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1次試験

総供給曲線(AS曲線)を導出してみます




参考文献・URL
マンキュー経済学ミクロ編・マクロ編

分厚いマンキュー経済学を読み解くのがめんどくさい人は、こちらをおすすめします。
スタンフォード大学で一番人気の経済学入門(ミクロ編) [ ティモシー・テイラー ]
スタンフォード大学で一番人気の経済学入門(マクロ編) [ ティモシー・テイラー ]

前回の記事ではAD曲線(総需要曲線)の導出をやってみました。
今回はAS曲線(総供給曲線)の導出をやっていきましょう。

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労働需要曲線と労働供給曲線|AS曲線(総供給曲線)の導出

まずこちらのグラフをご覧ください。
労働需要曲線

横軸は労働量Lです。
縦軸はW/Pで実質賃金率です。

実質賃金率とはその賃金をもらったら
何個商品を買うことができるか?ということです。

実質賃金率

たとえば時給900円で、
現在チョコレート1枚150円だとします。

その場合、900÷150=6枚
労働者がもらう時給でチョコレートを6枚
買うことができるってことです。

もしその労働者のスキルが高くなって
時給が1800円と2倍になった。
けど、物価も2倍上がりチョコレート1枚300円になったら、、、

1800÷300=6枚
やはり、チョコレート6枚しか買えません。
こんな感じで時給が上がっても
物価が同じだけ上がったら、
私たちの生活水準は変わりません。

こういう見方をするのが実質賃金率です。

労働需要曲線

それから上記グラフで労働供給曲線は
いろんな記事で書いている供給曲線と同じで
労働需要曲線も需要曲線と同じです。

でも右上がりか右下がりかは
違っていたりします。
需要曲線が右下がりな理由とは?
供給曲線が右上がりな理由とは?

労働供給曲線は労働を供給(提供)するということなので
労働者側の曲線だと言えます。
労働者側を経済学では家計といいます。

労働供給曲線は右上がりになります。
どうして右上がりになるのでしょう?
実質賃金率がもし上がったとします。

いっぱい物が買えるようになるわけですから
労働者はモチベーションが上がるはずです。

なのでいっぱい働きます。
「どんどん働いていっぱいお給料をもらおう」
となるわけです。

結果、労働量Lは増える(右側になる)ので
労働供給曲線は右上がりの曲線になります。

これに対して労働需要曲線は労働を需要する
労働者を欲するという意味なので、
会社側の曲線だといえます。

労働需要曲線は右下がりになります。

会社は実質賃金率が下がった方がうれしいです。
実質賃金率が下がれば、もっとたくさんの人を雇ったり
もっと働かせたりできるようになります。

つまり実質賃金率が下がると労働量が増えるので
右下がりのグラフになるわけですね。

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労働需要曲線|AS曲線(総供給曲線)の導出

まず古典派の第1公準から解説します。

古典派の第1公準は
労働の限界生産力MPL=W/P
です。

W/Pは実質賃金率ですね。
労働の限界生産力の『限界』とは1単位増えたら、
どれだけ増えるか?を表します。

なので労働の限界生産力(MPL)というのは
労働が1単位増えたらどれだけ生産量が増えるか?
という意味です。

で、この労働の限界生産力と言うのは逓減します。
逓減とはちょっとずつ減っていくという意味です。

たとえば機械を使ってチョコレートを作っているとします。
1人雇うとチョコレートが50枚できたとします。
もう1人雇ったら、50+50=100枚できるでしょうか?

おそらくできません。
労働者が増えても
機械の数は決まっているので
思ったほど、チョコレートができないからです。

「俺がこの機械を使う」
「いや、私がやる!」
となってしまって、労働者数に比例して
チョコレートが増えるわけではありません。

だからたとえば労働者が1人から2人に1人増えたら
チョコレートを10枚増量できたけど、
2人から3人に1人増えても8枚しか増量できない。

それから3人から4人に1人増えたとしても
6枚しか増えないという感じで
限界生産力というのは逓減していくのが一般的です。

で、先ほど古典派の第1公準では
労働の限界生産力とW/Pはイコールだといいました。

ではもしMPLとW/Pがイコールでなかったら
どうなるのでしょう?

