参考文献・URL
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今回の記事では自然失業率仮説とは何か?
解説していきます。
自然失業率とは?
自然失業率が何か?理解するために、
フィリップス曲線について先に解説させてください。
以前もフィリップス曲線について解説していますが
今回、あらためてグラフを書きながら説明していきますね。
⇒フィリップス曲線とは?わかりやすく解説
⇒フィリップス曲線が右下がりになる理由
⇒長期フィリップス曲線と短期フィリップス曲線の違い
フィリップス曲線についてメモ
緩和政策⇨物価上昇⇨名目賃金の上昇(実質賃金は変化せず)⇨雇用の増加⇨失業率の低下⇨賃金と物価が共に上がっているせいで生活水準が改善してないと気づいた労働者が自発的失業率⇨失業率が自然失業率へ回帰
結果、物価上昇+失業率変動せず
以下繰り返す
— itiman@株投資家🇯🇵🇺🇸 (@ichiha110) February 1, 2022
自然失業率の理解の前提となるフィリップス曲線
フィリップス曲線のフィリップスは人の名前です。
フィリップスさんが見つけ出した曲線だからフィリップス曲線といいます。
経済学「フィリップス曲線はフィリップスさんが提唱したんやで。ギッフェン財はギッフェンさんが提唱したんやで。」
俺「てことは、コーナー均衡はコーナーさんが提唱したんやな!」
経済学「いや、それは隅っこって意味や」
なぜなのか— おすぎ (@o4s7u4g7i) June 18, 2014
フィリップスさんはいったいどんな曲線を見つけ出したのでしょうか?
フィリップスさんはイギリスにおいて100年分のある実証研究を行いました。
実証研究というのは、実際の統計とか数値を材料として分析・研究を行っていくものです。
フィリップスさんはどんな実証研究を行ったのでしょう?
貨幣賃金上昇率と失業率の間の実証研究です。
貨幣賃金上昇率と失業率の間にどんな関係があるのか?
ということを両データの100年分の数値を照らし合わせることで
ある1つの関係性を見出すことができました。
その関係性をフィリップス曲線と呼んでいます。
これに疑問が沸かないもんかね、元々のフィリップスさんのデータなんか約100年分ぐらいのデータでカナリ長期の話だったわけで。 QT @night_in_tunisi: フィリップス曲線も「短期フィリップス曲線」は右下がり、「長期フィリップス曲線」は垂直、ってなってたと思う。
— 牙 龍一:脱財政再建!(ワクチン接種完了) (@kiba_r) February 14, 2011
ではフィリップスさんはどんな曲線を見出したのでしょう?
実際に書いてみると以下のような曲線になります。

縦軸にはΔw/wです。
wは貨幣賃金なので、Δw/wで貨幣賃金の変化率(上昇率)となります。
横軸はu(小文字)で失業率を意味します。
失業を英語で『unemployment』と書くので
頭文字をとって『u』を使うことが経済学では多いですね。
この失業率と貨幣賃金の変化率上昇率の間に
どんな関係があるのでしょう?
フィリップスさんが実証研究を行った結果、
非常にきれいな右下がり関係があることが発見されました。
これをフィリップス曲線と呼びます。
[フィリップス曲線] フィリップス曲線(Phillips Curve)とは、イギリスの経済学者フィリップスが論文の中で発表した曲線。失業率とインフレ率の関係を示したもの。横軸にはインフレ率、縦軸には失業率をとったとき、両者の関係は右下がりの曲線となることを示したもの。
— 出来るビジネスマンのたビジネス用語 (@bobb1241) January 26, 2022
このことを言葉で説明すると
『貨幣賃金上昇率と失業率との負の相関』となります。
この『負の相関』というのがフィリップス曲線で示されるる右下がりの線となります。
フィリップスさんが実証研究をしたことで得られた発見は当然といえば当然ことです。
なぜなら、失業率というのはどんな時に高くなるでしょう?
景気が悪い時です。
就活生も大変そう…というか失業率も悪化しそう。こんな雰囲気じゃ活発な投資が見込めるわけないし、ただでさえ日本は景気よくないんだから…。
— よっぴ→ (@aki7crowns) February 24, 2022
景気が悪く不況に陥ると失業率が高まっていきます。
失業率が高まっていくと仕事に就けない人が増えてきます。
仕事に就けない人は給与水準が下がってもいいから仕事に就きたいと考えるでしょう。
実際に働いている人だって
賃金が下がっても構わないから働き続けたいと考えるはずです。
賃金の上昇率は低くなっていくはずです。

つまり、失業率が上昇すればするほど貨幣賃金の上昇率は低くなっていくはずなので
右下がりの関係があるというのは直観的に考えれば確かにうなずける話ですが、
フィリップスさんがすごいところはそれを100年分という気が長くなるような統計データをもとに
それが事実であることが確認できたところにあります。
こんな感じで直観を事実として確認するというのは大事な作業です。
こういった直観が事実に照らして間違いない事が確認されたというのがフィリップス曲線の
大きなポイントになってきます。
フィリップス曲線のどこが自然失業率?

