政党の機能について見ていきます。
つまり、政党がどんなはたらきを
しているのか、ということです。
※まだ「政党とは何か?」を見ていない人は、
先にこちらの記事でおさえておくのがおすすめです。
→政党とは?わかりやすくおさえる重要ポイント【公務員試験にも役立つ】
目次
政党の機能
アーモンドという学者がいます。
この人は、政党が政治の中で
どんな役わりをしているかを考えたことで知られています。
・利益表出(国民の思いや願いを表すこと)
・利益集約(さまざまな意見や要望をまとめること)
・政治的コミュニケーション(政治のやりとり)
などをあげています。
そのうえで、「政党は、この中でも
『利益集約(さまざまな意見や要望をまとめること)』
という機能で、とくに中心的な役わりをしている」
と言いました。
では、このことが国家一般職
(※国家公務員の試験)では、
どんな形で出てくるかというと、
「政策形成機能(せいさくけいせいきのう)」
という言い方で、10年ほど前に出題されたことがあります。
政策形成機能

では、政策ってなんでしょうか。
かんたんに言えば、「法律」のことです。
つまり、法律を作るというのが、政策形成機能になります。政治家のしごとは、法律を作ることなんですね。
それにくわえて、法律を作るだけでなく、
お金(予算)をつけることも必要なので、
「予算を作ること」も、ふくまれます。
この「政策を作る」という機能は、2つに分かれています。
(1)利益表出機能(国民の思いや願いを表すこと)
(2)利益集約機能(さまざまな意見や要望をまとめること)
この2つを合わせて、「政策形成機能」として、
国家一般職では出題されることがあります。
なので、この点に気をつけてください。
多くの試験では、「利益表出」「利益集約」と、
それぞれバラバラで出てくることが多いですが、
まずは順番に見ていきましょう。
利益表出機能とは?
利益表出機能とは
「自分たちの思いや願いを、はっきりさせる」ことです。
つまり、国民の思いや希望を聞いて、それを伝えること。
「利益表出」という言葉の「表出」は、
「表す」という意味です。
国民は、「こういうことで困っています」
「こうしてほしいです」といった思いを、明らかにします。