労働の限界生産力>W/Pだったら
どうなるのでしょう?

たとえば労働者を1人増やしたらチョコレートの生産量が
10枚増えるとします。

そしてW/P(実質賃金率)はチョコレート8枚分の時給だったとします。
この状態、会社からしてみると嬉しい存在ですね。

労働者1人が10枚チョコレート作ったけど
お給料はチョコレート8枚分でよいわけですから。

この状態だと、会社の社長はもっと労働者を雇おうとするでしょう。
雇えば雇うほど会社は儲かる状態ですから。

よって労働の限界生産力(MPL)>W/Pだと
労働量を増やす方向
になります。

とはいえ、先ほど解説しましたように労働の限界生産力は
逓減していきます。

今度はMPL<W/Pとなったとしましょう。
チョコレート8枚分の時給を支払っている(MPL)けど
チョコレート6枚しか作ってくれない(W/P)とします。

こうなったら社長は「役立たずの社員なんていらない。減らそう」
となって、労働量を減らすでしょう。

今度は労働量を減らしていくと
MPLとW/Pのバランスがとれてきて
結局、MPL=W/Pとなるはずです。

これが古典派の第1公準です。

この古典派の第1公準をもとにして
労働需要曲線が右下がり
になります。

労働需要曲線

どうして古典派の第1公準によって
労働需要曲線が右下がりになるのでしょう?

たとえばMPL=W/Pだったけど、
W/Pが大きくなり、
MPL<W/Pとなったとします。

すると先ほど解説しましたように労働量は減少していきます。
お給料に見合った仕事を労働者がしてくれないからです。

よって、下のグラフのように①W/Pの増加により
②労働量(L)が減少します。

労働量を減らす

だから労働需要曲線は右下がりになります。

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労働供給曲線|AS曲線(総供給曲線)の導出

労働供給曲線導出のために必要なのが
古典派の第2公準です。

古典派の第2公準

労働の限界不効用=W/P(実質賃金率)

です。

労働の限界不効用とは、ある財の生産に労働を
1単位追加投入したとき、不効用(不満)がどれだけ増加するか?
ということです。

そして労働の限界不効用は逓増していきます。

たとえば月に20日労働だったけど
「社長がもっと儲けたいからつき25日働いてくれ」
と言ってきたとします。

つまり労働日数が増えるわけです。

おそらく労働者的には不満を感じると思います。
なので労働の限界不効用は逓増していきます。

もし仮に労働の限界不効用<W/P
のとき、どうなるのでしょう?

この場合、労働への不満よりもW/P(実質賃金率)の方が大きいわけですね。
だから労働者はもっと頑張ろうと思います。

なので労働量は増加します。

逆に労働の限界不効用>W/P
は実質賃金率よりも不満の方が大きいわけですから
労働量は減ります。

こうやって最終的には
労働の限界不効用=W/Pに落ち着きます。

結果、労働供給曲線は

労働供給曲線

となります。

ではどうして動労供給曲線は右上がりになるのでしょう?

たとえば労働の限界不効用<W/Pの場合、
労働量は増加するんでしたね。

労働供給曲線

つまり①W/Pが増加すると②労働量Lも増加します。
だから労働供給曲線は右上がりになります。

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ケインズ派の考え方|AS曲線(総供給曲線)の導出

ここまで、古典派の考え方を説明しました。
ではケインズ派はどう考えるのでしょう?
ケインズ派は古典派の第1公準は認めています。

でも古典派の第2公準は認めていません。

このことから最終的に導出される総供給曲線(AS曲線)の形が
古典派とケインズ派で変わってきます。

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古典派におけるAS曲線(総供給曲線)の導出

古典派の総供給曲線は垂直になります。

古典派の総供給曲線

古典派におけるAS曲線が意味するところは
物価Pの変動に対して国民所得Yは影響を受けないということです。

どうしてでしょう?

