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今回の記事では均衡国民所得の求め方について解説します。
ただ、解説を読んでもわからない方もいると思ったので
公式を導いたり、総需要や総供給の意味などについてもわかりやすく解説していきます。
目次
均衡国民所得の求め方(計算問題の解き方)
もし以下の計算問題がわからない場合は
あとでこれでもか!ってくらいまでかみ砕いてわかりやすく解説しているので
ぜひ最後までご覧ください。
ある国の国民所得がC(消費)とI(投資)だけで構成されているものとします。
そして基礎消費が3兆円、限界消費性向が0.4、独立投資が9兆円であるものとします。
このとき国民所得決定の理論からすると、この国の国民所得はいくらになりますか?
まず均衡では総需要と総供給が一致しますね。
$Y_S $(総供給)=$Y_D $(総需要)
という関係が成立するはずですね。
また、$Y_S $(総供給)=Y(国民所得)ですから、
Y=$Y_D $(総需要)と置き換えることができますね。
今度は右辺の総需要ですが、
問題文より閉鎖経済だとわかりますから
$Y_D $(総需要)=C+I+G
となります。
だからY=C+I+G
となります。
この式は総需要と総供給が等しいという条件から導かれたものです。
その意味で財市場均衡条件といいます。
この条件が成立していれば国民所得Yは均衡の水準にあるといえます。
以下で解説する消費関数を使ってこの均衡国民所得を求めていきましょう。
C=cY+$C_0 $
C:消費
c(小文字):限界消費性向
$C_0 $:基礎消費
ですから、Cのところに消費関数を代入して
Y=cY+$C_0 $+I+G
となります。
すると左辺にも右辺にも国民所得Yがあるので
右辺にあるcYを左辺に移項して
Y-cY=$C_0 $+I+G
となりますね。
左辺にYが2つあるので一括りにしましょう。
(1-c)Y=$C_0 $+I+G
となります。
そして最後に(1-c)で両辺を割ることで
ここまで計算してきた数式は
Y=($C_0 $+I+G)÷(1-c)
となるわけです。
つまり上記式が均衡国民所得$Y^{*} $となります。
グラフで見たら上記総需要と総供給の交点が$Y^{*} $です。
以上を前提に計算問題を実際に解いていきましょう。
もう一度、問題を書きますね。
ある国の国民所得がC(消費)とI(投資)だけで構成されているものとします。
そして基礎消費が3兆円、限界消費性向が0.4、独立投資が9兆円であるものとします。
このとき国民所得決定の理論からすると、この国の国民所得はいくらになりますか?
問題文に『ある国の国民所得がC(消費)とI(投資)だけで構成されているものとします』
と書いてありますね。
Y=C+I+Gという式は暗記している前提で解説しますね。
これは経済学の問題文に書かれていないことが多いですから。
で、問題文より政府支出Gが書いてないので
Y=C+I+GはY=C+Iとして考えていくことになります。
こんな感じでしっかり問題文を読んで
何から構成されているか?ということをしっかり把握したうえで
問題を解くようにしてくださいね。
次に問題文では
『そして基礎消費が3兆円、限界消費性向が0.4、独立投資が9兆円であるものとします。』
と書いてますね。
この文を読んだら自分で数式を立てましょう。
C=cY+$C_0 $
C:消費
c(小文字):限界消費性向
$C_0 $:基礎消費
ですから、この消費関数の式に問題文を当てはめていきましょう。
すると消費C=0.4Y+3で投資I=9です。
ここまでできればあとは代入するだけです。
Y=0.4Y+3+9
右辺の0.4Yを左辺に移項しましょう。
Y-0.4Y=3+9
0.6Y=12
となります。
最後、両辺を0.6で割ると
Y=12÷0.6=20
答え20兆円となりますね。
計算はとてもシンプルでした。
基本的には以下解説するような均衡国民所得の理解があれば
どんな問題でも解くことができるはずです。
もしわからない場合は下の方を先に読んでくださいね。
全部解説していますから。
文字数が7500文字前後あるので
読みごたえのある記事になっていますが
頑張って最後まで読んでいただけるとうれしいです。
均衡国民所得の求めるための公式を導出
まず均衡国民所得の公式を導きますので、公式を覚えましょう。
均衡国民所得の例題(計算問題)を解く大前提になります。
均衡では総需要と総供給は一致します。
つまり$Y_S $(総供給)=$Y_D $(総需要)となります。
「???」となった方もいるかもしれないので
もっと根本的なところを先に説明しますね。
均衡国民所得がどう決まるか?
