参考文献・URL
マンキュー経済学ミクロ編・マクロ編分厚いマンキュー経済学を読み解くのがめんどくさい人は、こちらをおすすめします。
⇒スタンフォード大学で一番人気の経済学入門(ミクロ編) [ ティモシー・テイラー ]
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前回の記事で、自然独占が起こる費用逓減産業の場合、
企業に任せておくと総余剰が減少してしまい
死荷重が発生すると解説しました。
⇒費用逓減産業とは?わかりやすく解説
また、自然独占について詳しく知りたい方は
先にこちらの記事をご覧ください。
⇒自然独占とは?例を挙げてわかりやすく解説
自然独占の状態になってしまう産業の場合、
市場に任せておくと総余剰が減少してしまいます。
また費用逓減産業というのが電力会社など、
固定費用が大きい産業です。
自然独占が起こり1つの企業に独占されてしまうと
いろいろ問題が起きてしまいます。
自然独占に対して政府が介入した方がよい理由
たとえば、複数の会社が電力会社を経営していたとします。
最終的には自然独占が起こり1社だけが生き残るわけです。
競争に負けた会社は倒産してしまいます。
倒産した会社はたくさんのお金を使って設備投資をしたわけです。
倒産したことで設備投資した分のお金が無駄になってしまいます。
これは社会的に大きな損失、無駄です。
この無駄を回避する必要があります。
無駄を回避するために政府の介入が必要なわけですね。
他にも政府の介入が必要な理由があります。
費用逓減産業(自然独占が成立する産業)は規模の経済を
発揮するために、投資して大きくなればなるほど有利になります。
⇒規模の経済とは?例を挙げてわかりやすく解説
さらに、ライバル会社がいなければ
もっと自分の会社の利潤が増えるわけです。
お客さんはみんな自分の会社で商品を買うわけですから。
そこで、自社が赤字になってでも安売りをして
他の会社にお客さんが行かないようにして
倒産させてしまうという手段を講じることがあります。
そして実際に1社独占になったとしたら、
倒産した会社が投じたお金は無駄になります。
お客さんからしてみると「安く商品を
購入できるからいいや」と思うかもしれません。
でも、1社独占になった瞬間に
たとえば電気料金を大幅値上げしてくるかもしれません。
だから政府が介入する必要があるわけです。
政府が介入して、死荷重が発生しないようにします。
⇒費用逓減産業とは?わかりやすく解説
では自然独占における政府の役割について解説していきます。
自然独占における政府の役割:限界費用価格形成理論
限界費用価格形成理論は
限界費用で価格を決定しようという理論です。
この理論だと前回の記事で解説した死荷重がなくなり
余剰が最大になるというメリットがあります。
⇒費用逓減産業とは?わかりやすく解説
でもデメリットもあります。
なので長期限界費用曲線と需要曲線の交点が
価格と生産量になります。
政府が価格をP1、生産量をQ1にするように
企業に命令したとしましょう。
すると、利潤は総収入から総費用を引いたものになりますから、、、
総収入は1単位の価格×数量(生産量)なので、
以下のグラフのオレンジ枠となります。
そして総費用は平均費用×数量(生産量)です。
よくわからないという方はこちらをご覧ください。
⇒完全競争市場で利潤最大化するのはどんな時?
⇒費用曲線の書き方についてわかりやすく解説
なので、以下のグラフの水色枠内が総費用となります。
ということは総費用(水色枠)の方が
総収入(オレンジ枠)よりも大きいわけですね。
したがって、以下のグラフでピンク枠部分だけ
利潤がマイナスになります。
利潤がマイナスというのは企業にとって困ります。
「赤字だったらやめようかな」となったら政府も国民も困るわけです。
そこで政府は利潤のマイナス分を補填します。
補填はたいてい補助金を使います。
ただ、補助金は私たちの税金です。
ただ私たちから徴収した税金を特定の企業に配分するのは
公平ではないでしょう。
「うちの会社にも補助金ちょうだいよ」って
妬み嫉みを持たれてしまうかもしれません。
これが限界費用価格形成理論のデメリットです。
他にもデメリットがあります。
限界費用とは1単位増やすとどれだけ費用が増えるか?
ということです。
でも1単位当たりどれだけ費用が増えるのかって
調べるのが難しいです。
そういった意味では限界費用を用いて価格を
決定していくというのはそもそも難しいというデメリットもあります。
そこで平均費用価格形成理論というものがあります。
自然独占における政府の役割:平均費用価格形成理論
平均費用価格形成理論とは平均費用で
価格を決めていくという理論のことです。
そこで政府は長期平均費用曲線と需要曲線の交点で
価格と生産量を決めることになります。
このときの価格をP3、生産量をP3とします。
この場合、総収入は価格P3×生産量Q3なので
上記グラフだとオレンジ枠内となります。
また総費用は平均費用×数量(生産量)です。
ということは総収入と同じですから
『総収入=総費用』となります。
ということは利潤は総収入ー総費用=0となります。
なので、税金を使って補助金を支給する必要はありません。
この点、限界費用価格形成理論のような不満は国民から出にくいというメリットがあります。
ですが、限界費用価格形成理論だと総余剰が最大になりましたが
平均費用価格形成理論だと総余剰は最大になりません。
つまり平均費用価格形成理論だと死荷重が発生するという
デメリットがあります。
下のグラフだとピンク枠部分に死荷重が発生しています。
限界費用価格形成理論のときより
生産量が少ないために死荷重が発生しました。
これが平均費用価格形成理論のデメリットです。
とはいえ、限界費用価格形成理論よりも
デメリットが少ないといえます。
だから平均費用価格形成理論は次善策として有効です。
以上で解説を終わります。