参考文献・URL
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前回の記事でハロッド=ドーマーモデルについて
解説しました。
⇒ハロッド=ドーマーモデルとは?わかりやすく解説
今回は新古典派の成長理論について解説します。
目次
新古典派成長理論の仮定
新古典派の成長理論では
・労働の価格(賃金率)と資本の価格(利子率)は伸縮的
・資本係数vは変化する(ケインズ派は変化しません)
と仮定します。
資本係数vについてはこちらの記事で解説しています。
⇒資本係数vについてわかりやすく解説
で、どうして資本係数vは変化するか?
というと、労働の価格(賃金率)が低くなると
会社の社長は「じゃ、機械に投資するのやめて
スタッフを雇おうよ」となると新古典派は考えているわけです。
結果、資本係数(1個作るための機械の量)が減ることになります。
つまり、新古典派では
労働の価格(賃金率)と資本の価格(利子率)は伸縮的
という仮定から当然、資本係数vは変化するという仮定も
生まれてくるわけですね。
新古典派成長理論(現実の成長率G>保証成長率Gwのケース)
たとえば現実の成長率Gが6%で保証成長率Gwが2%だったとしましょう。
この場合、機械は完全に利用されている状態です。
「???」という方は
保証成長率の記事をご覧ください。
⇒保証成長率の求め方をわかりやすく解説
話を元に戻して
保証成長率よりも現実の成長率の方が大きいということは
かなり負担がかかっている状態です。
資本不足(機械が足りないということ)の状態です。
新古典派の場合には利子率が変動するという仮定があるので
足りない分だけ利子率が上昇します。
機械が足りないから借金したりするなどして
機械を買ったり借りたりする会社が増えるんだったら
利子率を上げた方が銀行などは儲かりますね。
こういうイメージを持つとわかりやすいと思います。
話を元に戻して
利子率が上昇すると
機械購入やレンタルをやめてスタッフの雇用に
企業は舵を切り始めます。
ところで資本係数v=K/Y
でしたね。
⇒資本係数vについてわかりやすく解説
資本係数vは機械の量Kを国民所得Yで割ったものをいいます。
機械購入をやめてスタッフ雇用に企業は動くってことは
資本係数v=K/Y
のKが減少するわけですから、
資本係数vも減少します。
分子(K)が小さくなったら全体の数字(v)が小さくなるのは
小学校の分数の話ですから、ここは大丈夫ですね。
で、資本係数vが減少すると
保証成長率Gw(機械が完全に使われるような経済成長率)ですが
Gw=s/v
でしたね。
⇒保証成長率の求め方をわかりやすく解説
vは資本係数でsは貯蓄率です。
なので分母のvが小さくなれば
全体の保証成長率Gwは大きくなりますね。
ということは最初は
現実の成長率G>保証成長率Gw
でしたが、最終的には
現実の成長率G=保証成長率Gw
となるわけです。
ケインズ派のハロッド=ドーマーモデルと結論が違いますね。
⇒ハロッド=ドーマーモデルとは?わかりやすく解説
新古典派成長理論(現実の成長率G<保証成長率Gwのケース)
たとえば現実の成長率Gが2%で保証成長率Gwが6%だったとしましょう。
本当は機械が全部使われるには保証成長率が6%で成長しないといけないけど
現実には2%しか成長していません。
ということは、機械(資本)が余ってしまいます。
ということは今度は機械が余っていて誰も買ったり
借りたりしないので、利子率を下がります。
現実の成長率G>保証成長率Gwのケース
と逆に動くってことです。
新古典派の場合には価格や利子率は動くので
機械が余っていて企業が買わないなら
価格や利子率が下がってきます。
利子率や価格が下がると人を雇うより機械の方に
企業は魅力を感じます。
「機会が安いんだったら買おう」となるわけです。
となると資本係数v=K/Yなので
Kの値が大きくなります。
分子のKが大きくなったら全体の資本係数vも大きくなりますね。
保証成長率Gw=s/v
なので分母のvが大きくなれば
全体の保証成長率Gwは小さくなりますね。
ということで最初は
現実の成長率G<保証成長率Gw
であっても、やがて
現実の成長率G=保証成長率Gw
となっていくわけですね。
ケインズ派のハロッド=ドーマーモデルだと
利子率や価格は動かないので
機械が余っているなら、
機械に投資する意味がなかったわけです。
でも新古典派の場合には機械が余っている状態だと
機械の価格や利子率は下がるので、
人にお金を使わずに機械にお金を使うようになります。
新古典派成長理論(保証成長率Gw>自然成長率Gnのケース)
保証成長率は
自然成長率は
です。
ところで縦軸を国民所得Y、横軸を時間tとおいたグラフを
書いていきましょう。
Gw>Gnという前提なので
以下のようなグラフになりますね。
で、現実の成長率は小さいほうに制約されます。
なので、現実の成長率はX⇒Yに動きます(Y´ではありません)。
となると、(Y´-Y)だけ資本余剰(機械が余る)になります。
機械が余ると先ほどと同様、利子率が減ります。
機械の価格も下がるので、人を雇うのをやめて
機械をどんどん増やします。
資本係数v=K/Yより
分子のKが増える結果、資本係数vも増えます。
Gw=s/v
なので分母のvが大きくなる結果、Gwは小さくなります。
よって最初はGw>Gnだったけど
Gw=Gnと
イコールの関係に落ち着いてきます。
新古典派成長理論(保証成長率Gw<自然成長率Gnのケース)
今度のグラフはこうなりますね。
現実の成長率Gは低いほうになるので
保証成長率Gw=G
となります。
今度は労働が完全に使われるためにはY´ないといけないのに
現実の成長率はYしかありません。
ということは人が余っている状態です。
つまり失業が起こっています。
失業が起これば賃金率は下がります。
みんな働きたいわけですから会社は労働者を買いたたくわけですから。
給料を安くしても「働かせてください」と言ってくるので。
となると会社は機械の購入よりも安くなった人の採用に動きます。
すると
資本係数v=K/Y
機械(K)が減るということは
分子が小さくなるということなので
全体の資本係数vも小さくなります。
そして保証成長率Gw=s/v
で、分母のvが小さくなるので
全体の保証成長率Gwは大きくなります。
最初は
保証成長率Gw<自然成長率Gn
であっても、徐々にGwが大きくなり
最終的には
保証成長率Gw=自然成長率Gn
とイコールになっていきます。
以上、新古典派の場合には
放っておいても
保証成長率Gw=自然成長率Gn
となるので、政府の介入は不要です。
ここはハロッド=ドーマーモデルと結論が違います。
また、現在ではハロッド=ドーマーではなく
新古典派の成長理論を前提にしていることがほとんどです。