このフィリップス曲線が縦軸のΔw/w=0で
横軸の失業率と重なっているところをUN(自然失業率)といいます。
この自然失業率とはどんな失業率なのでしょう?
自然失業率とは完全雇用時の失業率です。
ミクロ経済学でいう完全雇用とは、世の中の就職希望者すべてが雇用されるという意味ではなく、"市場で決まった賃金なら働きたい"という人すべてが雇用されるという意味である。だから、たとえば市場賃金が時給400円なら、400円以下でも良い人だけ全員職につければ、完全雇用は達成されたことになる。
— Shin Hori (@ShinHori1) November 15, 2020
つまり、完全雇用が実現されているときの失業率が自然失業率です。
なぜ自然失業率が完全雇用状態における失業率といえるのでしょう?

自然失業率が表される点というのは
貨幣賃金上昇率(Δw/w)が0、
つまり貨幣賃金が上がりもしなければ下がりもしない状態です。
どういうときに貨幣賃金が上がりも下がりもしない状態になるのでしょう?
労働市場において時給が均衡している状態です。
古典派の労働市場を想像してみてください。
セイの法則。
古典派の説で、労働市場における需要(企業側)は物価上昇に関わらず一定であるため、供給によって所得が決まる。 pic.twitter.com/x1wPv7Kcuo
— なな@診断士×スペイン語の経営者を目指す (@nana77pocoapoco) February 25, 2021
労働需要と労働供給があったときに交点で均衡が決定します。
この均衡点は労働の需給が一致しているから、
人が余ってもいなければ不足してもいないから
賃金も上がりもしなければ下がりもしません。
つまり、この賃金の上昇率が0のポイントというのは
労働市場が均衡している状態を示すわけです。
ということで労働市場が均衡している状態、
当然それは古典派でいえば完全雇用と一致するはずだから
自然失業率は労働市場の均衡、すなわり完全雇用が実現しているときの失業率ということになります。
これが自然失業率です。
セイの法則をそのまま労働市場に適用すると、市場で需給均衡した賃金が例えば時給600円の場合、600円では働きたくない人は自発的に働かないので失業者にはカウントされないから、結果として失業者ゼロの"完全雇用"が"達成"されるという理屈になります。これが古典派的な労働市場の理屈ですね。 https://t.co/2449AOBxiz
— Shin Hori (@ShinHori1) June 5, 2018
もちろん失業がまったくないというわけではなくて
自発的失業とか、摩擦的失業というのは当然あります。
①中小企業はアウトローの受け皿→摩擦的失業者数の減少に寄与か?
②ルール無法の中小企業の日本の労働体系内での役割→労働規制、最低賃金法の抜け穴か?
③創造的破壊より安定成長が技術革新には有効→シュンペーター、批判、などで検索。 pic.twitter.com/xOg9GFD5IA
— 不動産仙人@りき大生®︎ (@imraddish) November 5, 2021
とはいえ、自然失業率とは完全雇用時の失業率ということになります。
フィリップス曲線の数式と自然失業率の関係
ちなみにフィリップス曲線の数式は
$\frac{Δw}{w} $=-a(u-U$N $)
となります。
ちなみにaは正の定数で、uは失業率、
U$N $は自然失業率です。
ところで、(u-U$N $)ですが、
失業率と自然失業率の差をとっていますが、
たとえば、失業率が自然失業率を下回っているなら
完全雇用の状態よりも失業率が低い、つまり人手不足の状態を意味します。

完全雇用よりも失業率が低いということは
完全雇用を超えて人を採用しようと企業は考えているわけです。
当然、人手不足になれば賃金は上がります。
なぜなら$\frac{Δw}{w} $=-a(u-U$N $)で
右辺の-a(u-U$N $)全体がプラスになるからです。
結果、貨幣賃金上昇率がプラスになります。
逆に失業率が自然失業率よりも下回っているなら
完全雇用よりも低い水準に雇用があるので
この場合、$\frac{Δw}{w} $はマイナスになり、賃金は下落していくということになります。
この関係を数式的に示したものが
$\frac{Δw}{w} $=-a(u-U$N $)
という式になり、これがフィリップス曲線です。
次回の記事ではフィリップス曲線の知識を前提として
物価版フィリップス曲線について説明していきます。