需要と供給のバランスから決まります。
ではまず需要から考えてみましょう。
総需要
『総』需要と『総』がついているのは財市場全体の需要です。
フェラーリとかフェラガモの靴とかZARAのカバンなどなど
全部ひっくるめた需要を総需要といいます。
需要とは『何かを買いたい』『何かを消費したい』という気持ちのことでしたね。
有効需要と需要も意味合いが違うことを以前の記事で解説しました。
話を元に戻します。
総需要をどのように考えればよいでしょう?
需要ということは『何かを買う』ということ、
つまりお金を使う(=支出)ということになりますから、
総需要=支出
と考えても問題ありませんね。
総需要=支出
と考えると国民所得に対する支出、
つまり国民所得を支出という面から見ようということになります。
よくわからない方、三面等価の原則を復習しましょう。
そして支出面の国民所得(=支出国民所得)の内訳は
中小企業診断士試験、公務員試験、不動産鑑定士試験の受験生の方は暗記しておきましょう。
支出面から国民所得を見た時
いったいどういうもので構成されていたでしょう?
前回の記事で解説した通り、
支出国民所得=民間消費+政府消費+固定資本形成+在庫品増加+(輸出ー輸入)
でしたね。
だから総需要の内訳は
総需要=消費+投資+政府支出+輸出ー輸入
と置くことができます。
支出国民所得における消費は総需要だと民間消費にあたります。
投資は総需要だと固定資本形成に当たると思ってよいです。
固定資本形成は生産設備(生産設備に対する投資)のことでしたね。
それから政府支出は政府消費と同じものです。
そして輸出ー輸入はそのままです。
ちなみに支出国民所得の式で登場した在庫品増加は除いて考えています。
総需要とは関係がないからです。
総需要って買いたいって話ですよね。
在庫品の増加とは違う話ですから。
よくわからない方は前回の記事をご覧ください。
以上のことを前提に考えていきますが、
数式なのでいちいち漢字で書いていたら面倒くさいから
記号化していきましょう。
$Y_D $=C+I+G+EX-IM
$Y_D $:総需要
C(consumption):消費
I(investment):投資
G(government):政府支出
EX(export):輸出
IM(import):輸入
となります。
あと、国民所得も数式化するとYで表されることが多いので
覚えておきましょう。
絶対に覚えておかない数式です。
マクロ経済学では計算問題にもかかわらず数式が示されていない場合が多いです。
なぜなら数式は知っておかないといけないものだからです。
なので均衡国民所得などの計算問題が出題された場合に
上記数式は知っておかないと解けない可能性が高いので
覚えておきましょう。
そして国民所得Yに需要(Demand)を
表すためにDという添え字をつけて総需要を$Y_D $と表すのが一般的です。
閉鎖経済とは?
均衡国民所得の計算問題って問題を簡単にするために『閉鎖経済』
という前提条件をつけることがあります。
閉鎖経済とはどういう経済なのでしょう?
$Y_D $=C+I+G+EX-IM
の『EX(輸出)-IM(輸入)』部分を除去した経済が閉鎖経済です。
なので、
$Y_D $=C+I+G
となります。
輸出や輸入がない、つまり外国との取引が一切ない状態、
いわゆる鎖国状態なのが閉鎖経済です。
輸出や輸入があると話がややこしくなってくることがあるので
閉鎖経済という前提条件をつけて均衡国民所得の練習問題を解くことが多いです。
逆に閉鎖経済という前提を外すだけで問題をややこしくすることもできます。
今回解説する均衡国民所得の計算問題は閉鎖経済を前提に解説していきますので
よろしくお願いします。
次に
$Y_D $=C+I+G
の数式、1つ1つの項目について解説します。
まずは消費Cから。
消費関数(均衡国民所得を求める前提)
消費関数の公式
消費に関しては数式として表すことにしましょう。
消費関数といいます。
C=cY+$C_0 $
C:消費
c(小文字):限界消費性向
$C_0 $:基礎消費
です。
この消費関数の式も覚えておきましょう。
覚えておかないと解けない問題が出題されることがありますから。
では数式の意味を説明していきますね。
消費関数:限界消費性向
c(小文字)Yのcから。
小文字のcは限界消費性向といいます。
限界消費性向ってどんなものかというと、
所得の増加のうち、消費の増加にあてる割合のこと
です。
たとえばあなたの所得が100万円増えたとしましょう。
このとき、100万円お金が増えたからといって
100万円丸々消費に充てる人はまずいないと思います。
