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この記事を書いているのは2019年1月。
現在、アメリカのトランプ大統領は
どんどん保護主義政策を推し進めていますね。
アメリカと中国で貿易戦争まで起きています。
株価もものすごく不安定です。
トランプさんが大統領になる前は自由貿易が中心でした。
自由貿易についてはこちらで解説しています。
⇒自由貿易をすると余剰はどのように変化するか?
今回はトランプさんが推し進めている保護主義とは
どういうものなのか、余剰分析をしながら解説していきたいと思います。
⇒【分かりやすく解説】余剰分析とは?
保護貿易とは?わかりやすく解説
前回の記事で自由貿易について解説しました。
⇒自由貿易をすると余剰はどのように変化するか?
自由貿易のメリットは総余剰が最大になることです。
ただ、総余剰は最大になりますが輸入する側からすると
生産者余剰はかなり小さくなっていました。
たとえば自国の農業がダメージを受けるわけです。
結果、自国にとってマイナスになることもあります。
だから
輸入品に対して関税をかけたり、
生産者に対して補助金を交付したりして
自国の生産者を保護することを保護貿易といいます。
アメリカ大統領のトランプさんは関税を上げていますね。
だから保護貿易なわけです。
【保護貿易】関税をかけると余剰はどう変化する?
まず前回解説した自由貿易を復習しておきましょう。
自由貿易の場合、元の価格をP2、国際価格をP4とします。
元の価格P2よりも国際価格P4の方が安いわけです。
すると消費者余剰は三角形P3bP4、
生産者余剰は三角形P4aP1、総余剰はP3BaP1となります。
この状態は死荷重がないので余剰が最大です。
でもかなり生産者余剰は小さいですね。
また生産量もQ1からQ2に減っています。
お客さんからすると商品が不足して困ります。
そこで自由貿易では輸入に頼ることになるわけですね。
でも保護貿易では輸入品に関税をかけます。
そして自国の生産者を保護するわけです。
どういうことか、実際にグラフを使って考えていきましょう。
国際価格P4に対して関税をX円かけるとします。
これをP4+Xとすると、、、
すると、輸入価格はP4からP4+Xと、完全X分だけ
上にシフトします。
結果、輸入品の価格が上がるので
生産者も便乗して輸入品と同じ価格で販売できるわけです。
つまり、生産者側も価格が上がるということは
供給曲線Sでみると点aから点cへとシフトするので
生産量はQ1からQ2に増えることになりますね。
なので、生産者を保護することができます。
わかりやすく説明すると保護貿易をすることで
値段が上がり生産量が増えます。
売上って値段×数量(生産量)ですね。
で、原価はたとえば農業なら変わらないわけですから
保護貿易によって生産者の利益も増えます。
利益=売上ー原価ですからね。
では関税をかけた後、
消費者余剰はどうなるでしょう?
価格(P4+X)上の需要曲線Dはdですね。
なので消費者余剰は、
消費者余剰は三角形P3dP4+Xとなりますね。
これが関税をかける前だと三角形P3bP4でした。
なので、関税をかけたことで消費者余剰が減少していることが
わかりますね。
生産者余剰はどうなるでしょう?
関税をかける前の生産者余剰はP1aP4でしたが
関税をかけた後の生産者余剰はP1cP4+Xとなります。
関税をかけた後の方が生産者余剰が増えていますね。
それから自由貿易では関税をかけていませんでしたから
政府が出る幕はありませんでした。
でも関税をかけると、その関税分は政府の取り分となるので
今度は政府が登場します。
このことを政府余剰といいます。
で、政府余剰は関税が関係するわけですから
輸出でなく輸入したものに対して関税Xをかけたものになります。
では輸入量はどこになるのでしょう?
輸入量は需要曲線上の点dからQ4(需要量)から
供給曲線上の点cからQ2(国内生産量)を引いたものとなります。
要するにお客さんが欲しがっている(Q4)けど
自国の生産量(Q2)では足りない量(Q4-Q2)を
輸入でまかなっているってことです。
この(Q4-Q2)に関税Xをかけるということは
以下のように長方形cegdの面積が政府余剰となります。
なので総余剰は生産者余剰、消費者余剰
政府余剰を足したものになります。
なので総余剰はP3P1cegdとなります。
で、自由貿易時の総余剰は上記グラフの場合、
P3P1abでした。
なので、保護貿易をすることで、
三角形aecと三角形dgb分だけ死荷重が発生していますね。
死荷重とは最大の余剰ではなくなった分のことです。
自由貿易時の総余剰P3P1abから保護貿易時の総余剰P3P1cegd
を引いた分である三角形aecと三角形dgb
が死荷重となります。
【保護貿易】補助金により余剰はどう変化する?
ここまでトランプさんのように関税をかけたら
どのように余剰が変化するのか、解説しました。
今度は政府が生産者に対して直接1単位あたり
いくらか補助金を与えるとします。
生産者からしてみると作れば作るほど
補助金がもらえるなら生産量を増やすはずですね。
ではいくら補助金を生産者に与えたら
よいのでしょう?
先ほど関税をかけた後のP4+Xと
同じ生産量に合わせるように補助金を出すとします。
なので生産量はQ2です。
ceの距離になるようなピンク線を引くことで
生産量をQ2とすることができます。
国際価格のとき、生産量はQ1だったので
補助金によって生産量がQ2に増えたわけですね。
これにより供給曲線Sが供給曲線SHにしたシフトすることになります。
では余剰はどうなるでしょう?
価格は国際価格P4のままですから
消費者余剰と生産者余剰は、、、
生産者余剰は三角形P4P0e、消費者余剰は三角形P3bP4
となりますね。
では政府余剰はどうなるでしょう?
政府は補助金を支払っています。
支出です。
なので政府余剰はマイナスになります。
で、補助金を出すのは自国の生産者のみです。
自国の生産量(横軸)は0からQ2までで
補助金(縦軸)はceですから、これらの面積が
政府の支出分となります。
なので政府余剰は平行四辺形P1P0ecとなります。
よって総余剰は生産者余剰+消費者余剰ー政府余剰なので
となり、文字であらわすと総余剰は
P3P1cebとなりますね。
では自由貿易をしていたときと比べて
補助金による保護貿易は余剰の損失(死荷重)を
生むのでしょう?
死荷重は三角形caeとなります。
あと輸入量はどうでしょう?
需要量はQ5(需要曲線とP4の交点から)ですが生産量はQ2なので
Q5-Q2となります。
保護貿易とは?わかりやすく解説まとめ
保護貿易には
・関税をかける方法
・補助金を生産者に与える方法
とありますが、
死荷重の面積が違いましたね。
関税をかける方法では三角形2つ分の死荷重が発生しましたが
補助金を出す方法だと三角形1つ分しか死荷重が発生しません。
果たしてトランプさんがやっている保護貿易は
今後、どういう結果をもたらしていくのでしょうか。