的な活動の領域が上部構造になります。
これに対して下部構造とは何か?というと
上部構造の土台になっているようなものなのですが、
社会的なインフラみたいなもののことです。
だから生活物資を生産する際の生産様式というものが
私たちの考え方に影響を与えるんだという考え方をマルクスは示しました。
下部構造が上部構造に大きなインパクトを与えたというのはどういう点にあるのか?
というと、私たちは何でも自分の考え方を自由に作れるわけではなくて
私たちの考え方というのは社会的な土台によって
影響されていて、それによってある程度は決定されているという考え方になります。
だからそういう意味で
何でも自由に自分の考え方を作れるわけではなく、
社会的な土台によって私たちの考え方は決定されているとマルクスは考えます。
こういう考え方が現代の人間観に影響を与えました。
それから当時の土台であるような下部構造には矛盾が生じていると
マルクスは考えていました。
具体的に何か?というと『格差』です。
当時の社会の中では資本家が富をどんどん貯え
そして労働者はどんどん搾取されていくわけです。
たとえば労働者は1日18時間とか平気で働かされていたりしました。
共産主義を攻撃する人は、1日18時間働いて食うのがやっとという19世紀英国の炭鉱労働みたいな生活当り前と思ってるんですかね。それはまずいだろと言ったのがマルクスな訳ですが🤔
— 遅松@前誠意大将軍 (@Myoritomo1192) June 17, 2023
このようにしてどんどん資本家に富が蓄積されていって
その分労働者はより厳しい条件で働かされるようになっていきます。
このような形で格差が生じていったのです。
それをマルクスは下部構造の矛盾というふうに考えました。
これを解消するために階級闘争が起こったのです。
労働者が団結して資本家を打ち倒すということが起こりました。
これは歴史の必然なんだとマルクスは考えます。
矛盾が生じたらアウフヘーベンされるような階級闘争が起こって
そして労働者が立ち上がって資本家階級を打ち倒す。
このことによって富の偏った搾取がないような社会が実現するとマルクスは考えました。
これがマルクスの社会主義的な革命ということになります。
アウフヘーベンという用語についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
⇒ヘーゲルの弁証法についてわかりやすく解説
マルクス|人間疎外
労働というのは人間にとって喜びであったとマルクスは考えます。
・創造の喜び
・社会的連帯
などがありました。
でも当時の社会状況の中では
1日18時間も労働者は働かされていました。
そうなると労働者からしてみたら単なる苦痛でしかありませんよね。
1日18時間ってことは
どう頑張っても1日6時間以上寝れません。
家の帰る時間も必要ですしトイレに行く時間や
食事の時間も必要です。
そう考えるとどう頑張っても1日3時間くらいしか寝れないでしょう。
睡眠不足と労働による肉体的疲労、精神的疲労で
心も体もボロボロだったことでしょう。
そんな労働で喜びを感じるわけなんてありませんよね。
19世紀頭に「人間はどうやったら自由になれるか」ってテーマがブームで、フォイエルバッハとかのヘーゲル左派は人間は自由になるためにはキリスト教の改革が必要って言ってたんですよ。でもマルクスは「いや1日18時間も低賃金労働してて自由も何もあったもんじゃないでしょ」と反論した。
— まる@日本語 (@great_journey_2) October 26, 2019
もともとは人間の本質であるような喜びであったり
社会的連帯であったりという労働が人間から疎外されて行っている。
人間が自分の人間性から疎外されている。
こういうことを人間疎外といいます。
こういう疎外された状況というものを
どうやって克服してマルクスが主張するよりよい社会である社会主義の社会を
実現するか?その話として階級闘争があります。
以上がマルクスの考え方になります。
マルクスの上部構造と下部構造まとめ
今回の記事ではマルクスの上部構造と下部構造を中心に解説しました。
下部構造の方が上部構造に影響を与えるとマルクスは考えます。
物質的なもの、私たちの生産とかそういうものに携わるものが私たちの上部構造ですが
上部構造に影響を与えるということでした。
以上で解説を終わります。