100万円の一部を消費に100万円の一部を貯金にみたいな感じになるでしょう。
たとえば100万円のうち70万円を消費の増加に充てるなら
このとき割合は70÷100=0.7となります。
だからこの場合の限界消費性向は0.7と計算されることになります。
もちろん個々人で違うものではあるでしょう。
でも一つの国全体で合計すればその国全体の限界消費性向を求めることは可能です。
これが限界消費性向です。
消費関数:C0(基礎消費)
$C_0 $は基礎消費のことで定数として扱われます。
定数とは定まった数、つまり数として変化しないもののことです。
基礎消費というものは変化しない数です。
具体的には『所得に依存しない消費』を基礎消費といいます。
つまり所得が高かろうが低かろうが基本的に消費しないといけない決まった額はあるはず。
たとえば生活に必要な衣食住に関わるお金。
こういった消費というのは価格が高かろうが低かろうがある決まった部分は最低限消費しないといけません。
消費ゼロで生きていくことはできませんからね。
そういった生活に最低限必要な部分の消費が基礎消費で表されています。
消費関数からわかること
これを踏まえてもう一度消費関数を見ていきましょう。
C=cY+$C_0 $
C:消費
c(小文字):限界消費性向
$C_0 $:基礎消費
Y:国民所得
すると私たちの普段の消費というのは2つに分けることができます。
(1)基礎消費(最低限の消費分)
(2)所得Yに依存する部分
の2つです。
たとえば私たちはどんなときに消費を増やすでしょう?
当然、お金がたくさん入ってきた時でしょう。
お金持ちになればなるほど消費をたくさんするようになります。
つまりYが大きくなればなるほど消費が増えるということです。
これを関係づけたものが消費関数ということです。
もちろん所得額丸々消費するわけではありません。
所得額Yのうちの何割か、限界消費性向分が消費に回ると考えているわけです。
この限りでは直観的ではありますあg
私たちの日常の感覚に沿うものといえるでしょう。
これが消費関数です。
投資や政府支出(均衡国民所得を求める前提)
投資はIで政府支出はGでしたね。
I=I
G=G
です。
何の面白味もありません。
ちなみに投資に関しては言葉が別に与えられています。
独立投資とか自律的投資ということがあります。
投資は何らかのものに依存した形をとることもありますが
話がややこしくなるので、
この記事では設備投資が何にも依存しない独立したものとして考えることにしますね。
投資Iのイメージは設備投資をになります。
設備投資は前回の解説でいうとホットドッグを焼く機械を購入するとか
お店の店舗を増やすということが該当します。
これは経営者が自分の頭で考えて自分で判断して決めています。
それから政府支出に関しても同様で
政府がどれくらい買い物をするか、誰が決めているかというと
内閣であったり官僚であったり国会であったりします。
外生変数とは?
こういう風に投資も政府支出もどちらも人為的な要因によって
増えたり減ったりします。
こういった点で投資や政府支出を外生変数(がいせいへんすう)ということがあります。
外生変数は変数です。
先ほど解説した基礎消費は定数でしたね。
定数と変数は違います。
変数は数字が変化します。
つまり投資Iや政府支出Gは変化するってことです。
変化するわけですが、
あくまで45度線という経済モデルの外です。
経営者とか政治家とかの頭の中で決められる、そういった点で
モデルの外で発生するものだから外生という言葉をつけて
外生変数とよんでいます。
総需要まとめ(均衡国民所得を求める前提)
ここまで均衡国民所得を求めるための総需要について解説してきました。
ここで一度総需要についてまとめておきますね。
$Y_D $=C+I+G
でしたね。
これに
C=cY+$C_0 $
C:消費
c(小文字):限界消費性向
$C_0 $:基礎消費
を代入しましょう。
すると
$Y_D $=cY+$C_0 $+I+G
となりますね。
$Y_D $=cY+$C_0 $+I+G
という式が総需要を表す式となるわけです。
ではこの数式をグラフとして描いてみることにしましょう。
総需要のグラフ(均衡国民所得を求める前提)
縦軸に$Y_D $(総需要)、横軸にY(国民所得)をとります。
この総需要をグラフとして書いてみましょう。
経済学のグラフは縦軸切片を明らかにしておくと書きやすいです。
つまり横軸の国民所得Y=0とするとわかりやすいですよ。
$Y_D $=cY+$C_0 $+I+G
より、Y=0を代入すると
