前回の記事では予定単価を使って
予定消費額を計算しました。
⇒予定消費額の計算方法についてわかりやすく解説
ただ、予定ではなく実際の材料費も
計算されるんです。
予定消費額はあくまで予定です。
仮みたいなものです。
実際に消費した金額と予定消費額の間で差が出てしまうので
これを材料消費価格差異という勘定で処理します。
今回は材料消費価格差異の求め方と仕訳の仕方について
解説していきます。
材料消費価格差異について
前回解説した予定単価を使った予定消費額の計算と
月末に先入先出法や平均法を使って出した実際単価による
実際消費額は絶対にイコールにならないでしょう。
このイコールにならないことを『差異(さい)』といいます。
平均法や先入先出法を使って実際単価を算出する方法については
こちらの記事をご覧ください。
⇒材料費の計算方法についてわかりやすく解説
話を元に戻して材料消費価格差異は
予定消費額と実際消費額の差異(イコールでないこと)の話だと思ってください。
材料消費価格差異の求め方
たとえば車を製造する会社で
材料の予定価格が300円だったとしましょう。
でも実際の材料費は350円だったとしましょう。
この場合、350円―300円=50円で
この50円が『材料消費価格差異』です。
さらに理解を深めるために
一緒に例題を解いていきましょう。
例題
材料の実際単価は@20円でした。
なお、材料費の計算は予定単価(@15円)を使って計算しています。
そして当月の材料消費量は30㎏(全部、直接材料として消費)だったとします。
上記例題の場合、
材料を消費した時の仕訳は以下のようになります。
上記計算がよくわからない方は
コチラの記事をご覧ください。
⇒予定消費額の計算方法についてわかりやすく解説
単純に予定単価(@15円)×材料消費量(30㎏)=450円
と計算しただけです。
で、全部直接材料なので仕掛品として処理します。
それから実際材料費は@20円×30㎏=600円となりますね。
当初450円と考えて製品の原価を考えて計算したら
実際には600円かかっていたので
150円余分に製造原価がかかっていたということですね。
そこで考え方なんですが、
材料450円を消費したとして、
材料(資産)を450円分だけ減少させています。
資産である材料が貸方に来ていることから
材料が450円分減少しているのがわかりますね。
でも実際の消費は600円だったわけです。
そこで、材料の減少分が実際消費額600円になるように
600円―450円=150円分だけ、さらに材料を減少させます。
つまり、実際の消費額に寄せていく仕訳をしていくってことです。
先ほどの仕訳では
だったのですが、貸方の材料を600円にするために
と、合計したら貸方の材料が600円になるようにすればよいわけです。
こうやってつじつまを合わせるように努力します。
これで貸方の処理はできました。
今度は借方はどうすればよいのでしょう?
貸方だけ材料を150円加えても
借方が150円抜けていたら、
バランスがとれませんね。
バランスをとるために『材料消費価格差異』を使います。
です。
予定消費額が450円でした。
そこで(貸方)仕掛品450円/(借方)材料450円
としていました。
次に実際消費額が600円だったので
予定消費額の450円を600円に訂正しないといけません。
そのために貸方に材料を150円記載したわけです。
これが上記画像の材料の貸方(右側)に存在する
予定消費額450円と材料消費価格差異150円の部分です。
これを材料消費価格差異を借方にもってきて
バランスをとっているわけです。
材料消費価格差異の差異とは?
ここまで一緒にみてきて
混乱してきていませんか?
