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乗数理論についてわかりやすく解説

乗数理論 わかりやすく




参考文献・URL
マンキュー経済学ミクロ編・マクロ編

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今回の記事ではマクロ経済学で登場する
乗数理論についてわかりやすく解説していきます。

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乗数理論とは?言葉でわかりやすく説明します

乗数理論というのはケインズ経済学を有名にした有効需要の原理とならんで
ケインズ経済学の特徴の1つとなっている大事な理論です。

乗数理論を言葉で説明すると以下のようになります。

乗数理論

国民所得Yは投資Iや政府支出Gの乗数倍だけ増加する。

これが乗数理論です。
ただ文字で乗数理論の説明をしても
「???」とよくわからないかもしれませんね。

たとえば投資Iや政府支出Gが1兆円増えたとしましょう。
この場合、国民所得Yはいくら増えるでしょう?
という問題が出題されたとします。

この場合、いえることは国民所得Yは必ず1兆円『よりも大きく増える』ということです。
政府が1兆円お金を増やすことによって(政府支出G=1兆円)
何か購入すると必ず国民所得Yは1兆円以上増えるというのが乗数理論です。

たとえば政府がなんらかの1兆円の公共事業を大手ゼネコンに発注したとしましょう。
するとそのゼネコンは1兆円を受け取ることになりますね。
その時点でそのゼネコンは1兆円分の収入が増えたことになります。
ただ、ここで話は終了にはなりません。
どういうことか?
そのゼネコンは子会社とか下請けとか孫請けとかあるでしょうから
そこに対して1兆円の中からいくらかお金を支払って作業のお願いをするでしょう。
たとえば7000億円分、下請けに発注したとしましょう。

すると下請けは7000億円の発注を受けお金を大手ゼネコンからもらえるので
7000億円の所得が増えたことになります。

どういうことか?
最初は元受けの大手ゼネコンが1兆円お金をもらって
次に下請けは7000億円のお金をもらいます。
さらに下請けにはその下の孫請けもあるでしょうから
そこの孫請けもお金を受け取ります。

こんな感じで最初の1兆円がいろんな会社や人に
めぐりめぐっていきます。
総額では最初に政府が出した1兆円よりも多額のお金が
全体では発生することになるわけです。

こんな感じでお金がグルグル循環することで
全体としては所得が大きく増えることになります。
これが乗数効果とか乗数理論といいます

ここまでが言葉による説明です。
以下、グラフや数式を使って乗数理論についてわかりやすく解説していきますね。

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乗数理論についてグラフでわかりやすく解説

乗数理論 わかりやすく

縦軸にYD(総需要)、YS(総供給)をとり、
横軸は国民所得Yとします。
そして45度線である総供給YSがあります。

45度線よりも傾きが緩やかでかつ高さを持った形で総需要YDが存在します。

乗数理論 わかりやすく

それからYDとYSの交点で均衡国民所得Y*が決まります。
以前解説した完全雇用国民所得YFですが、みんなが働けているという望ましい状態は
上記グラフのような水準だったとしましょう。

乗数理論 わかりやすく

当然、今、総需要YDと総供給YSのグラフの間には差があります。
このグラフでは需要が供給を下回っていて
デフレギャップの状態になっています。

デフレギャップ

デフレギャップというのは上記グラフのような状態です。
今回のグラフもそうなってますよね。

乗数理論 わかりやすく

ではどうすればデフレギャップの状態が解消されるのでしょう?
総需要YDの水準を引き上げればよいです。
ではどうすれば総需要YDの水準を引き上げることができるでしょう?

この総需要YDの高さ、特に切片を規定しているものは
何だったかが重要です。

乗数理論

縦軸切片を規定するものは
$C_0 $(基礎消費)+I(投資)+G(政府支出)の合計額になります。
$C_0 $(基礎消費)+I(投資)+G(政府支出)が総需要曲線YDの切片になるということです。

そしてこの縦軸切片の水準を引き上げることができれば
総需要曲線YDを上記グラフのように移動させることができます(上記グラフのオレンジ色の線)。
つまり完全雇用国民所得YFを実現することができるわけです。

当然そのためには縦軸切片を大きくする必要があります。
$C_0 $(基礎消費)という生活に最低限必要な水準を変えることはできません。
これは私たちの生活習慣に依存する部分だからです。

だとすると残っている投資Iや政府支出Gを
なんらかの方法でI´、G´に引き上げることができれば
総需要YDを上に引き上げることができます。

乗数理論

切片が引きあがったところを
$C_0 $(基礎消費)+I´(投資)+G´(政府支出)としましょう。
このI´、G´に対応する水準まで投資や政府支出を増やすことができれば
完全雇用国民所得YFを実現することができるようになります。

