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流動性選好説とは何か?わかりやすく説明します。
この説は貨幣需要と密接にかかわりがあるので、
貨幣需要についてもわかりやすく説明します。
目次
貨幣需要
貨幣需要とは読んで字のごとく、貨幣に対する需要のことです。
貨幣需要は3つあります。
どういうときにどういう目的でお金が必要になるか?
によって3つに分類されるってことです。
これはケインズさんが分類しました。
貨幣需要の3つの分類
1 取引的動機(取引のためにお金が必要)
2 予備的動機(不測の事態に備えてお金が必要)
3 投機的動機(将来の債券投資にお金が必要)
です。
これら3つが流動性選好説の要素になっています。
流動性選好説とは?
経済学ではよく『流動性』という言葉が使われます。
流動性とは簡単にスムーズに交換できる性質のことです。
特に経済学では流動性は貨幣を意味することが多いです。
つまり流動性が高いというと、素早く簡単に貨幣などに交換できるものを指します。
会社や個人でも、お金に困ったらすぐに現金に交換できるものの方が、不測の事態に備えれるので流動性の高いものは
好まれる傾向にあります。
こんな感じでできるだけ流動性の高いものを
持ちたがる性質のことを流動性選好説といい、
ケインズさんが提唱しました。
そして流動性選好説は以下、3つの動機から成り立っています。
流動性選好説|(1)取引的動機に基づく貨幣需要
彼氏、彼女に「お金欲しいんだけど・・・」
相手「なんでお金が必要なの?」
「君に指輪をプレゼントしたいからさ」
相手「???」
みたいな状況を想像してください。
これが取引的動機に基づく貨幣需要です。
取引をするために今、
お金が手元に必要という意味になります。
これは国民所得の増加関数です。
⇒国民所得の求め方
たとえば、2019年は国民所得が10億円で取引のために1億円の
お金が必要だったとしましょう。
2020年、景気が良くなり国民所得が20億円になり
取引のために2億円のお金が必要になったりします。
景気が良くなったら取引に必要なお金も増えるのが通常です。
つまり、国民所得が上がる(景気がよくなる)と
取引に必要なお金(取引的動機に基づく貨幣需要)も増えます。
先ほど増加関数と書きましたが、
増加関数というのは同じ方向に変化する関数のことです。
国民所得が増える⇒取引的動機に基づく貨幣需要も増える
これは増加関数になります。
流動性選好説|(2)予備的動機に基づく貨幣需要
たとえば、あなたはタラバガニを買って
今日までに1万円振り込まないといけないとしましょう。
そこでネット銀行を利用しようと思ったら
通信エラーでお金をお店に振り込めない・・・
人生、いろんなことが起こるものです。
何があるかなんてわかりません。
そんなこともあるので不測の事態に備えるために
現金を手元に置いておきたいと考える人もいるはずです。
これが予備的動機です。
ハッキリした動機はないけど、不測の事態に備えて
手元にお金を置いておくことを予備的動機と言います。
たとえば、「明日デートでさ、お金足りなくなったら困るから、お父さん、1万円ちょうだい!」みたいなケースが予備的動機です。
ただこれも先ほどの取引的動機に基づく貨幣需要と
考え方は同じです。
なので、予備的動機も国民所得の増加関数となります。
国民所得が増える=景気が良くなる
です。
なので、何があるかわからないので不測の事態に備えて
お金くださいだって景気が良い方が成立しやすいですね。
お父さんやお母さんにお金がない(景気が悪い)なら
子供から不測の事態に備えたデータ代の要求にも
答えにくいでしょうからね。
とにかく、予備的動機に基づく貨幣需要も取引的動機に基づく貨幣需要も国民所得が増えれば増加する増加関数で似たような考えなので、2つをまとめてL1と表します。
ここ重要ですからね。L1、覚えておいてください。
Y↑ならばL1↑
と表現します。
これは景気がよくなれば(Y↑)手元に置いておきたいという気持ちも増える(L1↑)という意味です。
流動性選好説|(3)投機的動機に基づく貨幣需要
投機的動機は資産運用を考えた時に
お金(貨幣)か債券(株ではない)か2つしかないとしたら
どっちを選ぶか?という議論になります。
まず必ず成り立つ概念で前提条件なので
知っておいていただきたいことがあります。
です。
株価は上がった下がったみたいな話がありますね。
これはあなたも知っているでしょう。
実は債券(国債など)も株と同じで売買されていて
売買する時の価格があるんです。
なので債権も株と同じように値段が上がったり下がったりします。
そして債権の値段は銀行の利子率(r)と逆の動きをするんです。
ここまでは前提の話です。
銀行の利子率(r)が下がったら
債券の価格が上がるということです。
どんな券(チケット)でもそうですけど、
高い時に買ったら損した気分になりますよね。
安い時に買い、高い時に売れば転売益(儲かる)が出るわけです。
ここで銀行の利子率(r)が下がると債権の価格が上がるので
一般国民は「今は高いから債券はいらないや」となり、
現金を残しておこうという心理が働きます。
ここで投機的動機に基づく貨幣需要をL2と表しますと
このL2も今後経済学でいっぱい登場するので
確実に覚えておいてくださいね。
ということで利子率rが下がるということはL2が増えます。
よってL2は利子率rの減少関数となります。
減少関数というのは逆に動く関数のことです。
ですので、利子率rが下がると手持ちの貨幣(現金、L2)が増えますよということです。
これを
r↓⇒L2↑
と表現します。
ちなみにL2のLはLiquidityで流動性という意味です。
なので、r↓⇒L2↑というのは
利子率rが下がったら流動性の高いお金(L2)を保有するという意味になります。
流動性選好表
ここまでの内容を理解するために例題を出して
一緒に考えていきましょう。
たとえば現在利子率rが4%だとしましょう。
このとき取引的動機に基づく貨幣需要と予備的動機に基づく貨幣需要の合計(L1)が10億円だったとします。
それから投機的動機に基づく貨幣需要(L2)は1億円だったとします。
この状況で銀行の利子が2%に下がったとしましょう。
この場合、取引的動機に基づく貨幣需要と予備的動機に基づく貨幣需要は変化しません。10億円のままです。
これはどうしてでしょう?
理由は国民所得の増加により増加する増加関数だからです。
利子率の変化はL1に影響を与えないってことです。
これに対して投機的動機に基づく貨幣需要(L2)は1億円が2億円に増えます。
なぜなら利子率が下がったからです。
よって合計(全体)は10億円(L1)+2億円(L2)で12億円に増加しました。
これをグラフで表すと

となります。
上記の表を流動性選好表といいます。
銀行の利子率rが下がった時に
貨幣(お金、L)をどれだけ置いておくか?です。
利子率rが下がったら貨幣全体(L1+L2=L)が増えます。
このことが上記表(流動性選好表)に表現されていて
右下がりになります。
グラフの横軸LはL1+L2を意味します。
流動性選好表というのは今、手元にお金を置いておきたいか?
を表しているもののことです。

縦軸に銀行の利子率rを横軸に貨幣需要Lを置きます。
rが下がったら横軸のLが増えます。
債券の価格が上がるので、現金を手元に置いておきたいので
L2が増えます。
結果、L全体が増えるために流動性選好表は
右下がりになります。
以上で流動性選好説についての解説を終わります。
ここまで理解できましたら次の説明にうつります。
⇒貨幣需要の利子弾力性についてわかりやすく解説
⇒流動性の罠とは?わかりやすく説明
LM曲線の導出の記事からこの記事にやってきた方は
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⇒LM曲線の導出についてわかりやすく解説