この記事では圧力団体とはどういう団体なのか、
わかりやすく解説していきます。
目次
圧力団体についてわかりやすく説明します
圧力団体とは?
圧力団体とは自分たちに有利な政策をしてもらうために
立法府や行政府に影響力を及ぼそうとする組織の事です。
圧力団体は利益集団とか利益団体といわれることがあります。
圧力団体=利益集団=利益団体
ということです。
利益集約機能
利益集約機能は圧力団体の機能としっかりと比較する必要があります。
圧力団体の場合には利益集約機能と違って『利益表出機能』という機能があります。
利益集約機能と利益表出機能の違いはきちんと
明らかにしておかないといけません。
利益集約機能とは一体何か?というと
政党の主な機能の一つで選挙民の利益や要望を調整して
まとめてあげていく機能のことです。
「そもそも政党って何?」
と気になる方はこちらの記事をご覧ください。
⇒サルトーリの政党制についてわかりやすく解説
圧力団体ができた背景
圧力団体ができた背景を知っておくと
近代現代の理解を助けることにつながります。
19世紀名望家政党がありましたが参政権が拡大するに及びまして
大衆政党化していきます。
⇒名望家政党と大衆政党の違い【公務員試験対策】
金持ち主体の政治から貧しいものも含めた政治に変化していったわけです。
大衆政党化していったために金持ち団体から
みんなの意見を聞かないといけない状態になりました。
みんなが政治に参加できる時代です。
まずここをしっかり理解しておきましょう。
そうすると参政権が拡大して大衆政党が
要求をみんなから聞くようになるわけです。
お金持ちの意見だけを聞くわけではなくなったってことです。
「あなたのご意見は?」という形でいろんな人の意見を聞く必要が出てきたわけです。
そうしないと1票を獲得できませんからね。
1票を獲得できないと当選できませんよね。
だから必死になってみんなの意見を聞くようになるわけですよ。
と同時にその意見をどうやったら政治家は聞いてくれるのでしょう?
一人だけで主張するより
みんなで集まって「同じ利益を抱えている人が1万人いるよ」
さらにいうことを聞いてくれるなら政治献金もしましょう」
といったら政治家(政党)言うことを聞いてくれやすくなりますよね。
こんな感じで
一人で主張するより集まった方が
絶対に政治家は言うことを聞いてくれやすいわけです。
逆に政党側は「何かご意見ありますか?」
これは先ほど解説した利益集約機能です。
これに対して「はい、俺の言うことを聞いてくれ!」
と言う形で利益集団(圧力団体)が主張するようになるわけです。
聞く人(政党側)と言う人(圧力団体)が出てくるわけです。
これが政党と圧力団体の関係です。
こんな感じで要求を主張するようになるとしたら
一人で主張するよりも集団で主張した方が政党側が言うことを
聞いてくれやすくなります。
と言うことで現代になると政党と
圧力団体が出てくるようになります。
これは偶然ではなく必然です。
どうして必然か?というと賛成権の拡大が原因です。
だからこそ政治権力をすでに持っていた
ブルジョアジーたち、それから19世紀の名望家政党の段階で
政治に携わっていた人たちは「自分たちは少数派になるかもしれない」
という恐れ、不安。
だからこそ大衆って怖いかもしれないと考えます。
この恐怖はまさに数の上では負けてしまうと言うことです。
以前解説しましたがトクヴィルは『多数者の専制』といいました。
⇒トクヴィルの『多数者の専制』はこちらで解説しています
とにかくこの恐れっていうのはまさに数の上では負けてしまうってことです。
貧しき者の方が多いわけですからね。
こういったところでもって
大衆政党、圧力団体が全然違うというわけではありませんが
機能が分化していってしまうわけです。
政党の方が御用聞きの方に周り、
利益集団(圧力団体)の方が「俺たちの意見を聞けよ!」
という形になっていきました。
・大衆政党になり要求をみんなから聞くようになる(利益集約)
・圧力団体は要求をみんなが主張するようになる(利益表出)
ということです。
利益表出については後述します。
もう少しこれを専門的な言葉で落としていくと
『社会の工業化、都市化が国民各層の利益文化と対立を生んだ』ってことです。
ちょっと小難しい言葉でしたね。
わかりやすくいうと『経営者の考える利益と労働者の考える利益は違う』ってことと同じことです。
『社会の工業化、都市化が国民各層の利益文化と対立を生んだ』
の国民各層って誰でしょう?
『国民各層=労働者+経営者』って考えたらわかりやすいと思います。
経営者からすると低賃金で長時間働いて欲しいし
労働者の方は高賃金で短時間労働がいいということで対立しますよね。
だから
『社会の工業化、都市化が国民各層の利益文化と対立を生んだ』
という言葉が成り立つわけです。
すると政党は全国的な利益を主張しなくなります。
どうしてでしょう?