ここで国民所得の変化の大きさである、
Y*からYFまでの横幅と縦軸$C_0 $(基礎消費)+I´(投資)+G´(政府支出)と
$C_0 $(基礎消費)+I(投資)+G(政府支出)の幅を定規などで測ってみてください。
すると国民所得の変化の大きさであるY*からYFまでの横幅の方が
縦幅よりも大きくなっているはずです。

これがグラフで理解できる乗数理論ということになります。

縦軸$C_0 $(基礎消費)+I´(投資)+G´(政府支出)と
$C_0 $(基礎消費)+I(投資)+G(政府支出)の幅の乗数倍という倍数だけ
国民所得Yは大きくなっています。

つまり縦軸のシフト幅よりも横軸の国民所得Yの増加幅の方が大きくなっているということで
これを乗数理論とか乗数効果といいます。

ではなぜそんなことが起こるのでしょう?

以前の記事で書いた均衡国民所得の式を思い出してください。
Y=($C_0 $+I+G)÷(1-c)
となるわけです。
cは限界消費性向です。

上記式が均衡国民所得$Y^{*} $となります。

この式に対してある操作をします。

どういう操作か?というと、
変化分をとる操作です。

すると⊿Y=(⊿I+⊿G)÷(1-c)
となります。

割り算を分数に変えると
⊿Y=$\frac{1}{1-c} $×(⊿I+⊿G)
となります。

操作後と操作前の式の違いは
操作後は変数の前に⊿(デルタ)がついているところです。
この⊿は変化の大きさを表す記号です。

なので⊿Yとは国民所得Yの変化の大きさのことで
⊿Iは投資の変化の大きさで、⊿Gは政府支出の変化の大きさのことです。

ちなみに$C_0 $(基礎消費)は⊿がついてないし
そもそも消えてしまっていますね。
なぜなら$C_0 $は定数といって変わらない数だからです。
変わらない数は変化しないから変化の大きさをとることができないので
操作後は消えてしまいます。

どうして$C_0 $は消えてしまうのでしょう?
変化後の国民所得をY´とすると
Y´=($C_0 $+I´+G´)÷(1-c)となります。

変化前は
Y=($C_0 $+I+G)÷(1-c)です。

変化後から変化前を引き算してみましょう。

すると

Y´ーY=($C_0 $+I´+G´)÷(1-c)ー($C_0 $+I+G)÷(1-c)
となります。

右辺は÷(1-c)が共通しているから
Y´ーY=($C_0 $ー$C_0 $+I´ーI+G´ーG)÷(1-c)
となりますね。この辺は数学の知識です。

当然、$C_0 $ー$C_0 $は消えますね。
残っているところは
Y´ーYとか、I´ーIとかG´ーG
といった感じで、どれも差をとっていますね。

ということは変化の大きさと同じ意味ですね。

だから⊿で置き換えることができます。

よって
⊿Y=(⊿I+⊿G)÷(1-c)となり、
⊿Y=$\frac{1}{1-c} $×(⊿I+⊿G)
ということです。

したがって変化前の水準からどれくらい変化したかを表す式は
変化前の数式の変数(定数である$C_0 $は消えるから)の前に⊿をつけたものに一致することになります。
定数項である$C_0 $は今計算したみたいに消えてしまうので⊿さえつきません。

また$\frac{1}{1-c} $という乗数には⊿はつきません。
これは先ほどの計算をみたら一目瞭然ですね。

次に上記式の中でも分母にあたる(1-c)に注目してください。
$\frac{1}{1-c} $を乗数といいます。
そして乗数は1よりも『必ず』大きくなります。

つまり$\frac{1}{1-c} $>1
ということです。

ではなぜ1よりも必ず大きくなるのでしょう?
このcは限界消費性向です。
限界消費性向とは0より大きく1より小さい値です。
つまり0

Y*からYFまでの変化の大きさが⊿Yで
そして$C_0 $(基礎消費)+I´(投資)+G´(政府支出)から
$C_0 $(基礎消費)+I(投資)+G(政府支出)までの縦軸の変化を⊿I+⊿Gとなります。
当然、⊿I+⊿Gよりも⊿Yの方が大きくなります。
それはくどいようですが乗数というものが働いているからです。

こんな感じで国民所得は必ず政府支出の乗数倍だけ増えます。
よく、「公共事業なんてムダ」と言われたりしますよね。

でも、ケインズの乗数理論によれば
必ず政府支出以上の無駄といわれる公共事業以上の額の国民所得が必ず増えることになります。
だから決して無駄ではないということです。

これがあるからこそケインズ経済学は肯定されることになります。

次にケインズ経済学のもう1つ重要なところである有効需要について解説します。