この記事では法の支配と法治主義の違いについて
わかりやすく解説します。
行政書士試験や公務員試験で必須の知識だと思いますので
ぜひ最後までご覧ください。
法治主義と法の支配の違いとは?
法の支配
![法治主義と法の支配](https://www.management-consultant.info/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
法の支配の起源はどこでしょう?
イギリスが起源です。
それから支配権力は法のもとにおかれます。
法の定めに従って行使されないといけません。
では法って何でしょう?
正義の法です。
悪のために法を使ってはいけませんよね。
そんなことしたら世の中がカオス状態になるでしょう。
住居侵入して窃盗する人が称賛され、
盗まれた人は逆に裁かれるみたいな。
そんな法はあってはならないわけです。
だから法といったら正義の法でなけれななりません。
では正義の法ってなんでしょう?
現在の国家原理においては権利保障の法です。
権利保障の法こそ正義の法です。
こういったことを考えていくと
憲法とかそういったものに統御されるということに
なっていくわけですね。
それから法の支配では法の実質的な内容に関心が強いです。
要するに正しい法でないといけないということ。
人権保障の法でないといけないということです。
そして最終的には裁判所が法の担い手として重視されるということになります。
「もしかしたら議会が作った法が間違っているかもしれない」ということで
裁判所が審査していくわけです。
結果、法律を作る立法権に対する抑制につながります。
具体的には違憲審査権です。
議会(日本だったら国会)が作った法がすべてではないというところまで
突っ込んでいくわけです。
ちなみにイギリスは議会主権です。
だから議会が最高ということでとどまってしまっています。
イギリスにしてみれば議会は
ピューリタン革命も名誉革命においても中心的な役割を果たしました。
⇒イギリスの政治体制についてわかりやすく解説
これに対してアメリカ。
独立革命をどうして起こしたか?
といったらイギリスの議会に「税金出せ」みたいにいじめられたからです。
だからアメリカ合衆国は歴史的な経緯からして権力というのは
議会がすべて正しいわけではないとわかっているわけですよ。
アメリカ独立革命は
イギリスの植民地として税金を払わされていたにも
かかわらずアメリカに住む人たちのための
政治が行われていなかったから、のはずわたしたちを幸せにしない政治にお金を払うなら
それは年貢と変わらないと思う— 安下 真貴 yasumaki.sol (@yasushetamarki) April 6, 2021
だからアメリカは厳格な三権分立になっていて
違憲審査権があるわけです。
⇒アメリカの政治体制についてわかりやすく解説
イギリスでは議会主権のところで止まりました。
でも、アメリカは突っ込んでいって違憲審査権のところまで発展していったというところを
知っておいてください。
法治主義
・正義の法
。人権保障の法
です。
これらによって法はコントロールされるということです。
これに対して法治主義というのはどういうものなのでしょう?
行政権力や司法権力の源泉を議会が定める法律に求めます。
そして司法権や行政権の権力を行使するためには
法律が根拠でないといけないというのが法治主義です。
演繹的です。
演繹的とはどういうことか?というと
抽象的な原理原則を打ち立てて、
それをいろんなものに当てはめていくわけです。
法治主義では議会が作る法律を事案ごとに
個別具体的に当てはめていくわけですね。
これに重きを置くのが法治主義です。
大体の法律は演繹的に出されたものだから、前提さえ納得できればほかも自ずと納得できると思うけど
功利主義と道徳(の斉一性)と憲法の3つそれにその例だとなぜ法律というマクロなものをミクロな視点で評価しようとしてるのか全然理解できない
適切じゃないでしょ— C.ごーどん (@TroAlgernon) April 23, 2023
それは法律の解釈の手法としておかしいですね。(しかし、素人特に理系がやりがちではある。)法律には階層性があって、思想→憲法→法律→下位法令と上位規範に照らして演繹的に解釈しなければなりません。枝葉の語句に捕らわれては正しい解釈はできないのです。思想がまずあるのです。
— 入船 (@sono51dmNtCZKU9) July 26, 2023
法治主義はどこで生まれてきたのでしょう?
ドイツ中心です。大陸法ですね。
⇒大陸法と英米法の違いをわかりやすく解説
それから国家の最高機関の地位は議会にあります。
議会重視ということです。
そして最終的には形式的法治主義につながっていきます。
議会制定法の根拠さえあれば国家はどんなことでもできてしまうのです。
法律でありさえすればよいわけです。
悪法であってもOKです。
法の支配とは違いますね。
法治主義では悪法であってもよいです。
「悪法もまた法なり」というのはソクラテスの有名な言葉です。
有名なソクラテスの
「悪法もまた法なり」
の日本的解釈ですね。日本・・・どんな悪法でも決まったからには守らねばならない!
海外・・・法律の中には守る必要もない悪法もあるので、気をつけるべし
— あじ@山本 (@azicyan) June 13, 2023
悪法でもOKというのが法治主義です。
そこまで行ってしまったのが形式的法治主義になります。
では現在でも大陸法であるドイツやフランスは形式的法治主義なのでしょうか?
さすがに違います。
ドイツやフランスは現在は実質的法治主義です。
実質的法治主義はほぼ法の支配です。
「実質的法治主義≒法の支配」ということです。
法治主義であった国々も第二次世界大戦後、
見直しまして実質的法治主義になっていきました。
ここは復習になりますが
フランスもドイツも違憲審査期間を持っていますからね。
フランスの違憲審査機関は『憲法院』でドイツは『憲法裁判所』があります。
⇒フランスの政治制度についてわかりやすく解説
⇒ドイツの政治体制についてわかりやすく解説
なのでフランスもドイツもかつての法治主義ではなくて
法の支配に近い法治主義になってきています。
こういうのを近接化傾向といったりします。
法治主義と法の支配の違いまとめ
法治主義
⇒大陸起源で19世紀ころから
法の支配
⇒イギリスが起源で17世紀中ごろから
法治主義
⇒議会が最高機関。
⇒だから行政権や司法権は議会に従う
(議会が作った法律に従って司法権や行政権が動く)
法の支配
⇒立法権、行政権、司法権を抑制する
(立法権、司法権、行政権はすべて法に従わないといけない
以上で解説を終わります。