政党にはいろんな理想はありますが出馬する選挙区の中で人気がないと当選できませんよね。
議会に議員を送れません。
だから政党は地域的な利益にこだわってしまって全体を見据えなくなったりするわけです。
それに代わって圧力団体(利益集団)が全国的な利益という形で
政党に主張していくことになります。
圧力団体の主な機能:利益表出機能
政党の利益集約機能と圧力団体の利益表出機能はセットで理解しておきましょう。
利益表出機能とは圧力団体が政党にやってほしいことを伝える機能のことです。
意見を表明するっていますが
この表明を表出って言葉に置き換えたら理解できると思います。
圧力団体の活動:ロビイング
圧力団体は議会のロビーなんかにいって
政治家に自分の話をしていくわけです。
こういうことをする人をロビイストっていいます。
それからグラスルーツロビイング(草の根活動)という言葉があります。
グラスルーツロビイングとはもっと議員さんに会って
広く世論に訴えかけるタイプです。
「みなさーん!」って駅前とかで署名活動している方々。
これはグラスルーツロビイングの具体例です。
圧力団体の問題点
政党が利益集約機能しか持たなくなってしまった。
これは頭では理解できると思います。
でも、「それはわかるんだけどさ・・・」ってなりませんか?
圧力団体の私利私欲というというのを公の政治に反映させるって
ヤバさを感じますよね。
つまり圧力団体自らが主張する利益以外の利益を
政党は軽視しがちになるという問題点があるってことです。
日本の圧力団体
日本の圧力団体の特徴を理解するためにアメリカの圧力団体と比較して考えましょう。
活動対象の中心はアメリカは伝統的に議会ですけど、
日本の圧力団体は伝統的に行政府です。
それからアメリカにはロビイストがいますが
日本はロビイストは未発達だったので
族議員がいます。
議員さんが代わりに業界の利益を役所などにプッシュしに行きます。
それから政党との関係はアメリカだと希薄ですが
日本は特に55年体制(自民党が政治を握っていた時)では密接でした。
アメリカは伝統的に議会で、日本は伝統的に行政府というのは
制度的な理由があります。
アメリカは行政権の長である合衆国大統領が
議会に対して一般法案や予算法案を提出することができません。
それはアメリカは厳格な三権分立ですからね。
アメリカは行政権が法案や予算案も作ることができません。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
⇒アメリカの政治体制についてわかりやすく解説
となるとロビイストはどこに行くでしょう?
実際に予算や法案を作っている議会に行くに決まってますよね。
というわけでアメリカは以前解説しましたが
政治制度の側面からしてもアメリカって伝統的に立法権の方に行きやすいわけです。
⇒アメリカの政治体制についてわかりやすく解説
政党と圧力団体の比較
目的においては政党に関しては政権の獲得が第一義的な目的です。
これに対して圧力団体。
圧力団体ってたとえば経営者の利益を擁護するとかですね。
経団連って聞いたことありませんか?
労働者の利益だと連合とか聞いたことないですか?
こんな感じで経営者や労働者ばっかりじゃなくて
いろんな企業は業界団体を作っていたりします。
この業界団体って何?っていったらそれはまさしく圧力団体だったりするわけですよ。
たとえばお医者さんだったら日本医師会を作っていたりします。
日本医師会は圧力をかける『だけ』の目的でできているわけではありませんけどね。
あと弁護士さんだったら日弁連を作っていたりします。
こういった団体が時々自分たちの利益を主張する圧力団体とかに化けて行ったりするわけです。
別にお医者さんとか弁護士さんとかがあくどいことをやっているのか?
というとそんあことはありません。
現代の政治においてはそういった競争をして
自分たちの利益を主張することもまた民主主義的なプロセスなのです。
だから医師会や弁護士会が悪いわけではありません。
みんな死活問題を抱えているわけですから。
そういうことを考えたら団体は必要になります。
ただし、お医者さん、弁護士さんたちが
中に入るかもしれませんが、その業界団体が内閣総理大臣の座を狙う事なんて聞いたことないですよね。
それから話を戻して
圧力団体は選挙活動に関しては自分たちで議員を作ろうとするせず
特定の政党を資金や票で支持していきます。
というかニンジンをぶら下げるわけですね。
でも政党は自分たちの政党独自の議員を送り出します。
それから政党は国民の利益を実現するために頑張りますが
圧力団体は自分たちの団体の利益を追求します。
途中で解説していますが
政党は利益集約機能で圧力団体は利益表出機能という違いがあります。
以上で圧力団体についての解説を終わります。