参考文献・URL
マンキュー経済学ミクロ編・マクロ編分厚いマンキュー経済学を読み解くのがめんどくさい人は、こちらをおすすめします。
⇒スタンフォード大学で一番人気の経済学入門(ミクロ編) [ ティモシー・テイラー ]
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前回と前々回の記事で
自然成長率と保証成長率について解説しました。
自然成長率と保証成長率の理屈は
ハロッド=ドーマーモデルとは何か、解説するために
必須の知識になります。
まだご覧になっていない方は
先にこちらをご覧ください。
⇒自然成長率とは?わかりやすく解説
⇒保証成長率の求め方をわかりやすく解説
ところで
成長率には
・現実の成長率
・保証成長率
・自然成長率
の3つがあります。
望ましい成長率というのは
現実の成長率=自然成長率=保証成長率
です。
これら3つの成長率が等しくなるようなメカニズムが
あるのかないのか、
考える理論の一つがハロッド=ドーマーモデルです。
目次
ハロッド=ドーマーモデルとは?
ハロッド=ドーマーさんはケインズ派です。
そしてハロッド=ドーマーモデルでは物価は一定と仮定します。
それから資本係数vも一定とします。
⇒資本係数vについてわかりやすく解説
ここ重要なので、覚えておいてくださいね。
では現実の成長率(G)と保証成長率(Gw)が異なる場合について
考えていきましょう。
たとえば、機械を全部使うと2%しか成長できないけど、
現実の成長率は3%だっとしましょう。
とすると機械を使った成長よりも
無理をして成長しているってことがわかります。
結果、機械が足りない、資本が不足しているので
投資Iを増やすことになります。
機械を買って不足を補うわけですね。
すると、財の需要が増えるので国民所得Yが増えます。
Iが増えたらYが増える理由がわからない方は
コチラの記事をご覧ください。
⇒IS曲線とは?導出の仕方についてもわかりやすく解説
結果、現実の成長率Gが増えます。
すると、さらに保証成長率の方が現実の成長率より小さくなります。
だからまた機械に投資するので、
どんどんどんどん、現実の成長率と保証成長率が
イコールにならないわけです。
ハロッド=ドーマーモデル(現実の成長率<保証成長率のケース)
今度は現実の成長率よりも保証成長率の方が大きいケースについて
考えていきましょう。
たとえば現実の成長率が2%で保証成長率が3%だったとします。
保証成長率が3%ということは機械を完全に使おうと思ったら
3%成長しないといけないって意味です。
3%成長しないと機械を完全に使えないのに
2%しか生産が増えていないなら、機械が余ってしまいますね。
これを資本余剰といいます。
機械が余るとケインズ派は物価などは一定と
仮定しているわけですから、
投資Iが減少します。
機械を借りたり買ったりするわけないですからね。
先ほどのケースは投資Iが増えたから国民所得Yが増えたわけです。
今度は逆に投資Iが減っているので国民所得Yは減ります。
国民所得Yが減れば現実の成長率Gは下がりますね。
さらに現実の成長率が下がったから
保証成長率Gwとの差が拡大して
さらに現実の成長率が下がっていくわけですね。
ハロッド=ドーマーモデル(保証成長率Gw>自然成長率Gnのケース)
まず国民所得Yを縦軸、時間tを横軸にしたグラフを書きます。
すると、自然成長率Gnは保証成長率Gwより小さいという
前提で考えています。
労働の完全雇用として
自然成長率Gn(紫色の線)の角度を上記のようにしましょう。
これに対して機械が完全に使われる保証成長率Gw(ピンク色の線)は
以下のようになります。
現実の経済は低いほうに制約を受けるので
成長率GはGnの方に決まります。
本当はX⇒Y´⇒Z´
といかないと機械が余ってしまいます。
でもX⇒Y⇒Zといくので
たとえばY´マイナスY分だけ資本余剰(機械が余っている状態)が起こります。
しかもGwと現実の成長率でもあるGnとの差はどんどん拡大していきます。
つまり資本余剰はどんどん拡大していくわけですね。
ハロッド=ドーマーモデル(保証成長率Gw<自然成長率Gnのケース)
保証成長率Gwよりも自然成長率Gnの方が大きいので、
以下のようなグラフになりますね。
現実の経済は低いほうに制約を受けるので
成長率GはGw(保証成長率)の方に決まります。
とすると、失業者がいない状態になるには
X⇒Y´⇒Z´
と進まないといけないのに、
これよりも低いので、失業がどんどん拡大していくわけですね。
ハロッド=ドーマーモデルまとめ
ここまで見ていくとわかるように
Gw(保証成長率)とGn(自然成長率)がイコールでないなら
機械が余ったり、人が余ったりしてしてしまうってことです。
逆に現実の成長率=Gw(保証成長率)=Gn(自然成長率)
となる状態が望ましい状態だといえます。
この望ましい状態を均衡成長といいます。
とはいえ、
現実の成長率=Gw(保証成長率)=Gn(自然成長率)
みたいな状態って、どう考えてもそう簡単に達成できません。
仮に達成できても偶然といえるでしょう。
ちょっとでもずれたらイコールの関係にならず
機械が余ったり人が余ったりするわけですからね。
これはナイフの刃(ナイフエッジ)の上を歩けているくらいの偶然です。
ここからナイフエッジ理論と呼ばれることもあります。
ハロッド=ドーマーモデルではどうして一度ずれたら均衡しないの?
ハロッド=ドーマー理論では資本係数vを一定と仮定しています。
⇒資本係数vについてわかりやすく解説
望ましいのは
現実の成長率=Gw(保証成長率)=Gn(自然成長率)
ですが、
Gw(保証成長率)=s/v
(sは貯蓄率、vは資本係数)
Gn(自然成長率)=n+λ
(nは労働人口増加率、λは労働生産性上昇率)
なのですが、sとnとλは古典派もケインズ派も定数です。
が、ケインズ派のハロッド=ドーマーは資本係数vも定数と置くので
全部定数になってしまうんです。
変数がないわけですから、
どんなことがあっても、
ずっと直線的な成長しかできません。
だから一回でも直線がGwとGnでずれたら
一生折り合う(均衡する)ことはないってことですね。
言い換えると、
vだけが変数として変化する可能性があったのに
ケインズ派はvを一定と仮定するから
一度GwとGnがずれたら均衡することがありません。
ちなみに新古典派はvは変数扱いなので動きます。
以上でハロッド=ドーマーモデルについての解説を終わります。