古典派の場合、非自発的失業はないと考えました。
非自発的失業とは働きたいのに雇用の受け皿がないために
働けない状態のことです。

古典派は名目賃金がうまく調節されるため
非自発的失業が発生しないと考えたんです。

なので、古典派は必ず完全雇用が実現されると考えました。
自然失業以外は必ず働けるってことです。

このときの国民所得をYF(完全雇用国民所得)といいます。
完全雇用国民所得とは?

もちろん、自然に起こる失業は古典派も認めていました。

逆にケインズ派は非自発的失業があると考えました。
ここがケインズ派と古典派の違いです。

話を元に戻して、
古典派は完全雇用になっているため
物価が変動しても完全雇用国民所得YFから動きません。

古典派の総供給曲線

だからAS曲線は垂直になります。

先ほど古典派は名目賃金がうまく調節されるから
物価の影響を受けないといいました。

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ケインズ派におけるAS曲線(総供給曲線)の導出

仮に物価Pが上昇したとしましょう。

するとW/P全体は減少しますから、、、
物価

上記グラフのように超過需要の状態になります。
よくわからない方はこちらをご覧ください。
超過需要とは超過供給とは何か?グラフを使って解説

超過需要の状態になると、会社は賃金を増やそうとします。

なぜなら労働需要曲線は労働者を欲するという意味なので、
会社側の曲線でした。

グラフを見ると、労働需要曲線の方が労働供給曲線より
右側に来ているので、より労働者が欲しい状態だといえます。
労働者が足らない状態ってことです。

なので賃金Wを増やそうとするわけです。
すると、Wが増えるということはW/Pも大きくなるので
結局元の状態に戻るわけです。

こんな感じで古典派は名目賃金Wがうまく調節されるため
物価Pの影響を受けないと考えました。

また古典派は完全雇用が実現されると考えるので
AS曲線は垂直となります。

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ケインズ派におけるAS曲線(総供給曲線)の導出

古典派は名目賃金Wはうまく調節されると考えましたけど、
ケインズ派の場合、名目賃金Wが下方硬直的になると考えました。

どういうことでしょう?

たとえば①物価Pが減少したとします。
すると②W/Pは上昇しますね。

ケインズ派

上記グラフの状態は③超過供給状態になります。
超過需要とは超過供給とは何か?グラフを使って解説

超過供給状態を元に戻そうと賃金wを減らそうとします。
これが古典派なら元のW/Pまで戻ります。

でもケインズ派の考えでは④のように思ったほどwが減りません。
だから④の状態で止まります。
そして⑤のように青線の距離だけ失業が起こります。

これが名目賃金Wが下方硬直的の意味です
で、超過供給の状態ですから、労働者が足りていません。

その分国民所得Yが小さくなります。

その結果、ケインズ派の総供給曲線(AS曲線)は

ケインズ派のAS曲線

となります。

ケインズ派の総供給曲線は一定のところまでは古典派と同じ
垂直な線になりますが、物価Pが下がっていくと失業者が発生するために
お給料をもらえない人が発生するため
国民所得Yが減少するようなグラフとなるわけですね。

ちなみにどうしてケインズ派は名目賃金Wが下方硬直的と考えるのでしょう?
たとえば物価が下がったら、先ほどのようにW/Pが上がるため
超過供給になります。

だから理屈の上では名目賃金wを下げようとします。

でもですね、あなたは「物価が下がったから
給料を下げるね」と社長から言われて納得するでしょうか?

おそらく「ふざけんな!労基署に相談に行こうかな」
となるでしょう。

不満を感じて転職するかもしれません。

そうなったら会社としても困るので
思ったほど給料を下げられないわけです。

これが名目賃金Wが下方硬直的の意味するところです。

以上でAS曲線(総供給曲線)の導出を終わります。