参考文献・URL
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前回の記事では顕示選好理論について
かなりかみ砕いて解説しました。
⇒顕示選好理論とは?わかりやすく解説
簡単に顕示選好理論について説明すると
その人の表に現れたものや事柄から、
その人の好みを考えるような理論のことです。
別の言い方をすると、その人が以前買った商品がその人に現れた好みであって
そこから消費行動を考えていこうという理論を顕示選好理論といいます。
ここまでを前提として今回は顕示選好の弱公準について解説します。
顕示選好の弱公準とは?
顕示選好理論には法則があります。
顕示選好の弱公準といいます。
公準というのは法則みたいなもので、
ここでは弱公準なので、法則と言えるか微妙というニュアンスです。
顕示選好の弱公準をかみ砕いて説明しますね。
たとえば、回転ずしで、大トロ(500円)とエビ(300円)のフェアがあったら
必ず大トロばかり食べる人がいたとします。
ということは顕示選好理論では大トロよりエビが好きなんだと考えます。
その人が別の日に同じフェアをやっていたときに
大トロではなくエビを選んだとしましょう。
もし大トロもエビもどちらも買えるのに
エビを選んだんだったら
大トロよりもエビの方が満足度が大きいから
選んだことになってしまいます。
でも、そうすると最初、この人はエビよりも大トロの方が好きなんだと
考えたことと矛盾してしまいますね。
なので、もしこの人の好みが変わっていないのであれば
大トロを選べるだけのお金がなかったんだと考えるんです。
そう考えると矛盾がなくなります。
具体的にいうと、
その人の財布には300円しかなかったから
500円の大トロを食べれなかったんだと考えます。
これが顕示選好の弱公準です。
悲しい理論ですね。
お金が足りないから本当に好きなものが買えないと
考えるんですからね。
だったら今回は我慢すればいいじゃん、
って思いますけどね。
顕示選好の弱公準が成り立つ場合
予算制約線tのとき(黒線)、Tを選んだとします。
予算制約線がuのとき(ピンク線)にはUを選んだとしましょう。
で、予算制約線がtのときTを選んだとき
効用の大きさはUよりTの方が大きいですね。
効用の意味についてはこちらをご覧ください。
⇒効用とは何か?経済学の視点からわかりやすく解説
なぜ効用の大きさがUよりTの方が大きいのかについては
こちらの記事を参考にしてください。
⇒無差別曲線5つの性質とは?
あと、予算制約線がtのときだと
以下のグラフでいうと、青線で囲まれた領域を考えることになります。
この青線で囲まれた領域を入手可能領域と言います。
入手可能領域についてはこちらの記事で解説しています。
⇒なぜ予算制約線は直線になるの?
入手可能領域内にTもUもあるので
どちらも購入が可能です。
ここでこの人はTを選んだんです。
ということはTもUもどちらも購入できるのにあえて
Tを買ったと解釈することができます。
つまりこの人はUよりTの方が好きなんだと言えますね。
ところが、予算制約線がuのときはUを選んだんですね。
予算制約線がuのときの入手可能領域は上のグラフだと
オレンジ色で囲まれた部分になりますね。
となると、Uは入手可能領域になりますが
Tは予算オーバーですね。
つまり、Tは購入できなくてUは購入できます。
このときこの人はUを選んだんです。
すると、これは矛盾していませんね。
まさしく顕示選好の弱公準です。
つまりあるときUとTが購入可能でTを選んだ。
この人はTが好みだとわかります。
でもあるとき、TじゃなくてUを選んだのは
Tはお金が足りなかったということで
顕示選好の弱公準の理屈が成り立っていますね。
顕示選好の弱公準の理屈と関係ないパターン
上記グラフをご覧ください。
予算制約線がtのときは入手可能領域は以下の紫色の領域内になりますね。
紫色の領域内だとTは入手可能領域内だから購入可能です。
でも、Uは入手可能領域外だから購入できませんね。
このとき、この人はTを購入しました。
ただ、これではこの人の好みはわかりませんね。
なぜならそもそもUは購入できないわけですから。
もしTもUも購入できる状態なんだったら
Uを購入した可能性があります。
あるいはUを購入できたとしてもTを購入したかもしれません。
これではUが予算オーバーだったから購入をあきらめたのか、
あるいは元々、UよりTの方が好きだったのかわかりません。
好みがわかるときというのはUもTも両方とも購入可能なのに
あえて片方を選ぶケースだと、ここから理解できますね。
次に予算制約線uのケース。
予算制約線がuのときの入手可能領域はオレンジ線の枠内になりますね。
入手可能領域内にUがありますが、Tは入手可能領域外にありますね。
なのでこのケースではUは購入できますが、Tは購入できません。
するとこの人はUを選んだけど、
もともとTは購入できなかったわけです。
この人はTが好きだったけど、お金が足りなかったから購入できなかったのか、
そもそもこの人の好みはUだったので、Tを購入しなかったのか
わかりません。
なのでこのケースでもこの人の好みはわかりません。
好みというのはTとUの両方を選択できるケースだからこそわかるんです。
今回のグラフでは両方を選択できるケースではありませんから
顕示選好の弱公準を理解するためのグラフとして成立していません。
顕示選好の弱公準に反してしまうパターン
ここまでとグラフの条件は同じです。
予算制約線uだと最適消費点はU、
予算制約線がtだと最適消費点がTです。
予算制約線がtのときを考えましょう。
予算制約線がtのときの入手可能領域は上記グラフの青枠内になりますね。
すると、TもUも購入可能ですね。
このときこの人は予算制約線t上の点Tを選ぶことになります。
ということはこの人はUもTも購入可能なのに
あえてTを選んだことになりますね。
なのでこの人の好みはUではなくTだってことです。
では次に予算制約線がuのときを
考えていきましょう。
予算制約線がuのときの入手可能領域はオレンジ線の枠内になります。
このときもUもTも購入可能です。
ただ予算制約線がuのときはUを購入するので
この人はTよりもUを好むといえます。
となると、
「???」となった人もいるのではないでしょうか。
なぜなら、予算制約線がtのとき、TもUも購入可能だけど
Tを選びました。
ということはUよりTをこの人は好むはず。
ところが予算制約線がuのとき
TもUも購入可能だけど
TでなくUを選んだんです。
完全に矛盾していますね。
これを顕示選好の弱公準に反するといいます。
顕示選好の弱公準の理屈だったら
TとUどちらも買えるときにTを買った人が
別の機会にUを買った場合は
Tを買うお金はないけどUなら買えるから仕方なくUを買うって考えたわけです。
⇒顕示選好理論とは?わかりやすく解説
でもこのケースではTもUもどちらも金銭的には買えるのに
あえてUを買ったんですから、顕示選好の弱公準の理屈と矛盾していますね。
以上で顕示選好の弱公準についての解説を終わります。