前回の記事では機能主義について解説しました。
⇒機能主義とは?わかりやすく解説
機能主義は古い考え方で、方程式で社会現象を説明する社会学的な考え方です。
経済学のように式を使って社会現象を理解するのは難しいです。
なぜなら、経済の場合だと価格Pであったり物価みたいな
わかりやすい指標がありましたね。
⇒貨幣需要の利子弾力性が無限大のケースとゼロのケースについてわかりやすく解説
価格は数字ですから方程式に入れて計算することができます。
でも、社会現象の場合、これさえあれば説明できるというはっきりとした数値がありません。
それで数式で表すことをあきらめて
代わりに社会のいろいろな部分はどのように関係しあっているのか、
システムという観点で説明するようになります。
そこでパーソンズという人が登場します。
パーソンズは『社会とは行為の集まりのことである』と考えました。
行為が集まって社会が出来上がっているということです。
たとえば、YOUTUBERが動画を撮影してアップするという行為をして、
その動画を私たちが見るとか、
動物病院の獣医さんが診察・診断・治療という行為をして
ペットの病気が治り飼い主が安心するみたいに
結局、お互いにいろんな行為をしてそれぞれつながりあっているわけですね。
このときに、社会を個人の集まりと考えるよりも行為の集まりと考えた方がメリットが大きいです。
なぜなら関係性が見えるからです。
たとえば、個人の集まりだとお互いにどうつながっているかわかりにくいです。
でも行為の集まりだと考えると
お互いの繋がり方が可視化できるわけです。
行為システムというのは誤解されやすい用語です。
行為システムとは広義の社会の言い換えだと理解するとわかりやすいでしょう。
行為システムというと、個人個人の行為だけではありません。
行為『システム』ですから、たくさんの行為がつながりあって行為システムといいます。
一言でいうと行為システム=パーソンが提唱した社会の言い換えです。
パーソンズの行為システムについてさらに詳しく解説
行為システムにおける
行為を成り立たせるための要素は
・社会システム
・文化システム
・パーソナリティシステム
とパーソンズは考えました。
たとえば、内閣総理大臣が記者団に対して記者会見をするというのは
一つの行為になりますね。
こういった社会的行為が成り立つために
何が必要でしょう?
パーソナリティシステム、つまり心、人格構造があることが前提だと考えます。
人間には心や性格があるからこそ、しゃべるし、聞くという行為が成立するわけです。
つまり、行為が成立するためにはお互い性格構造を持っているという必要があります。
で、性格構造というのは複雑にいろんなものが結びついているから一つのシステムだといえるでしょう。
ただ、パーソナリティシステムだけでは
会話が成り立たないでしょう。
たとえば、原始人と現代の日本人が会話しても
お互い、心と心を通じ合わせることは不可能でしょう。
そこで文化システムの登場です。
お互いに何らかの文化が共有されていることが必要だということです。
総理大臣が記者団に日本語で話すから、テレビやネットで
私たちが「あぁ、なるほど」と納得することができるわけですね。
文化だっていろんなものが結びついているからシステムの一緒になります。
よって文化システムも行為を成立させるための一つの要素だといえるでしょう。
それから社会システム。
ここでの社会は広い意味でなく狭い意味での社会です。
お互いの肩書を組み合わせた形の組織図みたいなイメージになります。
たとえば、2020年12月現在、菅義偉さんが内閣総理大臣です。
内閣総理大臣と言う立場にはいろんな役割が結びついています。
内閣総理大臣が話す相手は記者という立場であったり、
日本国民という立場の人たちです。
また日本国民にも、会社役員とか
夫婦とか、先生とか医者とかいろんな役割がありますね。
これらの役割がいろいろ結びついて社会システムが成り立っているわけです。
つまり、肩書とか地位を組み合わせた組織図みたいなものが社会システムになります。
ですので、ここでいう社会というのは狭い意味での社会となります。
もっというと1人1人の個性や性格を抜きにして
地位や肩書でお互いに結びついているという意味の社会システムです。
よろしいでしょうか。
上位システムと下位システム
それから、システムについて考えるときに
大きなまとまりのことを上位システムといい、細かく分けたまとまりのことを下位システムといいます。
たとえば哺乳類は上位システムで、
哺乳類に属する犬や猫、人間は下位システムです。
さらに犬でもダックスフントやチワワはもっと下位システムとなります。
つまり抽象度が高い概念が上位システムとなり、
具体的になればなるほど下位システムという理解です。
これを先ほどの行為システムと社会システムに置き換えると
行為システムは上位システムで、社会システムは下位システムとなりますね。
行為システムの中に、社会システムとか文化システムなどがありますからね。
制度化・内面化・社会化・統制とは?
行為システムにおける
行為を成り立たせるための要素は
・社会システム
・文化システム
・パーソナリティシステム
とパーソンズは考えたと先ほど解説しました。
社会システム、文化システム、パーソナリティシステムが
どのように関係しあっているか?考えた時に
制度化と内面化という考え方は重要になります。
文化システムから見た社会システムのことを制度化といいます。
文化が具体的な社会制度になっていく、たとえば日本の企業組織と中国の企業組織では
組織の組み立て方が違っていると言われています。
どうして日本の企業組織と中国の企業組織では組織の組み立て方が違うのでしょう?
パーソンズだとこのように回答するでしょう。
日本文化と中国文化が違うからです。
日本の文化に対応して日本的な企業組織が完成し、
中国の文化に対応して中国的な企業組織が完成するということです。
文化が具体的な組織になっていくというのが制度化という考え方です。
それから文化システムから見たパーソナリティシステムを内面化といいます。
内面化というのは文化が性格に影響を与える、内面に取り入れられていくみたいなことをです。
たとえば、イタリア人男性ってあたりかまわず、女性を口説くけど、
日本人男性はシャイで女性に告白できないみたいなことを言われますね。
このような日本人的な性格とイタリア人的な性格の違いはどのように生まれるのでしょう?
パーソンズだとイタリア文化がイタリア人的な性格を作り上げ、
日本文化が日本人的な性格を作り上げると答えるでしょう。
これが内面化です。
それから社会システムから見たパーソナリティシステムを社会化といいます。
社会化はほぼほぼ教育の意味です。
いろんな社会制度(ルール)を身につけていくということを社会化というので
教育みたいな感じです。
この社会化の考え方を応用したのがパーソンズの予期的社会化です。
⇒マートンの予期的社会化とは?例を挙げながらわかりやすく解説
あともう一つ、社会システムから見たパーソナリティシステムを統制ということもできます。
統制というのは社会システムを具体的に私立高校くらいの社会集団で考えてください。
たとえば数学の先生は私立高校の役割に巻き込まれています。
もし数学の先生が教え方がうまくて、東大の合格者を増やせば
校長先生から褒めてくれて、もしかしたら給料がアップするかもしれません。
逆に去年より大学の合格率が下がったら
クビになるかもしれません。
このようにいいことをしたら褒めてくれたりして
悪い結果になったら罰を与えられるように真面目にやるように
コントロールしていくことを統制といいます。
社会状態を一定に保つためのメカニズムの一種です。
以上で解説を終わります。