$Y_D $=c×0+$C_0 $+I+G
ですから、$Y_D $=$C_0 $+I+G
となります。
ですから、$C_0 $+I+Gという縦軸切片を持つことがわかります。
そして$Y_D $=cY+$C_0 $+I+Gという式から
所得Yが増えていくごとにcY全体も増えていくため
右上がりの線として描かれることになりますね。
このときの総需要の傾き、これを決めるものが
$Y_D $=cY+$C_0 $+I+Gの式のうち、
Yについているc(小文字)である限界消費性向です。
ちなみに総需要の線を書くとき注意して欲しいのですが
45度の線よりは緩やかにしておきましょう。
また経済学では角度を0から1の間の値として使うことが多いです。
1の場合を45度の線で1より小さい場合は45度より緩やかな線が書かれることになります。
そして限界消費性向は1より小さい値で考えます。
だから45度より緩やかな線になります。
そして上記グラフが$Y_D $(総需要)となります。
総供給(均衡国民所得を求める前提)
生産活動という観点から国民所得を眺めた場合、
総供給=付加価値総額
となります。
生産面から国民所得を見た時、
供給面から国民所得を見た時、
それは生産活動による新たな価値、付加価値の総額と定義されています。
このことを踏まえた上で総供給の式は
$Y_S $(総供給)=Y
となります。
$Y_S $(総供給)とは付加価値総額、
付加価値総額とはY(国民所得)そのものになります。
総供給に関してはこれだけです。
総需要と比べたらすごくシンプルな話になります。
以上のことを踏まえた上で
総供給も図で確認していきましょう。
$Y_S $(総供給)=Yという前提ですね。
ということは縦と横がイコールということです。
縦軸$Y_S $(総供給)が5なら横軸Yも5、
縦軸$Y_S $(総供給)が10なら横軸Yも10になります。
だから上記のような傾きが45度のグラフになりますね。
45度線というのはその線上では常に縦横が一致していますからね。
見てわかるように45度の総供給曲線は非常に特徴的なものであることから
これを45度線分析と名付けられています。
ネーミングの由来は縦軸$Y_S $(総供給曲線)にあります。
均衡国民所得はグラフ上のどこ?
で、需要と供給が一致するのは当然、
総需要、総供給が一致する上記グラフ上の交点になります。
つまりは$Y_S $(総供給曲線)と$Y_D $(総需要曲線)の交点で
均衡国民所得($Y^{*} $)が決定することになります。
均衡国民所得はYにアスタリスク(*)をつけて$Y^{*} $と表すことが多いです。
よく均衡国民所得の省略記号でYにアスタリスク(*)をつけて$Y^{*} $(ワイスターと読む)と読むことがあります。
これが均衡国民所得です。
ケインズの経済学が需要重視である理由
ケインズの考えるマクロ経済を表せば上記のような図で示されることになります。
見てわかるように総供給の水準は国民所得Yを決定するにあたっては
あまり意味をなしていませんね。
なぜなら総供給は45度線で固定されてしまっているからです。
だからポイントは総需要になります。
$Y_D $(総需要)が増えたり減ったりすれば
それによって交点の位置が変わって均衡国民所得$Y^{*} $も変わってきます。
こんな感じで需要が動くことによって国民所得Yも変化します。
結局国民所得を決めるのは総需要曲線ということです。
こういう需要重視の経済学であることが上記図からも明らかです。
これがケインズが考える経済モデル。
その代表例が45度線分析です。
図で見れば単なる交点なので大したことはありません。
でも、当然計算問題で出題されることになりますから
計算問題が解けるようになっておきましょう。
ここまでわかったら記事冒頭にある均衡国民所得の求め方もわかるはずです。
均衡国民所得の求め方まとめ
いかがでしたでしょう?
基本的に均衡国民所得を求めるような問題は以上のことが
わかっていればあとは問題演習を繰り返すことで
解けない問題はなくなるはずです。
45度線分析の計算というのはかなりパターン化されているので
練習を積めばほぼ誰でも解くことができます。
逆にいえば本番では落とせない問題だといえます。
ちなみにもしマークシート式だと与えられている数字を入れていっても答えが
出る場合もあります。
でもそれはやらない方がよいです。
問題によっては形を変えられることがあります。
投資とか政府支出をわざとに数式化して難しくしていることがあります。
だから今回解説した均衡国民所得の求め方で解いていくようにしましょう。