この差異というのは
『実際に発生した製造費用の一部』です。
実際に発生した製造原価で製品の原価になっているのは450円だけでした。
先ほどの例では借方に材料消費価格差異を記載しました。
こんな感じで借方に登場する材料消費価格差異のことを
借方差異とか不利差異といいます。
不利差異というのは原価に無駄があったという意味です。
どうしてかというと、予定消費額450円というのはある意味、予算なんです。
450円でやれると思っていたら実際消費額が600円だったわけです。
実際消費額600円―予定消費額450円=150円
なので、150円無駄に使ったというのが借方差異とか不利差異の意味になります。
というわけで借方差異とか不利差異というのは
無駄な差異、原価の無駄遣いということになります。
そしてこの場合を、材料消費価格差異が不利差異、借方差異のケースになるんです。
ここで覚えておかないといけないのは
材料消費価格差異が不利差異になるのは
実際消費額>予定消費額
のケースです。
では、無駄な状況に対して予定消費額450円よりも
実際にかかった材料費の方が300円といった感じで
安かった場合はどうなるのでしょう?
これは当初の予定よりも安くて済んだわけです。
この場合の会計処理について考えてみましょう。
材料消費価格差異が有利差異、貸方差異のケース
無駄な状況に対して予定消費額450円よりも
実際にかかった材料費の方が300円といった感じで
安く済んだ場合を有利差異とか貸方差異とか言ったりします。
つまり
材料消費価格差異が有利差異になるのは
実際消費額<予定消費額
のケースです。
当初予定したよりも負担が軽かったケースについて
例題で確認していきましょう。
例題2
材料の実際単価は@10円でした。
なお、材料費の計算は予定単価(@15円)を使って計算しています。
当月の材料消費量は30㎏(すべて直接材料として消費しています)でした。
例題2の場合、実際単価は@10円、
そして予定単価は@15円ということは
材料消費価格差異が有利差異になるのは
予定単価>実際単価
です。
で、材料を消費した当初の仕訳はどうなるでしょう?
この場合は、予定単価を使うので
@15円×30㎏=450円
ですから、
(借方)仕掛品450円/(貸方)材料450円
となります。
この仕訳の意味するところは
材料を消費した時に、材料という資産450円分が減少したということです。
これに対して実際消費額は実際単価×数量なので
@10円×30㎏=300円です。
ということは450円ー300円=150円分だけ
材料の減少分を取り消すと考えます。
ちょっとややこしいんですけども、
資産(材料のこと)の減少は貸方に書きますね。
この減少分を取り消すと考えるんです。
なので今度は材料を借方に書けばよいわけです。
したがって
(借方)材料150円/(貸方)材料消費価格差異150円
と仕訳すればよいです。
材料消費価格差異を貸方に書いたのは、
借方の材料150円分とのバランスをとるためです。
貸方に材料消費価格差異がないと
借方が貸方よりも150円分だけ多くなってしまい、
借方の合計=貸方の合計
となりません。
だから、材料消費価格差異150円を貸方に書くことで
借方の合計=貸方の合計
と、帳尻を合わせているわけです。
ということでこれが貸方差異(有利差異)となります。
貸方差異というくらいです。
実際に、貸方の方に材料消費価格差異150円が登場していますね。
ということは費用的には『節約』となります。
450円かかる予定だったけど、300円で済んだわけですから
ある意味、材料費を節約できたわけですね。
材料消費価格差異の求め方のコツ
ここまで材料消費価格差異について解説しましたが、
差異の有利か不利か、一発で計算できるようになっておきましょう。
ここでは差異の求め方のコツをご紹介したいと思います。
求め方のコツとしては
予定消費額から実際消費額を引くこと
につきます。
つまり、
という計算をするってことです。
で、
・計算結果がプラスなら有利差異
と判断しましょう。
計算結果がマイナスになるってことは
予定に比べて実際の方が高いってことです。
たとえば予定が200円で実際が300円だったとしましょう。
この場合、予定ー実際なので
200円ー300円=-100円
とマイナスになりました。
実際のコストの方がかかりすぎていたからマイナスになったわけです。
実際のコストの方がかかりすぎているので無駄が発生しているから
不利差異だと考えることができますね。
逆に予定が200円で実際が150円だと
200円ー150円=+50円なので有利差異です。
実際の方が安く済んだからプラスになりました。
覚え方としては予定が先だと覚えておきましょう。
これって日常生活でも予定を先にたてますよね。
これで忘れにくくなったと思います。
以上で解説を終わります。