今回の記事では地方債とはどういうものなのか、
簡単にわかりやすく解説していきたいと思います。
地方債とは?わかりやすくいうと・・・
地方債とはわかりやすくいうと、都道府県や市区町村が
借金を補うために発行する債券のことで、
地方財政法第5条に規定されています。
ちなみに地方債の『債(さい)』の漢字を分解すると
『にんべん』に『責める』と書いていますね。
わかりやすくいうと『債』とは借りるという意味だと理解するとわかりやすいでしょう。
以下衆議院ホームページより引用
第五条 地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。但し、左に掲げる場合においては、地方債をもつてその財源とすることができる。
一 交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共団体の行う企業(以下公営企業という。)に要する経費の財源とする場合
二 出資金及び貸付金の財源とする場合(出資又は貸付を目的として土地又は物件を買収するために要する経費の財源とする場合を含む。)
三 地方債の借換のために要する経費の財源とする場合
四 災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合
五 地租、家屋税、事業税及び都道府県民税(東京都にあつては、地方税法(昭和二十三年法律第百十号)第百三十条の規定により特別区の課する地租、家屋税、事業税及び特別区民税を含む。)又は地租附加税、家屋税附加税、事業税附加税及び市町村民税の賦課率又は賦課総額がいずれも標準賦課率又は標準賦課総額の一・二倍以上である地方公共団体において、戦災復旧事業費及び学校、河川、道路、港湾等の公共施設の建設事業費の財源とする場合
2 特別区が地方債をもつて前項第五号に掲げる事業費の財源とすることができる場合は、東京都が地方債をもつてその財源とすることができる場合でなければならない。
上記条文は自治体がお金を使う時は
借金以外で賄いなさいよという意味です。
言い換えると借金を作らないでくださいねと言っています。
だから原則は歳出は地方債以外で賄わないといけないので
借金はできないんです。
2020年現在衆議院議員の音喜多 駿先生も以下のようにおっしゃっています。
(都債=地方債と読み替えてください)
都債15兆円発行→地方財政法の制限で無理
災害指定すればできる→都知事権限では無理
日銀に買い取らせればよい→政府・日銀との協調が必要な上、上記の理由で兆円単位の発行無理
「できないことをやるのが政治家だ!」と言ったって、これじゃいくらなんでも荒唐無稽な上に、むしろ国政マター。
— 音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選出) (@otokita) June 20, 2020
ただどうしても地方債を発行しないといけない緊急みたいな事態が起こることだってあります。
そういう時は仕方がないから地方債を例外的に認めるという意味の規定が
地方財政法第5条です。
そんな緊急事態といえる状況が2020年12月現在です。
ついにキター!山本太郎さんが都知事選で掲げた「地方債」、東京都がコロナ債として発行へ。ただし金額は太郎案15兆円とはほど遠い「小」規模。ここは「小」じゃなく「大」でしょ!https://t.co/IDF8Z6BXR6
— 長谷川羽衣子 (@uikohasegawa) November 27, 2020
ところで地方債を発行するとき、対象事業は5分野に限定されています。
対象事業5分野とは
・公営企業
・公共施設などの建設事業
・出資金及び貸出金
・災害復旧事業
・地方債の借り換え
のことです。
ですので、市役所のスタッフの給料を支払えないから
地方債を発行するということはできません。
で、対象事業は5事業限定なわけですが、
たとえば公営企業というのは市営バスが赤字のケースです。
市営バスが赤字になり、バスの運転手に給料を支払えない場合、
バスを動かせなくなり、市民が困ります。
この場合には地方債を発行することができます。
それから公共施設とはたとえばキャンプ場や高齢者向け施設などが該当します。
市が新しくキャンプ場を作ったりする場合に
地方債の発行が可能です。
あと、災害復旧事業というのは激甚災害なんかで
仮設住宅を作らないといけないようなケースが該当します。
それから地方債の借り換えというのは借金を返すために
借金をすることをいいます。
地方債の手続き
地方債は
・公営企業
・公共施設などの建設事業
・出資金及び貸出金
・災害復旧事業
・地方債の借り換え
という5分野に限って発行することができます。
ただ発行するにあたっては、手続きが重要です。
どういう手続きなのでしょう?
たとえば、あなたは長崎県知事だとしましょう。
高齢者施設(公共施設なので地方債を発行できる5事業に該当しています)を作りたいとします。
でも、お金がないとします。
そこで地方債を発行したいとします。
平成18年より前だと県だと総務大臣の許可が必要でした。
これを地方債許可制度と言っていました。
以前なら高齢者施設で5階建ての建物で、予定が5月でみたいなことを記載した細かい書類を
総務大臣に送って許可を貰わないと地方債が発行できませんでした。
ただ、お役所仕事って言い方をすると「めっちゃ時間がかかる」ってイメージないですか?
この地方債許可制度もそうで、すごく時間がかかったんだそうです。
ただそれだと困りますね。
できるだけ早く高齢者のための施設を作って、
困っている人の役に立ちたいでしょうから。
、
そこで2020年現在は許可制度を廃止しました。
どうなったか?というと、事前に総務大臣のところに行って
「どうしても高齢者施設を建てたいんですけど、お金がなくて・・・」みたいな感じで協議して
同意をもらって地方債を発行することできるようになったんです。
もし仮に総務大臣の同意が得られなくても
あらかじめ議会に報告しておけば地方債を発行することができます。
ですから総務大臣と事前協議があったという事実があればOKで
総務大臣の同意は不要です。
どうして総務大臣の同意は不要になったのでしょう?
地方分権が進んで、各自治体の自己責任という考えが主流になってきたからです。
その代わり各自治体が借金が返せなくなっても国は責任を負いませんよという考えです。
ただ、そうはいっても、
危険水域を超えている自治体もあります。
つまり地方債を発行して借金をしたら
どう考えても返せない可能性の方が高い自治体もあるということです。
こういう自治体は総務大臣の協議だけでは地方債を発行できません。
危険水域を超えている自治体の場合には許可制(総務大臣の許可が必要)となります。
あと、実質公債費比率(全体の収入の中でも借金の比率)が16%未満(そんなに借金してないという意味)『など』の
条件を満たしている地方公共団体の場合には協議すら不要で事前に届ければOKとなってます。
要するにそんなに借金してないなど、
借金を返済できる能力の高い地方公共団体が地方債を発行する場合には協議すら不要で
事前に届け出ればOKですよってことです。
ただ、地方財政健全化法でひっかかる自治体の場合、
地方債がそう簡単に起債できない場合もあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
⇒地方財政健全化法とはどんな法律か?ポイントとともにわかりやすく解説