たとえば、保育園が足りなくて
困っているお母さんたちが、
「もっと保育園を増やしてほしい」と
声をあげることがありますよね。
そうした声が議員を通じて国会に届けられたとしたら、
それがまさに「利益表出」です。
国民が自分たちの困りごとや希望を、
政治に伝えていくはたらきなんですね。
そして、それをどこで表すのかというと、国会です。
なので、利益表出機能とは、
「国民の思いや願いを、国会の場で明らかにする」
ということですね。
たとえば、保育園が足りなくて
困っているお母さんたちが、
「もっと保育園を増やしてほしい」と
声をあげることがありますよね。
そうした声が議員を通じて国会に届けられたとしたら、
それがまさに「利益表出」です。
そのあとに出てくるのは何かというと、
国民の要望を明らかにするだけではなくて、
利益集約機能として、
国民の要求を政策にまとめ上げる、ということです。
さっきの保育園の例で言えば、
「保育園を増やしてほしい」
という声が集まったあと、
「じゃあ保育の施設をもっと整えるような政策にしましょう」
とまとめていく流れになります。
簡単に言えば、
こうしたはたらきは2つの段階からできているということです。
このように、2つの段階で成り立っているということです。
特に大事なのは、「利益集約機能」ということですね。
利益集約機能が、政党の中でもっとも重要な機能になります。
「政党の機能で一番大事なのは何か?」という問題が出たときには、
この「利益集約機能」が答えになります。
つまり、利益集約機能とは、「政策を作る」ということです。
政治家のしごとというのは、
基本的には「法律を作ること」です。
だからこそ、
「利益集約機能」が大事になってくるわけです。
「国民の要望を聞いて、それを政策案にまとめる」
この部分が、
政治家の役わりとしてとても重要になります。
では、それぞれの機能を、
もう少しくわしく見ていきましょう。
① 利益表出機能
「社会にちらばっている、
まだはっきりと見えていない要望を集めて、
それを政治的な要求としてまとめて、
社会に広く伝える機能」のことです。
② 利益集約
「社会生活の中で起きる利害の対立を、
政治の力で解決するために、
社会の中のいろいろな要望や対立を、
政策としてまとめていく機能のこと」です。
そして、この「利益表出機能」と
「利益集約機能」の2つを合わせたものが、
「政策形成機能」と呼ばれています。
最近の政治学の教科書を見ると、
「政策形成機能(せいさくけいせいきのう)」
という言い方がよく使われています。
なので、「利益表出機能」や「利益集約機能」という言い方は、
どちらかというと、
前から使われていた表現ということになります。
たとえば、旅行ガイドブックで
「温泉」や「海の幸」って言葉が細かく書かれていたのが、
最近では「癒やしスポット」みたいな
ざっくりした言い方にまとめられてるようなものです。
最近は「政策形成機能」として
まとめて出てくることが多いので、
この点には気をつけておきましょう。
政治的補充機能
あと、「政治的補充機能」というのがあります。
「補充」というのは、
「リクルートすること(人を集めて補うこと)」
という意味で使われています。
これはどういうことかというと、
政党が議員を目指す人を見つけて、
選挙のときに「この人を応援します」として、
公認候補や推薦候補にして当選を後押しする、
という役わりのことです。
そして、選挙が終わったあと、
当選した議員が国会の委員会に入ったり、
大臣などの政府の仕事につくときに、
どのポストにするかを政党が決めたり、
調整したりすることもあります。
こうした一連のはたらきが、
「政治的補充機能」にふくまれます。
たとえば、今年の夏に参議院選挙がありますけど、
そのときに「勝ちそうな候補者をさがしてくる」のも、
政党の大事なはたらきです。
有名人が、選挙に強い政党から出て
当選することってありますよね。
つまり、「当選しそうな人を見つけて
、選挙に出してくる」ということです。
こうした人材の発掘も、
政党の役割ですよ、というわけです。
それが「政治的補充機能」ということです。
政治教育機能・政治的社会化機能
それから、もう一つ下にあるのが、
「政治教育機能・政治的社会化機能」です。
これは何かというと、選挙や政党の新聞などを通じて、
政治に関する情報を国民に伝えて、
政治への参加をうながす機能のことです。
たとえば、みなさんが朝に最寄りの駅に行くとき、
議員の人たちが演説しているのを見かけませんか?
「今、国会ではこういうことが話し合われています」とか、
マイクを使ってずっと説明している場面です。
ああいう活動が、「政治教育機能」にあたります。
駅前などで、ふつうに何かしゃべっている人がいますよね。
私の知り合いもそうなんですが、
議員をやっていて、よく立って話しています。
少し前まで寒い日が続いていましたが、
そういうときにコートを着て立っていると、
見た目の印象があまりよくないそうです。
だから寒くてもコートを着ずに、スーツ姿で立つそうなんです。
雨の日だと、通る人はあまり話を聞いてくれません。
それでも、わざわざ雨の日に立つこともあります。
「雨の日でもやってる」という印象を持ってもらうためだそうです。
実際、雨の日は他の候補者が外に
出てこないことも多いので、逆に目立つんですよね。
こうしたことが、政治教育として効果があるかどうかは別として、
「選挙での効果はある」と言われています。
なぜだと思いますか?
私は、「頑張っている姿をちゃんと見てもらえるから」
だと思います。

たとえば、真冬の大雪の朝。頭に雪を積もらせながら、
駅前に立って話している人がいたとします。
その姿を見たとき、あなたならどう感じますか?
「この人、そこまでしてるんだ」「寒いのにすごいな」って、
思わず足を止めたくなるんじゃないでしょうか。
だから、こういう駅前での活動には、政治教育の意味と同時に、
候補者としての印象を強く残す効果もあるんだと思います。
みなさんの最寄り駅でも、立っている人を見かけたら、
「こういう目的があるのかもしれないな」と思って見てみると、
少し見え方が変わってくるかもしれません。
政党の機能まとめ|選挙・法律・情報発信の役割とは?初心者にもやさしく
この記事では、政党が持つ主な機能について、
やさしく、順番に整理して紹介しました。
おさらいすると、
政党にはこんな役わりがありましたね。
利益表出機能:国民の思いや願いをすくいあげて、政治に伝える
利益集約機能:バラバラな意見をまとめて、政策にする
政策形成機能:上の2つを合わせて、法律や予算を作る
政治的補充機能:議員候補を見つけて育て、政治の場へ送り出す
政治教育機能・政治的社会化機能:情報を広めて、政治参加をうながす
さらに、選挙の現場での行動や演説の工夫からも、
政党がどのように国民と
関わっているのかが見えてきました。
はじめて政治にふれる人も、
試験対策で学ぶ人も、
「政党の機能」がどうつながっているかを
イメージできたのではないでしょうか。